230 汚される忠義
結城家側の状況が動き始めたのは、十八日一四〇〇時過ぎのことであった。
響谷川西岸に展開する騎兵第一、第二旅団の元に澄之浦より独立混成第一旅団麾下の独立歩兵第一連隊が合流したのである。
騎兵第二旅団の占拠した皇都北部の田隅操車場に、連隊長・宮崎茂治郎大佐率いる歩兵約一〇〇〇を乗せた列車が到着したのだ。
連隊の戦力としては約半数の規模ではあったが、それでも市街戦も想定され得る状況での歩兵部隊の増強は景紀にとって心強いものであった。
そして、この時までに反乱軍の規模や配置など、おおよそのことを景紀の側は把握し始めていた。
景紀の放った斥候や結城家の隠密衆、忍たちから情報がもたらされるだけでなく、結城家と懇意にしている大店などからも情報は入手出来た。
伊丹・一色両公は皇都に駐屯する部隊すべてを掌握出来たわけではなく、第一師団や近衛師団の野砲兵連隊、輜重兵連隊、工兵大隊などが依然として事態を静観しているままであるという。
これら去就を明らかにしていない部隊に対しては、反乱軍側も使者を送って自らに引き入れようとしているようであり、結城家領軍の側でも対抗するように使者を送り込むこととなった。
とはいえ、結城家側に馳せ参じるように要請するのではなく、あくまでも静観する姿勢を保っていて欲しいということを伝えるのみであった。
これは、去就に迷っている者たちにとって非常に効果を発揮した。
しかも、反乱軍(蹶起部隊)側の使者たちの多くが反感を買っていたことも景紀の側に有利に働いた。反乱軍側の使者は、かなり高圧的に蹶起に加わるようにこれら部隊に要請していたのである。
「刑部宮令旨」を手に入れたことも手伝ったのか、蹶起の趣意を説教じみた口調で説明して蹶起に参加しないことの非を糺弾したり、蹶起に参加しなければ伊丹公に大命が降下した暁に貴様らは泣きを見ることになるぞと脅迫じみたことを言う使者たちもいたいたようであった。
こうしたことから、去就を明らかにしていない部隊の中には蹶起部隊側の使者がもたらした情報を積極的に結城家領軍に流すところも現れていた。
皇都中心部を巡る攻防戦が発生したとしても積極的に参戦する決意はないが、結城家側に恩を売っておきたいという機会主義的な者も中にはいたのである。政治的にはともかく、軍事的には結城家領軍の側が優位に見えたことも、こうした動きを助長した。
そして反乱軍側が恭順工作に利用しているという「刑部宮令旨」などという怪しげな文書の正体については、景紀も貴通も最初から疑ってかかっている。今さら、そのような情報が出てきたところで動揺はない。
もちろん、本格的な市街戦になれば依然として兵力は不足していると景紀たちは考えていたが、一方で結城家領軍が反乱軍討滅のため続々と領軍を皇都に集結させつつあるという噂を流して反乱軍側の動揺を誘おうとしていた。そうした噂が、去就を明らかにしていない第一師団、近衛師団麾下の部隊の態度に影響を与えていたといえよう。
「警視庁庁舎には、直信の奴がいるのか……。あいつも、面倒なことに巻き込まれたもんだな」
景紀の元にもたらされた情報の中には、警視庁庁舎を拠点としている反乱軍部隊を率いているのは伊丹正信公の孫・直信であるというものもあった。
直信は、景紀や貴通にとって兵学寮の後輩に当たる少年である。祖父のように強烈な攘夷思想を持っているわけでもなく、六家の跡取りとして極めて常識的な能力と思考を持った少年というのが、景紀や貴通の印象であった。
そんな直信にとって、恐らくこの反乱に巻き込まれたことは不本意なことだったろう。
「何とか警視庁庁舎に使者を送って、こちら側に引き入れることは出来ませんかね?」
貴通も地図を眺めつつ、真剣な口調で言った。
