第百十話
――第二機動艦隊旗艦翔鶴――
「山口長官ッ!! 第一次攻撃隊より入電しましたッ!! パナマ運河の閘門を全て破壊したそうですッ!!」
通信兵が艦橋に通信紙を持ってきた。
「そうか。これでパナマ運河破壊作戦は成功したな」
「はい。後は輸送船等も叩けれたら更にいいんですが……」
山口長官の問い掛けに将樹はそう答えた。
「おいおい、それは欲張り過ぎじゃないか?」
「それもそうですね」
『ハハハッ!!』
伊崎参謀長の指摘に将樹が照れそうに言うと、艦橋に笑い声が響いた。
「さて、後は第二次攻撃隊の電文も聞いておかないとな」
山口長官の言葉に将樹達は頷いた。
第二次攻撃隊総隊長は江草中佐だった。
「パナマは燃えてますね総隊長」
偵察員が江草中佐に声をかける。
「なに、まだ我々の取り分は残されているさ」
江草中佐はそう言いつつ獲物を探している。
「まだ燃料タンクが残っているな。あれを叩くか」
江草の目の前には、まだ無傷だった燃料タンク群が残っていた。
「よし、俺の小隊は燃料タンクを叩く。後は好きに任せる」
『了解ですッ!!』
無線機から列機の声が聞こえて、江草は急降下を開始した。
相変わらず対空砲火はあるが、江草中佐の小隊はそれを恐れずに急降下をしていく。
「撃ェッ!!」
江草中佐は高度七百で五百キロ陸用爆弾を投下した。
相手は動かない固定目標だからわざわざ五百まで接近して投下する必要は無いのだ。
そして五百キロ陸用爆弾三発が命中した燃料タンク群は次々と誘爆をしていた。
「総隊長、まるで花火ですね」
「汚い花火だ……」
偵察員の言葉に江草中佐はそう呟き、誘爆する燃料タンク群を見ていた。
「よし、戦果報告の電文を打って帰投しよう」
「分かりました」
偵察員はキーを叩き始めた。
――同日、ホワイトハウス――
「何ッ!? パナマ運河が攻撃されただとォッ!!」
「は、はい」
ルーズベルトの怒号が大統領室内に響いた。
「そ、それで復旧は……」
「……残念ですが、パナマ運河の閘門は全て破壊されたので短時間での復旧は無理です。防衛基地や軍事私設等も破壊されました。復旧には一年は掛かります」
「……何ということだ……」
ルーズベルトは呆然と椅子に座り直す。
「それと艦船の被害ですが、輸送船二八隻が撃沈又は転覆。駆逐艦四隻が転覆しました」
「……陸海軍は何をしていたのかねッ!!」
ルーズベルトはキングとスチムソンを責めた。
「プレジデント、この攻撃は我々の予測を上回ってました。我々はハワイを攻略してからだと判断をしてましてパナマへの増援は決定したばかりでした」
スチムソン陸軍長官がルーズベルトに『言い訳』をする。
「……確かにそうであろうな。私もハワイを完全攻略してからだと何処かを攻撃しようかと思っていたが……うッ!?」
「プレジデントッ!? 如何なさいましたか?」
「い、いや何でもない……」
ルーズベルトは左胸を押さえていたが、直ぐに戻った。
「……次の攻撃目標はサンディエゴだろうな」
ルーズベルトはそう呟いた。
そして十日後、パナマ運河攻撃を終えた山口中将の第二機動艦隊がオアフ島のパールハーバー基地へ入港した。
パールハーバー基地はハワイ攻略作戦時に第二機動艦隊等に叩かれていたが、米軍が放棄した土木工作機械と上陸船団が持ってきた土木工作機械を使って修繕中だった。
報告によれば、後二ヶ月くらいで修繕は完了するとの事だ。
