第44話 【作戦会議・1】
「んじゃ、まあリシアナ様。こいつから情報でも聞きましょうか」
リシアナの表情に怯え切っている男をチラ見して、俺はそうリシアナ様に言った。
「ええ、そうね。でも、尋問なんて私した事無いわ」
「あたしも無いにゃ、グレン君はあるかにゃ?」
尋問か……まあ、あるにはあるけど、あのやり方はリシアナ様には刺激が強いよな……
「やった事はありますけど、リシアナ様の前でするにはちょっとやれないような内容ですかね。ちょっと、気持ち悪いので」
「そ、そうなの? でも場所を変えるにも、大変だしここでやってもらっても大丈夫よ。血とか出たりするの?」
「いえ、血は出ませんよ。ただ、まあこいつが耐えられなかったら漏らす可能性はありますけど」
そう言うとリシアナ様は少し嫌な顔をしたが、仕方ないという表情をして予備のシーツを床に敷いてその上でやって欲しいと言った。
まあ、転移を使って森とかでやればいいんだけど、今はまだ能力について話したくないし、出来るだけこの場で済ませたい。
「それじゃ、やりますね。キャロル、一応リシアナ様の耳塞いでてくれよ」
「ええ、あたしも聞きたくないにゃ……」
そう言いながらもキャロルは、リシアナ様の耳に手をやって思いっきり目を瞑った。
リシアナ様も両手で顔を隠して、目を瞑って見ない様にしているのを確認した。
「さて、それじゃ尋問を開始するか」
「ひっ!」
手に雷の魔力を纏わせながらそう言うと、男は悲鳴を上げて逃げ出そうとした。
だけど逃げない様に魔法で床に縛り付けているので逃走は出来ず、俺の魔法をただ受ける事しか出来なかった。
俺がやった事、それは俺が自分に対してやっていた事の応用で脳の一部を少し改変して〝俺が聞いた事を何でも話す〟という思考に変えた。
「終わったぞ、キャロル。もうリシアナ様の耳から手離していいぞ」
「うぅ、あんな人が出せるか分からない悲鳴聞かされたのに扱い酷いにゃ……」
リシアナ様はキャロルの様子に「だ、大丈夫?」と心配しているが、目の前に居る男の姿に更に驚いた声を上げた。
俺が魔法を掛けた男は、先程までの怯えた目から廃人の様な目になっている。
「えっ? い、生きてるの?」
「生きてはいますよ。ただちょっと今は、思考が定まってないのでちょっとヤバい状態に見えているだけです。質問したら、何でも返すので聞きたい事を聞いて行きましょうか」
そう俺が言うと、リシアナ様とキャロルは若干引いた様子で俺の事を見て来た。
◇
リシアナ達から引かれたグレンだったが、グレンの魔法の効果は絶大で男の知っている情報は全てリシアナ達は手に入れる事が出来た。
まず今回の事件に関してだが、王族暗殺計画なるものが有り、いくつかの貴族が関与している事が分かった。
しかしながら、このデルムという男は下っ端というより、王妃の監視役だった為かそれ以上の情報は手に入れる事が出来なかった。
「見た目通り下っ端でしたし、手に入れられる情報はここまでみたいですね」
「ええ、でも十分な情報を手に入れられたわ。グレン君、本当にありがとう」
リシアナはそうグレンに感謝をした後、今後についての話し合いを始めた。
「リシアナ様も危なそうにゃから、なるべく早めに事件を解決した方がいいにゃ」
「そうだな、国王を最初に狙って王妃と別れさせたいってのが相手側の目的だろうから、今現時点で一番危ないのはリシアナ様だろうな……」
「そうよね。この部屋は使用人も殆どこない場所だから、私に何かあったとしても気付かれるのが遅くなるだろうし、次の狙いは私でしょうね」
そうリシアナが言うと、グレンとキャロルはどうリシアナを守るのか考えた。
(ねぇ、グレン。ここに居る人達は、グレンの事を信用してくれてるみたいだし、私達の事を教えてあげたらどうなの?)
(う~ん……俺は別に良いけど、フレイナ達は良いのか?)
(私の眼から見ても、この王妃とそこの情報屋の猫人族の子はグレンの事をちゃんと見てくれてるみたいだし、悪い人には見えないわ。だから、私達も参加させて欲しいわ)
(……それ、自分達が仲間外れにされてるのが嫌だからの提案じゃないよな?)
そのグレンの言葉に、フレイナは「ち、違うわよ?」と慌てた様子で否定をした。
しかし後ろに居る妖精達が「バレちゃった」と言ってしまい、完全に仲間外れが嫌だったからだと、グレンは気づいてしまった。
(まあ、そうだな。折角、フレイナ達も居るのに仲間外れは駄目だよな。取り敢えず、二人が驚かない様に俺から説明をするよ)
そうグレンは言うと、フレイナ達との念話を一旦やめて、考え込んでいるリシアナ達に話しかけた。
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