表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能勇者  作者: キリン
無能勇者編
84/86

無能、会話を始める

 放たれた魔力の束は、空中で折れ曲がりながら迫ってきた。まるで生きているかのように軌道を変え、あらゆる方向からの攻撃は不可避と言わざるを得ない。


「……っ!」


 反射的に、俺はそこら中に赫雷を撒き散らした。最大限の怒りを、最硬度の防御に転換する。魔力の束のうち何本かは力づくで霧散させることは出来たが、残りの数本は威力こそ弱くなったものの、未だに俺の方へと向かってくる。


「だぁっ!」


 剣をふるい、攻撃を斬り伏せる。咄嗟の対応だったため腕に鈍い痛みが走るが、俺は奥歯を噛み締めながら押し切った。不格好に着地をする頃には攻撃は止んでおり、俺は五体満足のまま荒い息をしていた。


 ──格が違う、その一言に尽きる。あまりにもレベルが違いすぎるのだ、魔力も、身体能力も、いいや生物としての在り方さえ違う。どんな魔物よりも速く、強く、硬い……流石は伝説に語り継がれるだけはある。納得の強さだ。


(でもそれは、諦める理由には成り得ない……!)


 剣を握り、再び構え直す。

 怒ってるならぶつけてくれればいい、なにか不満があるなら言ってくれればいい。何でもかんでも自分の中で消化するのは、ひどく難しい。──だからこそ、彼女の気持ちを、彼女が燻らせていた思いを全部聞きたいんだ。


 牙と剣が何度も交差する。鍔迫り合いと呼ばれるものはほんの一瞬にとどまり、ぶつかって離れるを繰り返すその様は、最早人の範疇に収まるものではなかった。

 それでいい、彼女が一人ぼっちなら、俺も一緒に化け物になってしまえばいい。疲れなんて知らない、痛みなんて忘れた。剣を振れ、もっとだ、もっと速く。


 それから俺の頭の中はしばらく真っ白になって、しばらく何もないまま……俺は彼女との『会話』を始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