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【書籍化】秋津皇国興亡記  作者: 三笠 陣@第5回一二三書房WEB小説大賞銀賞受賞
第五章 擾乱の半島編

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86 軍乱の波及

 日は完全に帯城を囲む山々の彼方に消え、周囲に夜の帳が降りる。

 倭館のある高台から見える帯城は、ほとんど闇に沈んでいた。街灯がないために、城内は夜になると真っ暗になるらしい。

 多少、明かりが見える場所は、位置からして王宮だろうか?

 一方の倭館の敷地内は、明るかった。

 各門の周囲には篝火が焚かれ、建物の中からも角灯や行燈の明かりが漏れている。そして、中庭では機密文書を燃やす炎が赤々と舞い上がっていた。


「防衛の準備は、一通り終わったようだな」


 敷地内を一通り見回って、指揮所に戻ってきた景紀はそう言った。


「はい。出来る限りの防備は整えました」若林曹長が報告する。「唯一、正門の防備だけは不安が残りますが」


「門番の陽鮮兵が裏切らないことを祈るしかないな。まあ、こちらから鍵が掛けられないことを前提に正門の防備は整えちゃいるが」


「はい。正門および枡形門の内側にそれぞれ塹壕を掘り、土嚢を積み、戸板や畳で遮蔽物を造り、簡易の野戦陣地を築城。万が一、正門が破られても枡形を利用して侵入者に対し十字砲火を浴びせられるようにしました。また、一部の兵士たちを密かに裏山に向かわせ、逆茂木となる木材も確保しております。これで正門内側の陣地の構築は、ひとまず完了したかと」


「ああ、よくやってくれた、先任曹長」


「はっ」


 少なくとも、手元にある資材で出来る限りの防備は整えたことになる。

 あとは、どれくらいの人間が倭館に押し寄せるか、である。伝単の散布でさらに王都が混乱すれば、王世子としてもこちらに構っている暇はなくなるだろう。

 だが一方で、斥邪討倭を叫ぶ群衆や兵卒が倭館を襲撃する可能性がある。

 皇国もそうだが、攘夷派という連中はとにかく異人と見るとすぐに排斥しようとするから困りものである。

 王世子も斥邪討倭を唱えている以上、中央軍たる五営を差し向けてくる可能性もある。金光護の話を聞いて、よりその危険性は高いと景紀は判断していた。

 しかし、斉建国前後の時期を最後に、陽鮮は本格的な対外戦争を経験していない。軍の実力がどのようなものであるのか、景紀は断片的にしか判らない。ただ、近代的な徴兵制度を始めとした軍事制度は持たず、兵卒の待遇も劣悪であることは判明している。

 そのような軍の士気が高いとは、到底、思えない。

 いや、兵卒たちも攘夷思想にかぶれている場合、逆に士気が高まる場合もあるのか……。

 そこは、実際に対峙してみないと判らないところであった。


「もし陽鮮の群衆や軍勢が押し寄せても、決してこちらから発砲しないよう、改めて徹底しておけ。そして、倭館の敷地外に出ての迎撃は許可しない、とも」


「中佐殿の連れてきた陰陽師殿たちが、結界を張っているのでしたな?」


 若林先任曹長は、ちらりと指揮所の隅に控える冬花に目線をやった。


「ああ、そういうことだ」


「了解であります。再度、徹底させましょう」


 若林は不満一つ漏らさず、実直そうな声で頷いた。


「ところで中佐殿、実は兵士たちがこのようなものを作りましてな。……おい、中佐殿にお見せしろ」


 すると、指揮所の外にいた幾人かの兵士たちが、竹竿に布を付けた幟を持ち込んできたのだ。


「もし陽鮮の連中と戦闘になれば、軍旗の代わりにこれを掲揚させて下さい」


 先ほどまでの生真面目そうな表情を捨て、若林曹長は悪戯っ子のような表情を景紀に見せる。

 皇国陸軍には太陽の意匠をあしらった陸軍旗の他に、それを元にした連隊ごとの軍旗が制定されている。しかしながら、“軍事視察団”という名目で陽鮮に派遣されたこの部隊には、独自の軍旗が存在していない。


「なんというか、軍旗というよりも戦国時代の武将たちが掲げた幟みたいだな」


 先任曹長たちが示した幟を見て、景紀は苦笑した。

 白い布を用いた幟に書かれていたのは、「非理法権天」、「南無八幡大菩薩」といった文字だったのである。


「何でしたら、結城家の家紋でも書き加えましょうか」


「それは止めてくれ」


 本気の口調で、景紀は断った。


「……まあとにかく、士気向上の面からも妙案だな。俺は構わん」


「ありがとうございます」


 にやり、と若林曹長は楽しそうな笑みを浮かべた。


「それで、だ」景紀は話の筋を戻した。「先任曹長、貴官も含めて兵士たちは今夜はしっかりと睡眠を取ってもらって構わん。夜の歩哨を立てる必要も無い。警戒の方は、外務省警察の連中が請け負ってくれることになったからな。俺たちの出番は、実際にこの場所が襲撃されてからだ。それまでは、無駄に兵を疲れさせるなよ」


