第69話 【ホームパーティー・2】
それから数日後、グレンは朝からフローラの所から来ていた業者との最終打ち合わせを行っていた。
ホームパーティーと言っていいのか分からない規模のパーティーを開く事になったグレン。
取り敢えず、料理や飾りつけ等は全部その道に専門家に任せようとフローラに紹介してもらった。
「ところでグレン。今日のパーティーだが、誰が来る予定なんだ?」
業者との打ち合わせを終えたグレンに、用事があってグレンの家に来たガリウスはそうグレンに尋ねた。
「ガリウスのクランに奴等、ルドガーとフローラだな。本当は、俺が世話になった貴族の人も呼ぼうと思ったが、クランの奴等が緊張するかも知れないと思ってな、そこはやめておいたよ」
「そうか、それは悪い事をしたな。でも、それで良かったと俺も思う。流石に高いランクの冒険者ともなれば、貴族と接する機会もあるからある程度のマナーを知ってる奴が居るが下のランクになると、そこら辺の勉強をしてない奴ばかりだからな」
「俺も当時はそうだったからな、それにこの間リック達と話していてそこら辺の事も聞いてたから尚更な」
そう言うとグレンは、ガリウスが尋ねて来た理由である参加の有無が書かれた資料に目を通した。
グレンは参加するかどうかは個人で決めるようにと、一人一人にパーティーの参加の有無を決める紙を配っていた。
「へえ、全員参加するんだな。意外だったな、何人かは来ないと思ってたけど」
「何だかんだ皆、グレンの事気になってるからな。噂だけ聞いてた奴もクランの仲間になって、近くで見るようになってグレンの印象が変わったって皆言ってたしな」
「そうか、まあパーティーでまだ会った事のない奴と会話して、良い感じなら正式にクランに入らせてもらうよ」
「ああ、そうなる様に期待してる」
ガリウスはそう言うと、グレンの家から出て行きグレンは業者と一緒にパーティーの準備を進めて行った。
それから少し経ち、準備も一段落ついたころ、新たな人物が家に尋ねて来た。
「グレン君、昨日振りにゃ」
呼び鈴を鳴らし、堂々と玄関の前で待っていたキャロルに対し、グレンは開けた扉を勢いよく閉めた。
すると、外から「酷いにゃ!」とキャロルは叫んだ。
「何が酷いだ。今日は、お前に構ってる暇はない。帰れ」
「あたしの所に招待状が来てないから、受け取りに来たんだにゃ!」
「そもそもお前を呼ぶつもり何て最初からねえよ。来なかった時点で分かるだろ!」
扉を挟み、グレンとキャロルはそう言い合いをした。
徐々にヒートアップする言い合いに、ご近所に迷惑になるかもと思ったグレンは渋々扉を開けてキャロルを家の中へと入れた。
「お前、昔に比べて俺に対しての態度がより酷くなってないか……」
「そんな事はないにゃ。そもそも、昔はあまり会話した事すらなかったにゃ」
「……そういやそうだったな」
そうして家の中にキャロルを入れたグレンは、何をしに来たのかキャロルに聞いた。
「それはさっきも言った通り、パーティーに参加する為にゃ」
「……マジで止めてくれないか?」
「そんなガチトーンで断られると、流石にきついにゃ……まあ、本題はそっちじゃないにゃ」
そうキャロルが言うと、キャロルは誰にも会話が聞かれない所で話がしたいと言い、グレンはキャロルを連れて書斎へと移動した。
書斎に移動したグレンは、防音用の魔道具を使い会話が聞かれない様にした。
「それで、話ってなんだよ」
「今から話す事はあたしの相棒だったグレン君だから、教える事にゃけど」
キャロルはそう前置きをして、次の言葉を言った。
「事件で捕まえてた犯罪者の一部が消えてるにゃ」
「……それはおかしいだろ、念の為に王都の牢を守る兵士達全員俺達が調べたんだぞ? それで仲間が居ないって確認しただろ?」
「そうにゃ、事件を解決する時まではそうだったにゃ。でも実際に犯罪者の姿が牢から消えてるにゃ」
「……その中に、あいつ等は居るのか?」
話を聞いたグレンは、キャロルに悪い予感がしてそう尋ねた。
「グレン君の元仲間の女は全員、今も牢屋に居るにゃ。けど、男は消えたにゃ」
キャロルのその言葉を聞いたグレンは、顔を顰めた。
グレンは一旦気分を落ち着かせる為、深呼吸をした。
「取り敢えず、今日のパーティーが終わったら、まあ詳しく話を聞かせてくれ」
「分かったにゃ。それで、パーティーに参加はしてもいいかにゃ?」
「……すきにしろ、ただし迷惑はかけるなよ」
重要な情報をくれたキャロルを無下にする事も出来ないグレンは、そうキャロルに言った。
そんなグレンの言葉にキャロルは、笑顔で「分かってるにゃ」と言って窓から外へと出て行った。
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