第85話 【賢者マーリン・2】
帰宅後、グレンは昼食を用意して食べていると、呼び鈴が鳴り玄関に向かった。
「……何で、普通に家に来てんだよ」
玄関を開けて外に居たのは、先程まで一緒に居た賢者マーリンだった。
いくら貴族街で人の出入りが少ないとは言え、玄関に居られると面倒事になってしまうと思ったグレンはマーリンを家の中へ入れた。
「ほう。いい所に住んでおるな、グレン」
家の中に入ったマーリンは、家の中を見てそうグレンに言った。
「家の事は良いとして、何で俺の家に来てんだよ。ティアさんが態々ああやって隠してたのに、見つかるつもりか?」
「そんな事はしないぞ? グレンの家の周りに幻を作って、いつもの風景を写しておるから儂が来たことは誰も知らないぞ」
「……ほんと、魔法の扱い〝だけ〟は一流だな」
グレンは呆れた顔でマーリンにそう言うと、リビングへと連れて行き何で家に来たのか聞いた。
「来た理由は簡単じゃ。もっと、グレンと話したかったからじゃな。儂が居ない間に、お主は本当に変わったみたいじゃから興味が湧いたんじゃ」
「300歳越えの爺に興味持たれてもな……」
そう言ったグレンは、マーリンに「何が聞きたい?」と尋ねた。
「まずはそうじゃな……グレンの契約してる妖精についてじゃな、さっきの場でも軽く話したが妖精の長以外にも妖精と契約しておるのか?」
「してるよ。正確な数は分からないが、500は超えてるな」
「ほほう。じゃから、グレンの魔力が急激に上がっておるんじゃな。その魔力の上がり方は、たった数年の努力では得られない量じゃからな」
「まあな、それ以外にも全属性の妖精と契約したおかげで全属性の魔法も使えるようになったな」
そうグレンが言うと、マーリンは「何、全属性を使えるじゃと?」と驚いた顔をした。
「ああ、妖精と契約した事で持ってなかった属性魔法も使えるようになってな、全属性持ちになったんだよ」
「……グレン。お主、儂に弟子入りせんか?」
突然そう言われたグレンは「は?」と言い、直ぐに「嫌だけど?」と返した。
そのグレンの言葉にマーリンは、驚いた顔をして「何故じゃ!」と言い返した。
「いや、マーリンの弟子って嫌だろ普通に……」
「何じゃと! 儂はこれでも魔法使いとして世界一の実力を持っておるんじゃぞ!」
「あ~、うんそれ間に合ってるわ。だって、俺の師匠フレイナだし」
「なっ……く、くそう。流石の儂でも妖精の長と比べられては……」
そんなグレンとマーリンのやり取りを見ていたフレイナは、実体化して二人の前に姿を現した。
「グレン。折角なら、弟子入りしたらどうかしら?」
「えっ、何でだ?」
フレイナのその言葉に、グレンはそう聞き返した。
「私も魔法の力で言えば人間に負けるとは言わないけど、この人の力は相当なものよ。学べるものはあると思うわ」
「ッ!」
フレイナからそう言われたマーリンは、驚いた顔をしてフレイナを見た。
「まあ、フレイナがそこまで言うなら良いけどよ……」
「本当かグレン!?」
「ちょっ、抱き着いてくるなよ! フレイナの言葉は俺の為の言葉だって信頼してるから弟子になるだけで、マーリンに教わりたいからなるんじゃないからな!」
抱き着いて来たマーリンを剥がしながら、グレンはそう言った。
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