お騒がせ、訪問者たち
ダンダ~ン。遠くの方から何度も響いて聞こえてくる。
「ね、あの音何?」
初めて聞く煩い音に、私は起こされてムッとしていた。
「来客が来たんだろう。あれは、地球でいうところのチャイムだよ」
まだ寝ていようと、眠たそうにラーティは欠伸をしていたが
また眠りについてしまった。
「あ、寝ちゃったの?」
身体を揺するが起きない。
私の方は、目が覚めてしまい、起きたついでに水を飲もうとベッドから降りた。
ドアを開けようとして、ドアノブに手を掛けたところで。
ガンガンガンガン。
「な、何?」
扉の向こう側で、誰かが蹴っている。
『ちょっと、早く開けないさいよ。ラーティ』
あ、言葉が分かる。
でも、なんだろう?ラーティの知り合い?
女性の声が聞こえる。しかも、言葉使い怖い。
そのうち叩き方が激しくなって、怖くなった。
「ラーティ、怖いよ。起きて」
身体を揺すると、彼は欠伸をしつつ目を開けた。
「ん?」
と、寝ぼけた声を出したが
「てめえ、ラーティ開けろ」
という暴言を聞いて、ヒッと声を出したかと思うと、私の腰にへばりつく。
「ちょっと、ラーティ。何?」
「カマキリが来た」
「カマキリ?」
「マーキュリ星人だよ」
ええと。マーキュリ星人て?
不思議そうな顔をさせると、彼は3年前に出会ったというマーキュリ星人の話を
始めた。
見た目は、地球人に似ているが、内容はカマキリ。
夫になった者を食べてしまう種族。
双方が発情期になると、男側は危険だが子孫を残す為に会いに来るんだ。
だが、朝になると女性が男を食べる習慣があるから、男は即逃げる。
最近は、あちこちの星々に渡るようになり、捕獲されてペットとして飼う者も出て来た。
「ペット?」
「そう、僕等のように、その星は文明が遅れている。まだ、宇宙船すらない。
その美しい外見に惑わされて飼うものの、男を食べる習性に
飼う男性はまずいない。飼うのは、護衛用に女性が多い。
しかも、最近は子孫を残すのに同族ばかりでなく、別の種族にも手を出しているから
ハーフも増えている」
どうやら、ラーティは、外見地球人に似ている彼らを結婚相手にタコ女が
1度連れて来たことがあるらしい。
マーキュリ星人の習性を知って、慌てて辞めたそうだが
タコ女の友人が飼っている。
「そのタコ女の友人もタコ?」
「いや、イカ。実はイカ男の友人のひとり」
「イカ女?」
「そう。イカ男の元カノ。今もイカ男とヨリを戻したい雰囲気ありありで
よく家を訪問してはタコ女をいじめている」
珍しい地球人をペットにしたことで、横取りしようと企んでいて
マーキュリ星人を使って拉致しようとしたことを話してくれた。
「タコ女大丈夫なの?」
「ああ、いじめられていることに気付いていない。イカの嫌味が
タコではよく分かっていない」
とりあえず。イカ女はおいといて、そのカマキリなマーキュリ星人に
要注意なわけだ。
「怖い星人ね。あの扉を開けても大丈夫?」
「女性には害はない。君は大丈夫。問題は、男性の僕とか他の雄のペット達」
「ああ、そうか。食べるんだ」
「発情期にね」
普段は、プロレスラーのような性格の美人でスタイルがいい。
でも、性質的にはカマキリのようなんだ
と、ラーティは嫌そうに話をする。
今度は、大きな音とタコ女の声が聞こえて、扉をノックされた。
「・・・・・」
タコ女は扉を開けて、マーキュリ星人をイカ女に渡し、私とラーティの様子を伺った。
私とラーティは、タコ女に持ちあげられる。
イカ女が何か言っているが、タコ女は私達をイイコイイコしてくれる。
そのまま2人を抱き上げると、何か言っているイカ女と一緒に
リビングへと向かった。
イカ女は、ピンクのイカで、化粧が派手だ。
マーキュリ星人を腕に2人抱えている。
「ヤヤコ。やはり夫の姿が見えないから、食べられたんだよ」
「女性と女の子がいるよ」
そんな地球人の会話に、ニュアンスは違うけど、同じ言語が割り込んできた。
「あら?元々私達の種族は、夫婦という感覚はないもの。
子孫が残すことが出来るのなら、誰でもいいもの。同じ種族の男性は、食べられるのが嫌で
発情期にならないと現れないし。こっちの娘がいい?
どうラーティ?」
「うえ、結構だよ」
どうやら、3年前にも習性を知らなくて、騙されるところだったらしい。
「どうやって、分かって逃げたの?」
「今日みたいに、イカ女が連れてきて、その時にイカ男もタコ女と話が出た。
だから急いで逃げた」
個室の部屋へ逃げたらしい。




