第百二話
「よろしいのですか部長? ニミッツ長官にあのような電文を送って……」
「構わん。パールハーバーは持たない」
部下の言葉にキングはそう断言した。
「ですが、パールハーバーは重要だと思いますが……」
「貴様に言われなくても分かっているッ!!」
キングは一蹴した。
「それに前回は破壊するだけだったが、今回は燃料タンクを叩いていない。恐らくジャップは燃料タンクを破壊せずに占領後に使う気だ。だがまだ我々にはダッチハーバーがある。ハワイが占領されてもそこを拠点にする事も可能だ」
アリューシャン諸島にあるダッチハーバーは、工事によって港を拡張をしていた。
「太平洋艦隊司令部は当面サンディエゴに置くだろうな。ジャップもそこまでは来れまいよ」
サンディエゴ、ロサンゼルス等の航空基地には多数の戦闘機や雷撃機がいた。
更には訓練中のエセックス級空母群もいる。
「ハワイは時間を稼げればいいのだ(……済まない)」
キングは表はそう言いつつも心の中ではハワイにいる将兵に謝った。
ハワイは完全に見捨てられ、ハワイにいる陸軍部隊は持久戦を展開するよう命じられた。
しかし、リー中将の戦艦部隊は上陸船団の方向を目指していた。
リー中将もニミッツ長官からの撤退命令は受け取っていたが、リー中将は自分も時間を稼ぐとして敵戦艦部隊に艦隊決戦を挑もうとしていたのだ。この行動にキングもニミッツ長官も何も言わなかった。
「……我々は決死隊だな」
戦艦部隊旗艦アイオワの艦橋でリー中将はそう呟いた。
「だがそれでもいい。ヤマトとムサシを沈めれば奴等の士気はがた落ちだ」
リー中将は大和と武蔵が日本戦艦の象徴だと確信していた。
そのため、二隻を沈めれば攻略を中止すると踏んでいた。
しかし、リー中将は知らなかった。
大和と武蔵は主砲を四六サンチ砲ではなく五一サンチ砲になっていた事を……。これもまた日本側の情報戦の勝利によるものであった。
またリー中将は伊勢型の戦艦も三五.六サンチ砲から四十一サンチ砲へ換装している事も知らなかった……。
――戦艦部隊旗艦大和――
「何? 敵戦艦部隊を発見しただと?」
戦艦部隊司令官に就任したばかりの宇垣纏中将は参謀長の松田千秋少将に聞いた。
「はい、偵察に出した瑞雲からの報告です」
松田参謀長は自信を持って言う。
「……艦隊決戦か……」
「やるつもりですか?」
宇垣の言葉に松田は聞いた。
「今やらなくていつするのかね参謀長? 上陸船団の護衛は第一機動艦隊と第三機動艦隊に任せると小沢さんと大西に伝えろ」
「分かりましたッ!!」
宇垣司令官の命令は直ぐに第一機動艦隊と第三機動艦隊にも伝わり了承となった。
「これより戦艦部隊は敵戦艦部隊との艦隊決戦に入るッ!!」
宇垣の言葉に乗組員達の士気は上がった。
大和以下の戦艦部隊は上陸船団から離れて敵戦艦部隊へと向かった。(上陸船団は海護が護衛中)
「敵戦艦部隊視認しましたッ!! 距離五万二千ッ!!」
見張り員が叫んだ。
「……大和と武蔵の最大射程距離から砲撃を開始しますか?」
「うむ、それで頼む」
この時、宇垣司令官の戦艦部隊は戦艦大和、武蔵、長門、陸奥、伊勢、日向、三河、豊後の八隻である。
三河は艦首を見直して改装し、三五.六サンチ砲から四十一サンチ連装砲四基へと交換していた。垂直装甲も見直して傾斜装甲へと改装している。その分、カネは飛んだが……。
豊後は装甲、速度、対空火器、主砲(同じく四十一サンチ連装砲四基へ交換)の強化をして最大速度が二九ノットであるが部隊にはついてきてた。
「燃えてきたな」
「はい」
宇垣司令官の言葉に松田参謀長は頷いた。
「報告ッ!! 敵戦艦部隊の一番艦はアイオワ型ですッ!!」
「……アイオワ型か。とすると一番艦のアイオワだろうな」
「敵さんに大和と武蔵の五一センチ砲の威力を見せてやりましょう」
「うむ」
松田参謀長の言葉に宇垣長官は頷いた。
「左砲戦をする。砲雷撃戦用意ッ!!」
「了解ッ!! 左砲戦準備砲雷撃戦用意ッ!!」
大和と武蔵の五一センチ三連装砲六基が旋回して迫りくる米戦艦部隊に照準を合わせる。
「距離四万二千ッ!!」
見張り員が報告する。
「撃ちぃ方初めェッ!!」
「撃ェッ!!」
砲術長が発射引き金を引いた瞬間、大和の五一センチ砲九門は紅蓮の炎をあげた。
武蔵もそれに続いて大和同様に五一センチ砲九門が紅蓮の炎をあげた。
日本海軍が夢に見た米戦艦部隊との艦隊決戦が始まったのであった。
「敵先頭艦と二番艦発砲ッ!!」
「何?」
見張り員からの報告にリー中将は驚いた。
「ジャップはもう撃ったのか」
遠距離から撃ってもレーダー照準でないかぎり当たりはしない。
それがリー中将達の見解だった。
しかしそれは脆くにも崩れさするのであった。
「だんちゃあぁぁく……今ッ!!」
時間を測っていた士官の言葉と共にアイオワの周囲に五一センチ砲弾が落下して水柱をあげたのだ。
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