現在、反乱軍が占拠している地域の東側の防衛線は、秋津橋を中心とする東海道・中山道の南北に伸びる街道沿いの線を最前線としている。
その後方に赤レンガ造りの皇都中央駅が存在し、やはり南北に東海道本線・東北本線の路線が延びている。駅舎と線路の築堤もまた、第二の防衛線となっていることだろう。
それを突破して、宮城東大手門より宮城に突入するというのが景紀たちの作戦構想である。
警視庁庁舎は東大手門・南大手門を監視出来る位置に存在しており、東海道・中山道の防衛線、駅舎・鉄道築堤の防衛線という二つの防衛線を突破したとしても、警視庁庁舎に拠る反乱部隊が両大手門前に最後の防衛線を敷く可能性は存在していた。
その意味では、警視庁庁舎に拠る直信の部隊を寝返らせることは、宮城への突入を目指したい景紀たちにとっての障害を一つ、減らすことになる。
また、反乱軍の占拠する地域の中でも特に重要な官庁街の東側を封鎖している部隊が離反することは、それだけ他の反乱部隊の動揺を誘うことが出来る。それが、伊丹正信の孫が率いる部隊であるならば、なおさらである。
ただし、景紀自身は懐疑的であった。
「まあ、やってみる価値はあるだろうが、祖父を裏切る選択肢を簡単に選べるような奴じゃないだろ?」
少なくとも、直信と祖父・正信の関係が悪いという話は聞かない。むしろ正信は嫡男・寛信の件があったからか、自身の後継者として孫を直接育てようとする姿勢すら見せているという。
最近では六家会議にも付き添わせていたそうで、直信に祖父を裏切って結城家の側に付かせるための説得は、恐らく難航するだろう。
さらに言えば、どうやって反乱軍の占拠する地域の中でも特に奥まった場所である警視庁庁舎まで使者を送り込むのかという問題もある。そのため、現段階で使者を送り込むことは難しかった。
だから景紀も貴通も、ひとまずは直信の説得については構想段階に留めることにする。そして、改めて地図に向き直った。
「秋津橋を中心とするこの南北に伸びる街道沿いの防衛線、どう突破したもんかな……」
多銃身砲の据え付けられた陣地への突撃がいかに多くの出血を伴うのか、対斉戦役の遼河戦線でそれを見ている景紀の態度は慎重であった。
午前中の貴通との会話では、夜襲か徴発した川蒸気を用いた迂回が選択肢として挙がっていた。
徴発した川蒸気の数、その集結や兵員を乗り込ませるためにかかる時間などを考えると、川蒸気を用いた迂回はあくまで陽動とし、夜襲による突破が現実的であろう。
反乱軍側では糧食の問題が生じているという情報もあったが、伊丹・一色両公が五摂家と共に新政権樹立のための工作を進めているという御霊部からの情報もあり、二日も三日も反乱軍との対峙を続けるわけにもいかない。
今日明日あたりでの決着をつけなければ、領軍将兵の士気という点からも宮城突入は難しくなる。
「対斉戦役のように、宮城に空から乗り込めれば話は早かったんですが……」
昨夜、島田少将も口にした案を貴通も未練を残すように言う。
「宮城上空は飛行禁止区域。あの御霊部長がまず許さないだろうし、中途半端な戦力を宮城内に送り込めたとしても逆に包囲されるのがオチだろうよ」
結局、二人の意見が夜襲へとまとまりかけようとしていた、その時であった。
『若様、そこにいる!?』
地図を広げた机の傍らに置いていた通信用呪符から、突然、八重の声が聞こえてきたのである。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
皇都にて歩兵第一連隊を中心とする蹶起部隊と彩州や総州から進撃する結城家領軍が対峙を続けているとはいえ、皇都市内は小康状態を保っているといえた。
