第百十七話
――第二機動艦隊旗艦翔鶴――
「赤城、飛龍、祥鳳、瑞鳳の四空母が沈んだと?」
「は、第一機動艦隊からの電文です」
山口多聞はまさかの出来事に暫し呆然としていた。
「………(やっぱ歴史の修正力があるんやろか……)」
その近くで、将樹は目を閉じながらそう考えていた。
「……大丈夫よマサキ」
その時、クロエが将樹の手を取る。
「これはマサキの歴史では起こってない事だよ」
「……そうやな」
「山口長官。加賀達の敵討ちをするべきではないですか?」
二人がそう小声で言っている時、奥宮航空参謀はそう山口長官に詰め寄った。
「待て。今はサンディエゴ爆撃に向かった攻撃隊を収容中なのだぞ? これがサンフランシスコ爆撃前に届けば攻撃隊は躊躇なく向かわせるが今は無理だ」
山口長官のは尤もな事だった。第二機動艦隊はサンディエゴ爆撃に向かった攻撃隊を収容中であり、またサンフランシスコ爆撃に向かった攻撃隊もサンフランシスコの攻撃を終了して帰還する最中であった。
「……分かりました」
奥宮航空参謀は少し頭に血が昇っていたのか直ぐに状況に気付いて山口長官に謝る。
「なに、敵機動部隊の攻撃には第一機動艦隊が放った攻撃隊がいるのだ。彼等は存分に暴れるさ」
山口長官は奥宮航空参謀にそう言った。
「見つけたぞ米機動部隊ッ!!」
第一機動艦隊が襲われる前に発艦した攻撃隊は彩雲の誘導電波によりミッチャー機動部隊に到着したのである。
「沈められた四空母の弔い合戦だッ!! 全機突撃準備に入れッ!!」
「総隊長ッ!! 三時と九時の方向から敵戦闘機接近ッ!!」
偵察員が総隊長の垂井少佐に言う。
「戦闘機隊は空戦に入れッ!!」
『了解。全機、敵機を攻撃隊に近づけさせるなよッ!!』
制空隊隊長の菅野大尉が叫ぶ。
そして戦闘機隊はヘルキャットと空戦に入った。
『此方彩雲隊。欺瞞紙投下完了した』
「よし、ト連送だッ!!」
垂井少佐はそう叫ぶと操縦桿を倒して急降下爆撃に入った。
「くそッ!! ジャップめ、VT信管の弱点を突いたかッ!!」
ミッチャー司令官は罵倒する。自艦隊の対空砲火は欺瞞紙のせいでてんで役に立たない。
「(ジャップのアカギ達を沈めたのはよかったがこれでは……)」
「て、敵機急降下ァッ!!」
ミッチャーが心の中でそう思った時、垂井少佐の彗星がミッチャーが座乗するハンコックに向かって急降下爆撃を敢行しようとしていた。
「死んだ仲間達の仇だッ!!」
垂井少佐は五百キロ爆弾を投下した。爆弾アームから切り離された五百キロ爆弾は、そのままハンコックの飛行甲板を貫通。格納庫でその力を解放した。
「命中ッ!!」
ハンコックに垂井少佐が放った五百キロ爆弾が命中した。
「ぐおぉぉぉッ!!」
命中の衝撃でミッチャー司令官が床に転倒した。
「左舷から敵雷撃機接近ッ!!」
「……く」
見張り員の叫びにミッチャーはヨロヨロと立ち上がる。
左舷から魚雷を腹に抱えた天山七機が迫っていたのだ。
「撃て撃てッ!! ジャップを近づけさせるなッ!!」
ミッチャー司令官が叫ぶ。
ハンコックの対空砲火がそれに答えるように二機の天山を海面に叩きつけた。
だが残りの五機はそれに構うことなくハンコックの左舷に突入していく。
そしてハンコックとの距離が約七百の時に五機の天山は一斉に魚雷を投下して離脱をした。
「面舵一杯ッ!!」
ハンコックは魚雷を回避しようと右に舵を切る。
二本は外れたが三本は外れる事はなかった。
ハンコックの左舷に三本の水柱が立ち上った。
「隔壁閉鎖しろォッ!!」
「ま、待ってくれェッ!!」
手動で鉄扉が閉められて、逃げ遅れた乗組員はそのまま侵入してきた海水に飲み込まれていく。
「反対舷に注水ッ!!」
左に傾斜していく艦体に注水作業が行われる。
「バルブを回せッ!!」
ダメコン隊が炎上する格納庫に放水していく。
「て、敵機だァッ!!」
作業が順調に行っている時、二機の彗星が急降下をしていた。
「対空砲ッ!!」
対空砲が慌てて仰角をするが間に合わず、二発の五百キロ爆弾がハンコックに命中した。
しかも一発はハンコックのエレベーターに命中してエレベーターを破壊した。
「ミッチャー司令官ッ!! ……残念ですが、ハンコックは戦闘不能です」
「……そのようだな」
ミッチャー司令官は外を見ていた。既にハンコック以外のエセックス級空母もやられていた。
波間に消えようとする三隻、大破して戦闘不能なのが二隻だった。(ハンコックも入れて)
「奴等の逆襲は凄まじい物だな……」
サンディエゴ基地に向かう中、ミッチャー司令官はそう呟いたのであった。
しかし、ミッチャー機動部隊以外でも一矢報いる部隊がいた。
「右舷からアベンジャー雷撃機八機接近ッ!!」
「取舵二十ッ!!」
艦が右に傾き回避運動をする。魚雷は何とか空母から逸れた。
「龍驤がッ!?」
「何?」
第三機動艦隊司令長官の大西中将は空母隼鷹の左舷を航行する龍驤を見た。
龍驤の左舷に三発の水柱が立ち上っていたのである。
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