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ミーナちゃんの冒険  作者: paiちゃん
32/35

M-032 駆けつけてくれた2人


 ウミウシのコアってどこにあるんだろう? やはり体の真ん中辺りなんだろうか。となると、頭付近を3D(90cm)位削った具合ではまだまだコアに辿り着かない気もしてきた。

 

「これだけの大きさだ。少々削ったぐらいでは何ともならんのかもしれんな」

 リードさんが大きな長剣を振り回しながら、無数に伸びてくる触手を振り払っている。ヴォルテンさんと2人がかりで、片っ端から斬りとっているんだけど終わりがまるで見えない。2人足元には切り取られてもウネウネと動いている触手で床も見えないくらいだ。そろそろ焼き捨てなければ、触手で足を滑らせないとも限らないぐらいだ。


「どいて!」

 キャシーさんが前の2人に声を掛けると同時に火炎弾を放つ。

 床すれすれにウミウシめがけてゆっくりと動いていったから、航跡近の触手が嫌な匂いを立てて燃え上がっていく。

 ウミウシの焼け焦げた頭部のっ残骸に当たって火炎弾が周囲に火の粉を散らす。通常より火炎弾の大きさを増しているから、それだけ威力は小さくなってるんだろう。あまり肉片を飛ばすことなく爆ぜてしまった。


「だいぶ後ろに下がってしまったな。やはり爆裂球を使う外に手はないぞ」

「俺の残りは10個を切っている。使う前に、3人で【メル】を放ってみてはどうだ?」

 下の階でたくさん使ったからね。私も爆裂球自体は数個を残すのみだ。

「それじゃぁ、俺の合図で一斉に放つぞ。1、2、3【メル】!」


 ヴォルテンさんの合図で3人が火炎弾をウミウシに放つ。

 確かに【メル】以上、【メルト】以下という感じの火炎弾がウミウシの傷口をえぐったようだ。肉片があちこちに飛び散って、床に噴き出した体液が広がっていく。


「効果はそれなりか……。となると、爆裂球が大量に必要になるぞ」

 リードさんの言葉に、私はキャシーさんと顔を見合わせてしまった。4人の爆裂球を合わせても30個には達しないだろう。収束爆裂球を作っても5個程度ではとても倒せそうには思えない。

「おいおい、もっと問題が出てきたぞ!」

 ヴォルテンさんの言葉に、私達がウミウシに視線を向けた時だ。

 ウミウシの後ろでうごめく触手が見えた。


「仲間?」

「そんな感じだな。1匹でも問題だが2匹となればこの通路は封鎖されたことになる。根本的に策を見直さねばならん」

「でも、早くに解決しなければならないわよ。振動がまた大きくなってきている」


 キャシーさんの言葉を聞いてヴォルテンさんが天を仰いだ。

 天は我を見放したか! と嘆いているのかな? だけど、不思議と私は不安を感じなかった。

 心の中に何か安心させるものが伝わってくるのだ。


「あまり深刻な表情をしていないのね?」

「そうなんです。どちらかというと、少しずつ不安が無くなってくるんです」

 キャシーさんの問いに答えたら、リードさん達が振り返って私を見据えた。

「ひょっとして!」

「そういうことなんだろう。だが、あまり時間がないぞ」

 何がひょっとするのか私にはわからなかったけど、直ぐにその存在に気が付いた。遥か下の階からこっちに向かって駆けて来る靴音がだんだんと近づいてきたのだ。


 突然、私の両側に2人のお姉さんが立っていた。階段を一気に飛んできたみたいだ。

 銀色の髪を肩で揃えたお姉さんは革の上下に長剣を左右の手に1振りずつ持っている。もう1人のお姉さんは亜麻色の長い髪を背中で束ねていたが、その衣服は体にピッタリと張り付いている。リードさんの持つ長剣よりも長い剣を片手で軽そうに持っているけど、そんな長剣が使えるのだろうか?


「この辺りまでハンターが来るとは思いませんでした。マスターがシステムを破壊しましたから、4階層下までは魔物で溢れています。お手伝いしますから、早めに脱出することを考えてください」

「だが、ウミウシ2匹で塞がれている。どうにも通れないんだ」


 長い髪のお姉さんが銀色の髪のお姉さんに向かって小さく頷いた。銀色のお姉さんが同じように小さく頷くと長剣を背中に戻して右腕を前に突き出した。

 ブゥゥン……、と小さな音が聞こえ始めるとお姉さんの腕が変形し始めた。


「義手だったのか! いや、義手なら長剣は握れない。となると……」

「私の後方に下がって耳を塞いでください。発射5秒前……」


 一方的に私達に指示するとカウントダウンを始めた。言われるままに耳を塞いで目まで閉じる。

 耳に高音がねじ込まれるような衝撃を受けた。一瞬目を閉じていても何かが輝いた感じがした。音が消えたところで恐る恐る目を開けてリードさんが呆然とした表情で立っている後ろから前方のウミウシを見たのだが……。