もちろん、不穏な噂は皇都市内のいたる所で流れており、このままでは皇都が戦場になるのではないかという漠然とした不安を抱く者たちも多かった。結城家の散布した伝単の影響もあり、蹶起部隊に冷たい視線を向ける市民たちも存在している。
しかし、だからといって打ち壊しや焼き討ちのような民衆騒擾が発生しているわけでもなく、皇都市民たちはあえて皇都を占拠する者たちと対峙しようとはしていなかった。
そしてもちろん、人口の多い都市である以上、誰もが誰も息を潜めてこの騒動をやり過ごそうと考えているわけではなかった。大八車に家財を乗せて郊外に逃れようとする者たちもいたが、中には野次馬根性を露わにして、皇都中心部を占拠している将兵たちを見物に行く者たちも相応に存在していたのである。
これは、小康状態を保っているがために発生した事例といえるだろう。
そうした中で、結城景紀のシキガミたる少女の引き廻しは行われることとなった。
伊丹正信の命によって牢に放り込まれていた冬花は、伊丹家隠密衆の者たちによって裸馬に跨がらせられた。
拷問の傷そのものは妖狐の血の持つ自然治癒力で回復していたとはいえ、心身の疲労はシキガミの少女の上に重くのし掛かっていた。
冬花の妖狐としての姿を皇都市民に見せつけるという伊丹正信の意向もあって、彼女は尻尾が付け根まで露わになるように腰巻きを低い位置で結わえられた姿で、伊丹家皇都屋敷から引き出された。
上半身は肌を晒されたまま後ろ手に縛られ、その縄は喉や腋、胸、臍、脇腹など巡らせるようにして体の前面で縄が菱形を作る形で整えられていた。市中を引き回す罪人用に考案された、拘束と見栄えを両立させた緊縛方法である。
そして手足には依然として梵字の刻まれた鉄枷がはめられたまま、しなやかな両足は馬の胴に縛り付けられていた。最早、馬の背から逃れることは不可能であった。
「うぅっ……」
蔵の時と同じく呪術師としての力をすべて封じられている冬花は、与えられる屈辱にただ顔を俯け、目をぎゅっと閉じて耐えるしかない。
下腹部に申し分程度に布が巻かれただけの姿で、冬花は己の裸身が衆目に晒される羞恥だけでなく、狐の耳と尻尾を見世物にされるという恐怖に耐えなければならなかった。。
幼い頃、城の者たちから向けられていた嘲笑と罵声、城下の者たちから向けられていた好奇と嫌悪の視線、それらの記憶が脳裏に蘇って彼女を責め苛む。
市中引き回しとは本来、これから処刑を行う罪人を晒すことを目的とした刑罰である。しかし今回は、その“晒す”という部分だけを目的にしていた。
恐らく伊丹家の者たちが皇都市民たちに触れを出していたのだろう、妖狐の血を引く混じりものの姿を見てみようという好奇心と野次馬根性に駆られた人間たちが、通りに出てきていた。
それだけではない。交差点など皇都の要所を守る蹶起部隊の目にも、冬花の姿は晒された。そして、実質的に蹶起部隊の人質となっている兵学寮、学士院、女子学士院の者たちの目にも入るように、彼女を乗せた馬は進んだ。
結城家次期当主の側近中の側近である少女の惨めな姿は、未だ去就を決めかねている中小諸侯たちに衝撃を与えることとなった。伊丹正信や一色公直が目論んだ通り、次は自分の子女たちが見せしめにされてしまうのではないかと恐怖したのだ。
年若い少女の哀れな姿は、勝者と敗者というものの落差を彼らにまざまざと見せつけたのである。
一方、皇都市民の中にはあさましい姿を晒したまま引き回される少女に同情を抱く者もいたが、多くの一般人たちはただ無責任に市中引き回しという“娯楽”を興味本位で見物していた。
それが狐耳と尻尾を生やした白髪の少女となれば、なおさらであった。
冬花は人々の無遠慮な視線が、自身の耳や尻尾に向かっているのを感じていた。そして聴力に優れた狐の耳は、人々の呟きまで拾ってしまう。
