表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能勇者  作者: キリン
大魔王エデン編
76/86

無能勇者、最悪の返答

「……は?」


 ゴロゴロと転がる首から漏れたその一言を、俺は確かに聞いていた。締められていた首から手が離され、俺は肺いっぱいに息を吸い込んだ。


「がはっ……はぁ、はぁ」


 何が起こった? 

 状況を整理しろ、まず大魔王は首を撥ねられた。何者に? 分からない……あまりにも分からないことが多すぎる。だがここで一番考慮しないといけないのは、俺はもう戦うことができないという点だ。


「……嘘じゃ」


 首だけの大魔王が、呟く。


「嘘じゃ、嘘じゃ嘘じゃ嘘じゃァァっ!!!」


 子供のように、勝負に負けた子供のような奇声を発する。それは怒りも混じっていたが、大体は恐れや畏怖が込められている気がした。


「お前が、貴方様がいるなんて聞いていない! 何故じゃ!? 何故このような人間なんぞに力を貸しているのじゃ!? 反則じゃ、反則じゃ……アルト!」

「……!?」


 言い淀んだ大魔王の首に、影が落とされる。俺もつられてその影の主を目で追う。


 そこにいたのは、一匹の竜だった。


 しなやかな体、力強き体。体の構造も形も、既存の竜とはまるで違っていた……しかし、翼があり牙があり尻尾があり、何より生物としての格の違いを感じるこの感覚では、この生物を竜と呼ぶほかなかったのだ。ーーただ、一点を除いては。


「……なんで」


 自分がおかしくなってしまったのかと思い悩む。そんなはずないと否定し続ける。しかし、やはり、間違いなかったのだ。


 翼、牙、尻尾。確かに竜であることは間違いない、人間ではない別格の生き物であることも、間違いないのだ。


 なら、何故。


「イグニスさん……?」


 恐ろしきこの存在に、美しき彼女を感じてしまうのだろうか。俺が放ったその名を聞いて、竜は何も言わなかったし、反応もしなかった。


 もっともそれは、俺への最悪の返答であることに変わりなかった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