「了解であります」


 尊敬の口調と共に、若林は敬礼した。


「お前も下がっていいぞ」


「はっ、では失礼いたします」


 視察団の先任曹長は、くるりと踵を返すと指揮所を後にした。


「冬花、お前もだぞ」


 景紀、冬花、貴通の三人だけが残った指揮所で、景紀は言った。


「大丈夫なの?」


「通信盤の様子は、俺と貴通で見ておいてやる。何かあったら知らせるから、ひとまず休んでおけ。お前には、呪術師として体調を万全にしておいて欲しいからな」


「……了解。でも、景紀もちゃんと休むのよ」


「判ってるって」


 どこか判っていないような声だったので、冬花は少しだけ唇を尖らせた。それでも、それ以上何も言わなかった。ここで食い下がっても、主君たる少年を煩わせるだけだと思ったのだ。


「じゃあ、本当に何かあったら呼んでよ」


「ああ」


 そう念押しして、冬花も指揮所から出ていった。

 そして、景紀は貴通を見る。


「んで、俺とお前は、三時間交代で睡眠。外務省警察が何かを察知した場合、即座に対応出来るようにしておく必要があるからな。将校なら、それくらいの苦労を背負い込むのは当たり前だろう?」


「まったく、景くんは妙なところで生真面目ですね」くすりと笑って、貴通は応じた。「でもまあ、景くんらしいと思います」


「とりあえず、お前から休んでおけ」


「とか言いつつ、起こしに来ないで僕をずっと寝かせて、自分は徹夜なんてしないですよね?」


 少しだけ圧のある穏やかな声で、貴通は問いかける。景紀ならば、やりかねないと疑っているのだ。

「この状況で、そこまで意地を張るつもりはないから安心しろ」


 ちょっとだけ自嘲じみた笑みを、景紀は唇の端に浮かべた。


「俺も、この状況で睡眠不足で判断力を鈍らせるようなことはしないさ」


「了解です」


 そう言って貴通も指揮所から出ていこうとしたところで、指揮所に来客があった。


「……景紀様、少しよろしいでしょうか」


 宵だった。


「どうした?」


「何か、私にも役割を頂ければと思いまして」


 思い詰めた表情はしていないが、どこか懇願するような声ではあった。


「鉄砲を持って防衛に参加しろと言われれば、参加いたします。弾薬を運べと言われれば、運びます。私は、将家の妻なのです」


 戦国時代には、夫の出陣中に城が攻撃され、残された妻の指揮で城を守り抜いた事例もある。宵の申し出は、将家の妻の役割という伝統からすればおかしなものではない。


「……」


「……」


 景紀と貴通は、互いに顔を見合わせた。


「戦闘糧食を配ってもらうか?」


「そうですね。実は、その人手が足りなさそうですし」


 戦闘糧食とは、要するに戦闘時に将兵に配られる食事のことである。現状、戦闘となった場合、倭館では料理掛の四名と女中四名の計八名で食事の支度から配膳までをこなさなければならないことになる。もちろん、その他の書記官や通訳官などにも手伝わせることになるだろうが、戦闘の合間の迅速な配膳という点から考えると、いささか人手不足であった。また、配食以外にも、炊事・飲料用の水くみなどでも人手は必要である。


「すまんが、そういうことで頼む」


「ありがとうございます」


 ほっとしたように、宵は頭を下げた。将家の女性として、戦いの中での役割が与えられたことに安堵していたのだ。


「それにしても」


 そんな北国の姫の様子を見て、貴通が口を開いた。


「宵姫様にとってはこれが将家の女性としての初陣ということになるのでしょうし、僕にとっても景くんとの初陣になりますが、それがこんな形になるとは思っていませんでした」