自分を嘲笑し、気味悪がる声にならまだ耐えられた。しかし、主君である景紀まで、このような容姿の姿の者を側に侍らせる趣味の悪い若君であると嘲弄する言葉には、耐えられなかった。
自分の所為で、景紀が悪く言われてしまう。それは、幼い頃から冬花の心を最も抉るものであった。
「うっ、うぅっ……」
顔を俯けず、涙など流さず、主君の名誉のために毅然と前を向かなければならないと理解しているのに、心は打ちひしがれたままであった。
「もう、やめて……」
小さな呟きが、冬花の口から漏れる。
「助けて、景紀……」
それが届かぬ言葉であると知りつつも、今の冬花に縋れるものはそれしかなかった。
惨めな姿を晒した少女の引き回しは、なおも続いて行く。
冬花のシキガミとしての矜持は、汚され続けていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『若様、そこにいる!?』
それは、女子学士院にいるはずの八重の声であった。
「ああ、八重か」
その切羽詰まった響きに、景紀が応じる。
「お前、どうして鉄之介の呪符から……」
『鉄之介の呪符なんだから、私の術式が同調出来て当然でしょう!』
景紀が疑問を言い終わるよりも先に、八重が遮るようにそう言った。
『そんなことよりも、冬花義姉様のことよ! 何で、義姉様があんな目に遭っているのよ!?』
それは、景紀を責めるような叫びであった。切迫する陰陽師の少女の声は、この六家次期当主に対する憤りと怒りの感情も含まれているようであった。
「何があった?」
だが、景紀には八重が感情のままに叫ぶ理由が判らない。冬花を殿にして実質的に見捨てたことを責められているのなら、今になって八重が憤りをぶつけてくることもないだろう。
『馬に乗せられて、罪人か珍獣の見世物みたいに引き回されているのよ! さっき、学院の校舎からもよく見えるように通っていったわ! 耳と尻尾の封印が完全に解けた状態でねっ!』
八重は呪符の向こう側で、そうまくし立てた。
「……」
『若様、あんた、冬花義姉様の主なんでしょ!? あんな惨めな格好をさせられている義姉様を、何で助けに行かないのよ!?』
景紀が何も言わないため、龍王の血を引く陰陽師の少女の口調はいっそう激しくなる。
「景くん……?」
貴通が、横目で窺うように景紀の顔を見た。このの同期生は、それでもなお、何も言おうとしない。だが、男装の少女は景紀の目に冴え冴えとした殺気が宿っていることに気付いていた。
「……八重」
やがて発せられたのは、どこまでも冷静な声音であった。
「絶対に、冬花を助けようなんて思うなよ」
『なっ!?』
景紀からは絶対に出てくるはずがないと思った言葉だったのか、驚愕の声を上げた八重が絶句する。
「見え透いた挑発だ。お前を学院の敷地から引き離そうとしているのか、こちらの隠密衆の忍をおびき寄せようとしているのか、あるいは俺の激発を狙っているのか、いずれにせよあいつを助けようと動くのは余計な隙を生むだけだ」
女子学士院の敷地を呪術的に守っている八重がいなくなれば、学院の生徒たちが完全に反乱軍側の人質となる。そうなれば、その影響は景紀の側から冬花が消えた以上の重大な影響を及ぼす。
学院に、娘を通わせている結城家家臣は多いのだ。
そして、景紀が忍を使って冬花の救出を目指そうにも、相手もそれを予期して忍を密かに配置しているだろう。今、新八などの忍を不用意に失えば、景紀は貴重な情報収集手段を喪失することになる。そして、伊丹・一色陣営もそれを狙っているはずだ。
そしてもちろん、伊丹・一色両公は、これで景紀が短慮を起こすことを期待しているはずだ。だから、冬花が引き回しに遭っていることは完全に無視するしかない。
『あ、あんたはっ!? それでも冬花義姉様の主君だって言うの!?』
