第71話 【新たな・1】
正式に〝シルバーナイツ〟に入団したグレンは、手続きだけを済ませて家に戻る事にした。
戻る道中、キャロルと合流したグレンは、そのままキャロルを連れて家に戻った。
「それで昨日の話を詳しく聞かせてくれ」
そうグレンが言うと、キャロルは自分の仕入れた情報をグレンに話し始めた。
「……アレインは本当に居なくなったんだな」
「グレン君に話した後、もう一度見に行ったけどその男は居なかったにゃ。信じられないなら、自分の目で確かめるかにゃ?」
キャロルにそう言われたグレンは「そうだな」と言い、キャロルを連れて転移眼で犯罪者達の収容所へと転移した。
突然現れたグレン達に兵士は驚いたが、直ぐにグレン達だと認識して牢屋の中へと通してくれた。
厳重に作られている牢屋の中には、グレン達が捕まえた犯罪者の他にも悪人が入れられていた。
「ここに入れられてたけど、他の犯罪者の尋問をしてる時に姿を消したみたいにゃ」
キャロルにそう言われたグレンは、フレイナに小声で「あいつの魔力って残ってるか?」と尋ねた。
(微かにだけど、アレインって男の魔力が残っているわね。それとは別に、レベルの高い空間魔法の魔力も残ってるから、多分それで逃げたんじゃないかしら)
(空間魔法、転移か……いや、でも確か犯罪者には魔法を完全に封じる為の枷が付けられる筈だろ? それに牢屋の中には転移が出来ない様に結界も張られているし、転移での脱獄は不可能だろ)
(ええ、そうだけど実際に残っているわよ。でもこの魔力の感じ、人間じゃないわね……)
フレイナのその言葉にグレンはピクッと体が反応し、キャロルはグレンに「どうしたにゃ?」と声を掛けた。
「……いや、何でもない。すまないが他の犯罪者達の所も見ても良いか?」
そうグレンが兵士に尋ねると、兵士はグレンの頼みに答えて事件で捕縛した犯罪者達の牢へと案内した。
それからグレン達は他の犯罪者達を見回り、おかしな奴がいないか一人一人鑑定して見回った。
「グレン様、この先にグレン様の元仲間達が収容されています」
案内をしてくれていた兵士からそう言われたグレンは、少しだけ身を引き締めて牢屋に近づいた。
牢屋の中には仲良く3人共いて、暗い雰囲気で顔を下に向けていた。
「捕まった時は暴れていた様子だったのですが、今は大人しくしていますね」
兵士のその言葉を聞いたグレンは、3人に対して鑑定眼を使った。
体調は悪く表示されているが、特に変な所は無かった。
先程のフレイナの言葉が正しければ、こいつらもと思ったグレンだったがフレイナにも一応鑑定してもらい、エミリー達に変な魔力の痕跡が無い事を確認した。
「ぐ、グレン?」
離れようとした時、牢屋からグレンの姿を視認したエミリーはポツリとそう呟いた。
するとエレナとユリもエミリーの声に反応して顔を上げ、グレンの方へと視線を向けた。
グレンを見つけたエレナ達は、牢屋の中からグレンを呼び叫んだ
そんな3人を無視して、グレンは他の犯罪者達の所へ連れて行ってくれと兵士に言った。
「……グレン君、良いの?」
「別に取り調べはここの兵士達の役目だし、今回は犯罪者達の確認をしに来ただけだからな」
その言葉通り、グレンは叫び続けるエミリー達を無視して兵士に案内を続けて貰った。
道中、あまりにも叫び続けるエミリー達は別の兵士の手により、罰が与えられ苦しむ声が聞こえて来たがグレンは特に気にする事無く先を進んだ。
「昔から知ってる子達があんなになった姿を見ると、知り合い程度でもにゃんだが心が痛むにゃ……」
「……それがあいつ等が選んだ道だ」
キャロルの悲しそうな言葉に、グレンはそうバッサリと言い、犯罪者達の確認の続きへと戻った。
その後、確認が終わったグレン達は案内をしてくれた兵士にお礼を言い、一度話し合う為にグレンの家へと戻って来た。
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