「何だ、不満か?」


 にやり、とどこか諧謔味を込めて景紀が問う。


「いいえ、まさか」


 兵学寮同期生の言葉に、軍装の少女は清々しい笑みを返した。まるで、心のつっかえがすべてなくなったような、そんな笑みであった。


「景くんの下で戦えるのなら、それが野戦だろうが籠城戦だろうが攻城戦だろうが、どんと来いですよ」


◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆   ◆


 そして、七月二十三日。

 この日は晴れであった。朝はそれなりに涼しいが、盆地故にこれから熱くなっていくのだろうと予測された。

 少なくとも、朝の時点で倭館周辺は平穏であった。

 冬花は通信盤の前で本国からの通信を待ち、宵は倭館の炊事場で料理掛や女中たちから簡単な料理の作り方や握り飯の握り方などを習っていた。

 景紀ら軍事視察団は、外務省警察と共に警戒態勢をとっている。


「幟に菊水紋が増えているんだが……」


 倭館の屋根から帯城を観察しながら景紀が敷地を見渡すと、昨夜見せられた「非理法権天」の幟に新たに菊水紋が追加されていた。

 菊水紋は、かつて皇主を支えた名武将が旗印とした紋であった。その活躍は、軍記物や歌舞伎の演目、国語の教科書などとなり、広く皇国臣民一般に親しまれている。


「中佐殿は結城家の家紋を使う許可を下さいませんでしたし、ならばと思いまして」


 昨夜と同じような悪童じみた笑みを浮かべて、若林曹長が説明した。


「それに、いつまでも“軍事視察団”では締まりがありませんからな。戦うならばそれなりに華々しい部隊名をと、兵士どもは欲しておりましたので」


「“軍事視察団”改め“菊水隊”か。確かに、悪くはないな」


 自然と、景紀は口元を緩めた。何だかんだと言いつつ、自分もやはり将家の人間らしい。


「……景くん、ちょっと南の方を見て下さい」


 すると、同じく屋根から帯城の様子を伺っていた貴通が双眼鏡を構えたまま言った。


「どうした?」


 景紀もまた、彼女に言われるままに南の方に双眼鏡を向ける。


「ちょっと角度の関係で見えにくいんですが、南大門の方向に群衆らしき集団がいるようです」


「この状況で呑気に朝市、ってわけでもないか……」


「ええ、そうでしょうね」


 帯城には東大門から南大門にかけて、「市廛」と呼ばれる商業区域が設けられている。当初は朝廷から特権を与えられた商人のみが帯城での商業を許されていたが、その独占的な特権のために帯城の物価が上昇し庶民の生活を圧迫、闇市が横行したために朝廷としても私商人の営業を許可せざるを得ない状況となり、今では帯城においてある程度、自由な商売が可能となっていた。

 ただし、城内では未だ特権を持つ商人が多く、そのために私商人たちは城壁外に市を広げることとなった(帯城の住民は城内で商売をする人間たちを「内廛」、城外で商売する者たちを「外廛」と呼んでいた)。特に南大門の外側では帯江を通してもたらされる魚介類を中心とする魚市場を中心に市場が発達しており、朝から多数の人間が集まることは、この状況下でなければ特段、注目すべきことではなかった。


「鉄之介と八重に、式を放って調べさせる。お前たちは、引き続き帯城の監視を続けろ」


「了解です」


「はっ」


 貴通と若林先任曹長が応えるのを確認すると、景紀は落下するような勢いで梯子を降りていった。


  ◇◇◇


 七月二十三日、王世子・李欽と太上王・康祖は討倭の伝教を発した。

 倭奴との条約締結などは「斥和」の志に悖るとし、また条約締結を執拗に求める倭奴は洋賊の手先であり、そのフランクやヴィンランドと同じくその侵略の思想は明らかであるとし、その討滅を命じたのである。

 さらに、伝教では悪貨が国に溢れているのは貪欲な倭奴が銀を溜め込んだ結果であるとして、倭館を攻め落とした暁にはその蔵にある銀を民の救恤のために用いると伝教では宣言していた。

 結果として、悪貨の流通によって生活苦に陥っていた帯城に住む多くの者たちがこの伝教を歓迎した。もともと、皇国が銀の流出を抑えようとして交易専用の銀貨を鋳造したことに、銀の供給を皇国に頼る陽鮮は反発していたのである。

 李欽王世子は、そうした民衆の秋津皇国への不満を上手く利用することに成功したのであった。少なくとも、民衆の不満が秋津人たちに向かっている間は、彼らの不正役人への不満を逸らすことが出来る。

 この伝教を受けて、軍乱に参加していた兵卒や農民たちは攘夷派武官たちの煽動もあって、城門を開いて一斉に行動を起こし始めた。

 まず襲われたのは、京畿監営であった。

 監営を守る兵士たちも、多くは役人の不正に対する不満を持つ者たちであり、むしろ襲ってきた乱兵・乱民に合流する者まで現れる始末で、兵卒を統率すべき監営の武官が真っ先に殺害された。

