第十一話
ドイツ空軍には女性のテストパイロットがいたらしいですね。
――九月一日、モスクワ――
「それではこれで停戦です」
「うむ」
日本の停戦交渉代表の東郷はソ連代表のモロトフと握手をした。
史実より少しばかり早い停戦だった。
結局、国境線は満州国が主張するハルハ河に置くことになった。
一連の事件によりモンゴル軍は戦力の大半が失われ、極東ソ連軍も半数が壊滅的状態となった。
勿論これはスターリンの耳に入り、ジューコフ等がシベリアへ送られる事は決定事項だった。
ソ連軍は仮想敵国をドイツと日本に据え置き、更なる軍拡が図られる事になる。
「ノモンハン事件で重戦車の重大さは陸軍内でも続出している。九七式中戦車も更に増産されるだろう」
会合で杉山が言う。
「それはよかったです。史実みたいにペラペラな装甲でやられていく戦車隊を見たくないですからね」
将樹はホッとしたように言う。
「楠木君は大丈夫かね? ノモンハンでえらく精神が削られたと聞いたが……」
伏見宮が聞いてきた。
「まぁ確かにそうですが、桐野少尉の妹さんに気合いを入れてもらったので何とか大丈夫です」
将樹はノモンハン事件後、幾度なく自らが落とした戦闘機の夢を見ていた。
流石に未来人であった将樹には辛かったのである。
それに上手く対処したのが桜花だった。
兄である桐野少尉から聞いた桜花は桐野少尉に将樹を呼ぶように命令して将樹が家を訊ねると問答無用で右ストレートを放った。
「帝国軍人がそれでどうするッ!! 貴様らの役目は日本を……国民を守るためではないのかッ!!」
と怒鳴り、将樹を元気付かせたのである。
「あの一発は痛かった……」
将樹はそう言う。
「まぁ楠木君と桐野少尉の妹の恋愛は置いといてだ」
「……振ってきたのは宮様ですよね? てか恋愛じゃないですから」
将樹はジト目で伏見宮を見る。
「まぁまぁいいじゃないか楠木君」
山本聯合艦隊司令長官が言う。
「九五式軽戦車改は役に立ちましたが、アメリカとの戦争になると威力不足になると思います」
将樹は気を取り直して発言をする。
「九五式軽戦車改の後継車として四七ミリ戦車砲を搭載した軽戦車を開発している。開戦前までには配備出来るだろう」
東條が説明をする。
「ドイツからのアハトアハト輸入でライセンス生産がいいかと思います。少なくとも太平洋戦線でのシャーマンを余裕で撃破出来ると思います。まぁ今の九七式中戦車でも大丈夫と思いますが、ソ連の満州侵攻がありますし」
「分かった、交渉はしておく」
「海軍だがボフォース四十ミリ機銃のライセンス生産の許可が降りた。最初は輸入からだが、開戦前までに戦艦と空母に搭載するよう努力するつもりだ」
伏見宮が言う。
「ボフォース四十ミリ機銃があればアメリカのドーントレスやヘルダイバーなんか目じゃないですよ」
将樹は嬉しそうに言う。
「此処からが日本のターンだな」
伏見宮がニヤリと笑う。
「それはさておき、ドイツがポーランドに侵攻しました」
将樹の言葉に東條達の目が変わる。
「……第二次大戦か。何としてもアメリカに負けないようにせねばな」
「はい。ところでドイツに戦闘機を送ったのですか?」
「あぁ、固定脚が気に食わないらしいが格闘性能と航続距離は向こうから絶賛されている」
日本はドイツから大量の工作精密機械の輸入に感謝の気持ちとして九七式戦闘機と九六式艦上戦闘機をドイツに送っていた。
ドイツ人パイロットは固定脚が気に食わなかったが格闘性能と航続距離(特に)はドイツ技師から絶賛を送られた。
空軍の主力戦闘機はBf109であるが航続距離は少ないのである。
航続距離の長さに目を付けた技師達は後のBf109E型以降では航続距離が大幅に改善されるのであった。
「Bf109はC型を三機購入してテストパイロット一名が送られてくる予定だ」
杉山が言う。
「流石に液冷エンジンは使わないがな」
伏見宮が言う。
彗星の事を言っているのだろう。
「まぁドイツの戦闘機ですから何か役に立つのはあるでしょう」
将樹はそう言った。
――十二月、横須賀航空基地――
「あれがBf109C型ですね」
将樹が上空を見上げる。
上空には九六式艦上戦闘機とBf109C型が空戦をしていた。
「格闘性能は明らかに九六式艦上戦闘機が上だな」
山本長官が言う。
「ですが一撃離脱だとBf109C型が有利です」
二機はいい勝負をしていた。
やがて二機は空戦を終わらせて着陸をする。
『ああぁッ!?』
九六式艦上戦闘機は着陸したが、Bf109C型は脚のバランスが崩れて右脚を折り不時着となった。
「大丈夫かッ!?」
将樹は我先にと不時着したBf109C型に駆け寄る。
「おいッ!!」
「……つぅ、やはりBf109の脚は弱いな……」
「ん?(何かどっかで聞いたような声が……)」
そして操縦席から何と飛行服を着た女性が出てきた。
「……嘘やろ……」
将樹は唖然とした。
「不時着は痛かったがまぁ仕方ないですね」
女性は赤いフレームのメガネをかけ、葡萄色の髪をしたショートヘアだった。
「ん? 助けに来たのか? ありがとうね」
「………(神さんよ。あんたは一体何がしたいんや?)」
将樹はそう思った。
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