「……聞いたことがあるぞ。身腕に大砲を仕込んでいる娘をアキト殿は従えていると。今の攻撃がそうなんだろう。あのウミウシが1発で飛散した」

回廊の壁に緑の体液と体の組織が張り付いている。あれが2匹のウミウシの姿ということになるんだろう。


「私達が先導します。マスター達も急いでおりますから、この施設から脱出するころには合流できるでしょう」

「ありがたい。ところで、あんたがディーさんなのかい?」

「ディーは先ほどの女性です。私はフラウ、ユング様に従う者です」


 おばあちゃんに聞いたことがある。アキト兄さんをマスターと呼ぶディーさんは背中に4枚の羽根を持っている。アキトさんの友人であるユングさんはフラウさんとラミィさんと一緒だと。

 でも、ディーさんの背中に羽根なんて付いてないけどね。


「この先はフリーです。急ぎますよ!」

 ディーさんの言葉に私達は急いで駆けだした。ディーさんの勘はネコ族を遥かに凌ぐらしい。周囲数M(数百メートル)の範囲で適性生物を見付けることができるらしい。そんな存在なら、安心して駆けることができる。

 まるで、この階の配置が見えるようになんのためらいもなく十字路を曲がっていくと、私達の前に植えに向かう階段が現れた。


「少し休憩を取りましょう。この上の階なら出現する魔物は足の付いたスラバです。胴体にもう1つ頭がありますよ」

「俺達に狩れるだろうか?」

「まだ、黒では無理でしょう。私が毒を持った頭を刈りますから、後はお任せします」


 弱ったところで止めを刺すということになるんだろうか? 昔はそんな方法でレベルを上げるハンターがいたらしいとおばあちゃんが嘆いていたんだよね。


「かなり容易になると思うが?」

「2人掛かりでなら、それで倒せます。でも連携が上手く行かないと反撃されますよ」

 首を1つ取っても、2人掛かりというのは単なるレベル上げの範疇を超えていそうだ。

 キャシーさんも私に顔を向けて頷いている。やはり単なるレベル上げに近いと感じていたようだ。


「3分で倒せない場合は、私達が倒します。あまり時間が無いのであらかじめお話ししておきます」

 フラウさんの話だと、この2人なら1日とで十分に倒せるってことなんだろうか?

 隣のキャシーさんとさほど年齢は変わらなく見えるし、筋肉だってリードさんの方が遥かに勝っている。

 

「おばあ様に聞いたことがあります。アキト様とディーさん2人で5千の敵兵を前に奮戦したと聞きました。話に聞く妖精族のように背中に美しい羽根を広げて空を飛んだとも」

「おばあちゃんも似たことを言ってました。たぶん本当のことなんでしょうけど、見た目はキャシーさんと変わらない姿です」


 そんな話をしている内に、次の階に向かうことになった。先頭にディーさん達が並び私達はその後ろに続く。

 相変わらず、進路に迷いがない。このフロアを知り尽くしていても、何の標識も無い分岐点では少しは迷うんじゃないかな?

 でも先を行く2人にはそんな迷いがまるで感じられないのだ。


「一度歩けばすべてが頭に入ると聞いた話は、本当だったんだな。まさかそんなことはできないと思っていたが」

「アキト殿を取り巻くハンター達の逸話は、俺の部族にもいろいろと残っている。俺達を王国の山岳猟兵として訓練してくれたのはアキト殿だ。今でも1個中隊がアクトラス山脈に展開して北からの侵入を監視している。ディー殿は我等種族の子供を救出する際に敵数百を一気に焼いたらしい。信じられんと部族の若者がその真偽を確かめに出かけたが、帰って来た若者の顔は蒼白だった」


 確か、気化爆弾とおばあちゃんが話してくれた。滅多に使わない技らしいけど、その威力は数百の【メルダム】を一緒に放ったような威力らしい。

 でも、いつも私達を気遣ってくれたお姉さんだったのよ。といつも最後に言っていたから優しい性格なんだろう。


 突然先を歩いていた2人が立ち止まって、私達に顔を向けた。

「いましたよ。1頭ですから頑張ってみてください。先ずは毒の頭をなんとかします」

 ディーさんが背中の長剣を引き抜きながら私達に告げたんだけど、その長剣は柄¥私の持っているグルカ以上に曲がっている。

 あんな長剣で相手にするんだろうかと考えていたら、ディーさんがその長剣をいきなり投げつけた。

 くるくると回りながら飛んで行った長剣が、昆虫のような目を持つ頭を刈り取ってしまった。

 ドサリと音を立てて落ちた首を見ている私達に、「後をお願いします」と言葉を掛ける。

 とりあえず、リードさんが槍を構えて残った頭をけん制すると、ヴォルテンさんが壁伝いに長剣を持って残った首を取ろうと近寄っていく。

「胴体の頭は貴方が狙撃できるでしょう?」

 私にそういって優しい目を向けたのはフラウさんだった。うんと頷くとクロスボウを取り出して爆裂球付きのボルトをセットする。


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