第百六話
ハワイ諸島を防衛する艦隊がいなくなったのを確認した上陸船団は予定日にオアフ島沖合いまで接近した。
ハワイ諸島の航空基地は既に第二機動艦隊が三回、第三機動艦隊が二回ほど爆撃をして完全に使用不能にさせていた。
「これより支援艦砲射撃を開始します」
「うむ」
松田参謀長の言葉に宇垣司令官は頷いた。
「支援砲撃開始ッ!!」
「撃ェッ!!」
金剛型四隻も含めた戦艦群が一斉に艦砲射撃を開始する。使用砲弾は主に三式弾が多く含まれている。
戦艦群から発射された砲弾はオアフ島の海岸に命中し、機関銃陣地や高射砲陣地を燃やしていく。
「上陸船団より入電です。これより上陸を開始するとの事です」
「うむ、では砲撃を中止するか」
流石に砲撃する中、上陸部隊が海岸に近づくのは自殺行為に近い。
戦艦群が砲撃を中止すると、上陸船団から多数の大発が上陸する兵士を乗せて発進した。
大発の中には、三式中戦車や九七式中戦車改を乗せた戦車揚陸艦もあった。
「いいか、扉が開いたら一目散に走ってタコツボに入れよ」
上陸作戦の経験者である古参の軍曹が兵士達に言う。
「戦車隊が先に上陸するぞォッ!!」
大発を操縦していた操縦手が叫んだ。
三式中戦車や九七式中戦車改を乗せた揚陸艦は大発隊より先に砂浜に押し上げて戦車隊を吐き出した。
「ジャップが戦車を吐き出したぞッ!!」
「撃て撃てッ!! ジャップを砂浜で死なせろッ!!」
生き残っていた機関銃陣地や速射砲陣地等が一斉に三式中戦車や九七式中戦車改に攻撃を開始した。
「カクカク、敵さんの総攻撃だ。気合いを入れろよッ!!」
九七式中戦車改の戦車長が叫ぶ。三式中戦車と九七式中戦車改は厚い装甲を盾にして米軍の防御陣地に突き進む。
「速射砲でジャップの戦車を止めろッ!!」
米軍の三七ミリ速射砲が三式中戦車に砲撃するが、装甲が厚いために砲弾が弾き飛ばされた。
「くそッ!! 奴等の戦車の装甲は堅いぞッ!!」
その時、三式中戦車の砲搭が三七ミリ速射砲に狙いを定める。
「逃げろッ!! やられるぞッ!!」
だが、榴弾を放った三式中戦車の方が早く、彼等はアハトアハトの餌食となった。
「シャーマンはまだなのかッ!!」
十二.七ミリ重機関銃を撃つ兵士が叫ぶ。
「見ろ、シャーマンが来たぞッ!!」
漸くM4戦車十二両が援軍としてやってきた。
「タイプ97スペシャルを狙えッ!!」
先頭のシャーマン二両が接近してきた九七式中戦車改に攻撃する。
しかし、九七式中戦車改はそれを弾き飛ばした。
「何だとォッ!?」
それを見た戦車長は驚いた。
「クソッたれッ!! 砲弾を弾き返しやがったッ!!」
もう一両の戦車長が舌打ちをする。その時、九七式中戦車改が射撃をしてシャーマンを撃破した。
「くそッ!! ウォーカーがやられたぞッ!!」
シャーマンの戦車長はそう言いながらも射撃をさせる。
だが、これも九七式中戦車改は弾き飛ばした。
「後退だッ!! 後退しろッ!!」
しかしこの戦車長も直後に九七式中戦車改からの攻撃に戦死するのであった。援軍に来たシャーマン十二両を撃破した戦車隊はそのまま海岸にある陣地を蹂躙していく。
「今が好機だッ!! 総員着剣ッ!!」
兵士達が銃剣を取り出して九九式短小銃に着剣していく。
「突撃ィィィーーーッ!!」
『ウワアァァァァァーーーッ!!!』
とある連隊長の突撃命令に兵士達は雄叫びをあげて銃剣突撃を開始した。
「ジャップのバンザイ突撃だッ!!」
「撃て撃てェッ!! ジャップを近づけさせるなッ!!」
突撃してくる日本兵士達に機関銃弾が浴びせられるがそれも程なく終わりを告げる。
「味方の爆撃隊だッ!!」
この時飛来したのは第二機動艦隊から飛び立った攻撃隊九十機である。
攻撃隊は突撃を妨害していた機関銃陣地等を破壊していく。
「突破口が開いたぞッ!! 突撃ィィィッ!!」
『ウワアァァァァァーーーッ!!!』
兵士達は再び突撃を開始した。
――同日柱島泊地、聯合艦隊旗艦敷島――
「堀長官ッ!! 上陸部隊より電文が来ましたッ!! オアフ島の海岸に上陸を敢行したそうですッ!!」
新しく参謀長になった寺岡中将が通信紙を持って堀長官がいる長官室に駆け込んできた。
「おぉ、遂にやったか。それで詳細の方はどうかね?」
堀長官は喜びつつも報告を聞いた。
「は、上陸部隊は橋頭堡を築き、三式中戦車と九七式中戦車改を先頭にして進撃を開始したようです。ですが、敵さんも抵抗を激しくしているようで……」
「それはそうだろうな。ハワイはアメリカの重要拠点だ。それを手放すのは惜しすぎるからな」
だが実際にはアメリカはハワイを捨てていたのである。
戦力の補給と太平洋の基地をダッチハーバーにしたからである。
しかし、アメリカは時間稼ぎとしてエモンズ中将にゲリラ戦の展開等を指示していた。それにより、ハワイ上陸部隊は苦戦するがまだ先の事である。
「兎も角、ハワイ諸島を完全にしたら富嶽隊を送り込もう。このままアメリカの戦争継続意思を低下させねばならん」
日本陸海上層部は、アメリカとの和平のために富嶽隊によるアメリカ本土空襲作戦を立案している。
それを耳に挟んだ将樹も参加していたりする。
「それと宇垣中将の戦艦部隊ですが、アメリカの戦艦アイオワを捕獲しているのでミッドウェーにいる工作艦明石の派遣要請をしております」
「ほう、アメリカの新型戦艦を捕獲したのか?」
寺岡参謀長の言葉に堀長官は驚いた。
「はい、アイオワは何とか浮いてはいますが、損傷が激しいので日本への回航が難しいらしいのでハワイにて応急修理をしてから回航したいとの事です」
「成る程……よし許可しよう。アメリカの性能を調べる良い機会だからな」
あっさりと堀長官は許可した。
「分かりました。宇垣中将にはそう返信しておきます」
寺岡参謀長はそう頷いて長官室を出た。
「……………」
堀長官は舷窓を開ける。
「……このハワイ占領で対米講話に持ち込めればいいのだが……」
堀長官はそう呟いた。
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