呪符の向こうで八重が激昂しているが、景紀は意に介さない。
『このまま、義姉様が引き回された後で処刑されても構わないって言うの!?』
引き回しが行われているということは、そういう可能性もあるだろう。だが、景紀はその可能性は低いと思っている。
「あいつは、蠱毒の呪詛を受けても一夜で回復しちまうような奴だぞ? 昨日の今日で、殺せる条件が揃っているものか」
八重か、あるいは見え透いた挑発を仕掛けてきた伊丹・一色両公にか、景紀は嘲るような口調でそう応じた。
『でもっ―――!?』
しかし、なおも八重は納得出来ていないようだった。
「まあいい。そんなに大人しく出来ないようなら、一つ、意趣返しでもさせてやる」
景紀は鬱陶しがるような声で、八重に言った。
「女子学士院の第四学年に、桜園理都子って生徒がいるだろ?」
『……』
一瞬、あの陰陽師の少女が呪符の向こう側で怯んだような気配を感じたのは、気のせいか。景紀がその少女を八重に人質に取るように命じるとでも思ったのだろう。
「桜園理都子は、伊丹直信の婚約者だ。皇都が反乱軍によって占拠されている状況でも、市内を安全に移動出来るだろう。その娘に、直信への伝言を頼んでみるんだ」
だが、景紀は別に桜園理都子を人質に取ろうとは思っていない。やろうとしているのは、別のことだ。
「いいか? 今から言うことを、直信に伝えるように桜園理都子に頼め」
そうして景紀は、八重を通して兵学寮の後輩への言葉を託した。
「景くん……?」
八重への伝達が終わり、通信を切って静寂が戻った部屋の中に、貴通の声が響く。
景紀は、またしても同期生の呼びかけに何の反応も示さなかった。その視線は、先程まで八重の声を届けていた呪符に向いている。
貴通は、景紀の顔を下から覗き込もうとした。
「……甘っちょろいことをするもんだな」
ぽつりと、景紀は零した。そこにはどこか、嘲りの色があった。
「狐耳と尻尾の封印が解かれたあいつを、晒しものにする? あいつを捕えたのなら、妖狐の血を暴走させた状態にして市中に放り込めばよかったんだ。そうすれば化け物退治として、自分たちの正統性を主張出来ただろうに」
「……」
それは、シキガミの主としてはあまりにも突き放した言葉であった。兵学寮時代、冬花のことを侮辱してきた先輩や同期生相手に殴りかかったことがあるのを知っている貴通にとってみれば、景紀の発言は不自然なほどである。
「景くん、冬花さんは……」
「言うなっ!」
貴通が言いかけたところで、景紀が壁を拳で殴りつけた。その音に、不覚にも貴通は一瞬びくりと肩を跳ねさせてしまった。
「あいつが晒しものにされているのに助けようとしない俺を軽蔑してくれてもいい。でも、今は俺の軍師でいてくれ。蔑むのも罵倒するのも、後にしてくれ。頼む」
血を吐くように苦しげな景紀の懇願を、貴通はむしろ痛ましげに聞き入れた。この同期生がシキガミの少女を捨て石にしてしまったことへの自責の念に駆られていることは、十分に伝わっていた。
「僕は、あなたの軍師ですよ。今も、これからも」
貴通はそっと、壁に打ち付けた景紀の拳を手で包んだ。かすかに血の滲んでいる少年の手に、自らの手拭いを巻き付ける。
「ですから、あなたも僕の仕えるべき将でいて下さい」
「すまん」
激情や悔恨、その他様々な感情を押し殺した固い声で、景紀は言う。
「……直ちに、島田少将と宮崎大佐を呼んできてくれ。反乱軍側の防衛線突破について、急ぎ方策を確定させる」
「了解しました」
貴通は結城家次期当主の軍師としての態度で応じた。景紀は自らのシキガミに対する葛藤を抱えながらも、結城家領軍を率いる者としての感情を優先しようとしている。
ならば、それに応えるのが彼の軍師を自認する貴通の務めであった。




