第54話 【一掃作戦・2】
女性が連れていかれた場所は、ギルドからほど近い場所にある屯所で、グレンはそこへと向かった。
入口に居た兵士に冒険者カードを見せて、中に入り奥へ行くと牢屋の中で横たわっている女性とその近くにルドガー達が居るのが見えた。
「どうだ。ルドガー、何か分かったか?」
「……すまん、情報を聞き出す前に隠し持ってた毒を使ったみたいだ」
悔しい顔をしているルドガー達、そんなルドガー達を見てグレンはフレイナに治療できるか聞いていた。
(見た所、まだ毒が完全に回ってないみたいだから、今なら間に合うわよ)
(そうか、なら治療してくれ。後、出来たらこいつが隠し持ってる毒も全部排除してくれないか?)
(ええ、分かったわ)
無理とは言わず、フレイナはそう返事をした。
そしてグレンはルドガー達に「今から、見る事は他言するなよ」と言って女性に近づき、自分が魔法を掛けたようにする為に回復魔法を女性に掛けた。
それと同時にフレイナが女性に魔法を使い、毒を完全に解毒をして持っていた毒も全て消し去った。
「えっ、何で私生きて……」
倒れていた女性は眼を開けると、自分が生きている事に驚いた声を上げた。
「そんな簡単に死なせるかよ。折角、捕まえた犯罪者の尻尾だぞ?」
「クソッ! 彼奴の頼みなんて聞くんじゃなかったッ!」
「そうカッカッするなよ。まあ、今から大人しくなるんだけどな」
グレンはそう言うと、女性の頭に手を置きデルムに行ったように〝聞いた事を全て話す〟ように改造をした。
前回使った際は、リシアナという王族が居たから先に注意をしたが、今回居るのはルドガー達であり別にいいかと注意せずにグレンは魔法を使った。
その結果、ルドガー達はグレンの魔法を直視してしまい、キャロル以上に気分を害した者達が出てしまった。
「「……」」
「あっ、言うの忘れてたな。すまん」
ルドガー達から非難めいた視線を向けられたグレンは、自分がやった事に後から気付いてそう軽く謝罪をした。
そうして職員達が気分悪そうに牢屋から離れて行き、グレンは残ったルドガーと二人で情報の聞きだしを始めた。
「まあ、分かってはいたけど下っ端だったか……」
「ああ、アレインが連れて来れる時点で切っても大丈夫な下の奴だったか……しかし、まあこれでも少しは情報が集まった方だろうな。グレンが来る前は、こいつらの名前くらいしか分からなかったしな」
「まあでも、下っ端の使うアジトは知ってたし、少しは進展したな」
そうルドガーと話していたグレンの所に、アレインに付けた妖精から報告が送られて来た。
アレインはあの後、この女性が話してた内容とは別の〝シャドースネーク〟のアジトに向かっていた。
「ルドガー、アレインがこの女が喋った場所とは別のアジトに入ったみたいだ。アレインの奴、俺達が思っていた以上に犯罪者と深く関わっているみたいだぞ」
「そうなのか!?」
ルドガーは、グレンの報告に驚いた声を上げた。
「どうするグレン? このまま、そのアジトに乗り込むか?」
「いや、今は乗り込まない。もしかすると、俺が関わってるもう一つの案件に〝シャドースネーク〟が関係していた場合、そっちの敵が逃げる可能性が出て来る。だから、今は情報だけで我慢しておこう」
「分かった。それじゃ、この女はどうする?」
「一応、このままこの牢に閉じ込めておくのが良いだろうな。もし、犯罪者達がこいつを回収に来たら来たで、そいつからもさっきみたいに情報を聞き出せるからな」
そう言うグレンに対してルドガーは、さっきの事を思いだしたのか嫌な顔をした。
「……ってか、グレンのその容赦の無さは変わってないんだな。元に戻ったって聞いてたから、さっきのを見て驚いたぞ」
「んっ? ああ、これは昔からだな。イジメられてたせいか、その反動で犯罪者とか〝悪人〟に対しての嫌悪感が強いんだよな」
「いじめられた反動で〝犯罪者〟が嫌いになるって、どうなったらそうなるんだよ……まあ、いいか。取り敢えず、俺はこの後マスターの方に報告に行くが、グレンはどうする?」
「俺もちょっと報告したい人が居るからそっちに行く、ギルドで待たせてるガリウスには先に帰ったと報告しておいてくれ」
それからルドガーは、外で待っていた職員達を連れてギルドへと戻って行き、グレンもまた人が居ない所まで移動した後、転移眼でリシアナの所へと向かった。
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