また、パールハーバー基地には損傷した第一、第三機動艦隊も駐留していた。本来、第一機動艦隊は空母が損傷しているので内地に引き上げるべきだが、工作艦明石とその二番艦の三原と就役したばかりの三番艦桃取が護衛の駆逐艦と共にパールハーバー基地へ入港していたおかげで第一機動艦隊の損傷空母は修理が出来たのだ。(本来はアイオワを修理するためだが……)
ハワイ諸島は全ては攻略していなかった。マウイ島やカウアイ島等は占領していたが、ハワイ島やオアフ島は米軍のゲリラ戦により完全占領はまだだったのだ。
なお、オアフ島の戦場は北部の方であり、耐えず銃撃音等が聞こえてくるがパールハーバー基地に飛んでくる事はなかった。
――ハワイ方面司令部――
ハワイ方面司令部は旧太平洋艦隊司令部があったところに拠点を構えていた。
「やぁ山口中将、それに楠木少佐。パナマ運河破壊作戦は見事だった」
山口中将と将樹が長官室に入ると堀長官がいた。
「ほ、堀長官? いつ此処へ?」
「昨日、到着したばかりだ。二式大艇でミッドウェーを経由してな」
山口中将と将樹は驚きながらも長官室に入った。
中には小沢、大西、宇垣等の司令長官もいた。
「海軍のハワイ方面司令長官は草鹿仁一にやらしている。陸軍の方は今村中将だ」
確かに草鹿と今村の姿もあった。
「パナマは確かに破壊したが……アメリカが和平交渉に応じる事は無かった」
日本政府はパナマ運河を破壊した時点でアメリカに和平交渉を持ち掛けた。
しかし、アメリカは和平交渉をするどころか一方的な和平案を出してそれ以外は認められないと突っ放したのだ。
「……ハワイ諸島及び占領地域の全て撤退は飲もう。しかし、陸海軍の解体及び陸海軍の兵器全て移譲は到底受け入れられんッ!!」
和平案の紙を見た東條や杉山達は激怒した。
占領地域の国々は独立して日本からの武器供給を受けていたのでオランダやイギリスの植民地支配から十分に抜け出せられるほどであり、万が一再び植民地支配があれば独立戦争をして日本との同盟する準備もあった。
しかし、その日本を守るための武器を奪われては何も出来ない。
戦争犯罪人として自分が処刑されるなら喜んで処刑されよう、それが日本が平和になるのであれば。だが、日本を破滅させようと言うならその和平案は此方も突っぱねる。
それが東條や陸海軍人の考えだった。
「堀長官、富嶽隊の配備はどうなっていますか?」
将樹が豊田長官に訊ねた。
「今のところ、ヒッカム飛行場を拡張する工事が行われている。作業が終了するのは五月二十日程であるから富嶽がハワイに来るのはそれからだろう」
堀長官は資料を見ながらそう将樹に言った。
「……何か疑問でもあるのか?」
堀長官は将樹に聞いた。
「……出来るだけ富嶽隊のハワイ配備は早めの方がいいかと思います」
「どういう事だ?」
宇垣中将が将樹に聞いた。
「……堀長官、独自で次期攻撃作戦を立案していたのですが、具申しても宜しいですか?」
将樹は堀長官に訊ねた。
「……構わん。言いたいたまえ」
「次期攻撃作戦の場所はアメリカ本土の四ヶ所です」
将樹はアメリカ本土の地図に四ヶ所の丸印を付けた。
「こ、これは……」
その四ヶ所を見た堀長官達は驚いた。
「……楠木少佐、これは本気かね?」
「本気でなければこんな作戦は立案しませんよ」
堀長官の言葉に将樹は苦笑した。
「アメリカのチートぶりは史実で証明されています。この作戦はアメリカ国民に和平感情をさせ、アメリカ政府に警告をするためです」
将樹は堀長官にそう言った。
「それでは何故この四ヶ所なのかを説明しましょう」
将樹はまず一つ目の場所を指差した。
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