 一方、京畿監司(県令、府知事に相当)・崔重祥は一部の武官に守られて、辛うじて倭館に逃げ込むことに成功した。

 しかし、その行為は不正役人が倭奴と繋がっているという印象を凶徒たちに与え、ますます彼らの反秋津感情を燃え上がらせる結果に繋がったのである。






「くそっ! 正門の陽鮮兵は射殺しておくべきだった!」


 京畿監司が倭館敷地内に逃げ込んだことが、帯城の民衆にどのような印象を与えるのかを正確に察することが出来ていた景紀は、指揮所にて激怒していた。

 本来であれば門を固く閉じて監司を敷地内に入れなかったのであるが、正門の鍵を外側から陽鮮兵が管理しているという倭館の制度が、こうした事態を招いていた。

 今更、彼らを追い出したところで陽鮮民衆の怒りを鎮めることは出来ないだろう。


「何が、両殿下をお守りするために馳せ参じた、だ!」


 倭館に逃げ込んできた京畿監司や護衛の武官たちの言い分は、まったく身勝手なものであった。


「とりあえず、倭館に逃げてきた連中どもは一つの部屋にまとめておけ! 余計なことは絶対にさせるな! 武器も全部取り上げろ! 鉄之介に言って、部屋に結界を張って閉じ込めておけ! 妙な動きをするようなら術で眠らせてしまえ!」


「はっ」


 指揮所から、伝令の兵士が駆けていく。

 こんなことにただでさえ少ない人的資源、それも三人しかいない術者の内の一人を割かなければならないことに、景紀は苛立ちを隠せなかった。

 もっとも、それは成り行きで公主・王子の二人の身の安全に対して責任を負っている礼曹佐郎・金光護も同様であったようで、「両殿下を凶徒よりお守りするために馳せ参じた」と臆面もなく言ってのけた京畿監司・崔重祥に対し露骨に不快感を示していた。


「……それで、状況はどうだ?」


 憤然と息をついて、景紀は若林先任曹長に問うた。


「まあ、聞こえる通りですよ、中佐殿」


 若林は皮肉げな笑みを浮かべて答えた。

 倭館を囲む高い塀の向こう側から、集まった賊徒の怒声が響いている。金光護によると、その怒声の内容は「銀を寄越せ」、「倭奴を討ち滅ぼせ」、「不正役人を許すな」というものらしい。

 銀を寄越せというのは、景紀にも理解出来ない叫びであった。ただ、金光護によると皇国が銀の流出を防止しようとしたために陽鮮国内で出回る銀が減り、その結果、悪貨の流通や物価の上昇を皇国による“奸計”だと思い込んでいる者たちが陽鮮国内には存在しているらしい。

 別に悪貨が流通しているのは秋津皇国の所為でも何でもなく、太上王が王宮の再建費用を賄うために悪貨を鋳造したのがそもそもの原因であるのだが、一部には反秋津感情故にそうした結論を導く者たちがいるのだろう。

 まったく、秋津皇国にとっては迷惑千万な話であった。

 秋津皇国は秋津皇国で、国内の金貨・銀貨の質を保ち物価を安定させる必要がある。陽鮮の人々のために、皇国の金山・銀山があるわけではないのだ。


「正門は?」


「逃げ込んできた陽鮮兵から、鍵は奪い取りました。とりあえず、鍵は掛かっている状態です。外から、ですが」


「凶徒どもの数は?」


「ざっと数千名はいるでしょうな。高台の下は陽鮮人どもで埋め尽くされているような状態で」


「……」


「……」


 景紀と貴通は、互いに険しい顔を向け合った。と、廊下を駆けてくる音が聞こえた。


『結城殿!』


 指揮所に駆け込んできたのは、貞英であった。後ろには、金光護が続いている。


『妾が、彼らの説得に出る。それまで、絶対に撃つでないぞ』


 強い視線で、貞英は景紀を睨んだ。


「どうぞ、公主殿下のご随意に」


 だが、景紀の反応は素っ気なかった。彼は公主たる少女の説得に、集まった暴兵・暴民が応じるとは考えていないのである。

 そして、そんな少年の感情は貞英も容易に察することが出来た。

 景紀を睨んでいた表情に、悔しげなものが混じる。

 だが、それ以上何を言うでもなく、踵を返して指揮所から駆け出していった。金光護は、ちらりと景紀を申し訳なさそうに一瞥した後、公主の後ろ姿を追いかけていく。


「……貴通」


「はい」


「少し、冬花と一緒に指揮所を空ける。その間、指揮を頼んだ」


「……了解です。まったく、景くんも甘いですね」


 しょうがない、という微笑ましげな諦念を含んだ声で、貴通は応じた。彼女は、景紀が公主の護衛に付いていこうとしていることに気付いたのだ。


「十二のガキに死なれちゃ、寝覚めが悪いからな」


 景紀自身もそれが判っているのか、溜息交じりに言葉を返す。そして、指揮所の隅に控えている白髪赤眼の少女に目を遣った。

 今、陰陽師の少女は着物の上に黒い胸当てを付け、背に矢筒を背負っている。もちろん、ただの矢ではなく、彼女の霊力と術式の込められた破魔矢であった。

 冬花もまた、景紀たちと同じく戦支度を整えていたのである。


「それじゃあ冬花、ちょっと敵情偵察も含めた散歩に出るぞ」

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『秋津皇国興亡記』第1巻
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