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第92話 【それぞれの報告・2】


 それから俺達は、マーリンが用意した飯屋へと移動した。

 移動する際、マーリンはティアさんの指示通り変装をして、序に俺も少し顔を隠す感じで移動する事になった。


「へぇ、マーリンの事だから女がいる飯屋かと思ったけど、その逆の隠れ家的な場所なんだな」


「儂が女遊びだけの賢者じゃと思ったか? 儂だって、偶には落ち着いて飯を食べたいときもあるんじゃ、そういう時にこの店を使っているんじゃ」


 マーリンが用意した飯屋は、大通りから少し外れた民家が立ち並ぶ一角にあった。

 外見は民家っぽい形ではあるが、中に入ると落ち着いた雰囲気のある飯屋だった。


「マスター、いつもの部屋借りても良いかの?」


 マーリンは店の奥に居た男性に声を掛けると、その男性は軽く会釈をすると俺達を店の奥へと案内してくれた。

 店の奥には個室が何個かあり、俺達はその一番奥の部屋に通された。


「師匠、こんなお店知っていたのですね……」


「会員制の店じゃから変な奴もおらんし、名の知れた冒険者や貴族なんかも使っている店なんじゃよ」


 マーリンがそう言うと、先程案内してくれた男性がお冷とメニュー表を持って戻って来た。

 それから俺達はマーリンおススメの料理を頼み、その料理も凄く美味しく店のレベルの高さを実感した。

 そうして食後、本題であるそれぞれの報告会を始めた。


「まずは、俺からですけど、マーリンから教わった魔法を魔法剣として扱うという訓練は無事に終わりました」


「一度、師匠から見せて貰ったのですが、あの魔法を魔法剣に出来るのですね。流石、グレンさんです」


「儂も完成形を見れて、心残りが無くなってスッキリしたわ」


 俺の報告した事に対して、ティアさんは笑みを浮かべながらそう言い、マーリンは満足そうにそう言った。


「グレンさん、それでその魔法剣は実戦でも使えそうなのですか?」


「そうですね。検証した所、フレイナの魔法さえも消し去ったので悪魔の魔法にも通用するだろうという見解ですね。実際に悪魔と戦わないと、そこは分かりませんが強力な魔法であっても、俺の魔法剣があれば消滅させる事は出来ると思います」


「成程、あの魔法の効果は維持したままなのですね。それは凄い魔法剣を生み出しましたね……」


「まあ、実現したのは俺ですが、生み出したのはマーリンですけどね」


 そう言った後、俺の報告は魔法剣の成功だけなので、次はマーリンの報告となった。

 朝訓練を一緒にしてるマーリンだが、その後の事は俺はあまり知らないでいたが、マーリンはマーリンで色々と動いていたみたいだ。


「ティアに頼まれて王都の隅々まで調べてみたが、悪魔と思しき痕跡はなかったのう」


「そうですか、念の為にと思い師匠に頼みましたが、悪魔の痕跡はありませんでしたか……」


「ああ、じゃが不自然な魔力痕は見つけたのう」


「本当ですか!? それは何処で!?」


 ティアさんはマーリンのその言葉に、驚いた表情でそう聞き返した。


「場所は、帝国方面じゃったしティアの想像通り、帝国が悪魔と絡んでおるかもしれんのう」


「えっ、帝国って隣国の〝シデン帝国〟か?」


「うむ、ティアの予想では国自体で悪魔と絡んでいるのではないかとみてるみたいじゃ」


 そうマーリンが言ったので俺は、ティアさんの方を見るとティアさんは難しい表情をしていた。


「ティアさん、帝国が悪魔と国自体で絡んでると思ってるんですか?」


「……元々、帝国に良い噂が無い事は知っておりますよね? 近年、戦争を続けていた帝国がピタリと止めて落ち着いた状態になってるのですが、国内での貧困状態は変わって居らず、むしろ最近は益々病死だったり餓死をしてる方が増えているみたいなんです」


 確かにあの国は、周辺国に対して戦争を吹っ掛けて戦争を何年も続けていたけど、ここ数年は落ち着いていると俺も話では聞いていた。

 戦争を止めて、貧困者が増すって事は〝何か〟やってる事は確定か……


「成程、それでティアさんは帝国が悪魔と繋がってるとみてるのですね」


「はい。師匠、他に何か情報はありますか?」


 ティアさんがそう聞くと、マーリンは「これ以上はないのう」と言い、取り敢えず次はティアさんの報告を聞くことになった。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 大抵の場合において帝国って侵略国家だよな
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