第287話 【休養・3】
その後、グレン達はわだかまりが無くなり、一緒に散歩に行く事にした。
「散歩に行くとは言ったものの、妖精界は基本森で物珍しい場所は少ないからな……正直、もう殆どニアには紹介したよな」
「そうね。元々、私達がゆっくりと過ごす世界だから、見て楽しめる場所とかは少ないわね。本当に、あの湖と温泉くらいかしらね?」
フレイナは他に行く場所が無いか考えていると、数匹の妖精達がグレンの周りに集まった。
「グレン。こっちこっち!」
「グレン達が喜ぶ所作ったよ!」
妖精達がそう言い、グレン達はその妖精達が作ったという場所に案内された。
妖精達が連れて来た場所は、それは幻想的なまでに美しい花園だった。
「こんな場所、私も知らないわね。あなた達が作ったの?」
「うん! グレン達と長を驚かせるために作った!」
「えへへ~、凄いでしょ~」
「私達頑張ったんだよ~」
妖精達はフレイナの言葉に、嬉しそうに飛び回りながらそう言った。
グレンはそんな妖精たちの言葉は、この美しい景色で耳に入って来ていなかった。
それはニアも同じで、目の前に広がる花園を見て「綺麗……」と口にしてから固まっていた。
「こんな場所がこの世界にあったなんてな、知らなかったよ」
「私も今知ったわよ。あの子達、私にも隠していたみたいね」
あの後、花園のベンチへと移動したグレンは溜息交じりに言ったグレンの言葉に対して、フレイナはそう言った。
「フレイナも知らなかったというのは驚いたな、この世界の事は何でも知ってるとばかり思ってた」
「私も自分の知らない事は、無いと思ってたわよ。でも、あの子達は上手く私に隠していたみたいね」
フレイナがそう言うと、妖精達は「えへへ~、長にも隠せてた~」と喜んでいた。
その後、グレン達はその花園で一日過ごす事にした。
「……ニア。恥ずかしいなら、別に無理して入ってこなくても良いんだぞ?」
「大丈夫。昨日よりかは、まだ恥ずかしくないから……」
その日の夜、ニアは再びグレンが入ってる時に温泉に入りに来た。
グレンは朝、自分の気持ちに向き合ったことで多少は恥ずかしさが無くなっていたが、それでも多少は恥ずかしくニアの方を見れないでいた。
そんな初々しい二人をフレイナは、妖精達と楽しそうに見ていた。
「グレン。今日は一緒に寝よ」
そして風呂から上がり、後は寝るだけだとベッドに横になっていたグレンの元に寝巻に着替えたニアが現れた。
グレンはニアが部屋に来た事に少し驚いたが、直ぐに「わかったよ」と言って、少しだけズレて一緒に横になった。
「俺もそうだけど、ニアも一気に変わったな……」
「グレンがどんな事したら喜ぶのか、今のうちに観察しないといけないからね。お嫁さんになったら、もっとドキドキさせてあげるね?」
「フレイナ。また変な事を教えたな……」
ニアの言葉に対して、グレンは溜息を吐きながらそう言って二人は目を閉じてぐっすりと眠った。
翌日、グレンは目が覚めると既にニアは居なくなっていて、朝食を作りに行ったんだと直ぐに気が付いた。
「寝不足だな……」
昨夜、ニアと一緒に寝る事になったグレンは、一緒に寝る行為に緊張したのか若干寝不足となっていた。
グレンはそのまま二度寝しそうになったが、無理をして起き上がり、朝食を食べに部屋を出た。
朝食後、今日は元の世界に帰る為、帰宅の準備をしてグレン達は妖精界を出た。
「フレイナ。結界はちゃんと掛けたか?」
「勿論よ。更に厳重にして、掛けたから絶対に侵入出来ないようにしてるわよ」
グレンは結界をちゃんと掛けてるかフレイナに聞き、転移眼を使いグレン達は自分達の家へと帰宅した。
帰宅後、グレンは直ぐに仕事モードへと切り替えて、自分が居なかった数日間の報告書に目を通す事にした。
重要な物以外は基本的にフローラが捌いていたおかげで、グレンの仕事は殆どが確認作業だった。
「あら、もう休暇は終わりなの?」
そして確認作業を終えたグレンは、フローラの所へ行き休暇から戻って来た事を報告した。
「ああ、十分休めたよ」
「……その様ね。顔つきが前よりもよくなってるわね」
フローラはグレンの顔を見て、顔つきが前よりもよくなってる事に気が付いてそう言った。
そんなフローラにグレンは、妖精界から持ってきたお土産を渡して、自分が居ない間に何か問題が起きていない聞いた。
「多少のいざこざ程度ならあったけど、大きな事件等は無かったわよ」
「そうか、それは良かったよ。……それで、式場だが出来たのか? 俺を休ませたのは、それが目的だろ?」
グレンの言葉に対してフローラは笑みを浮かべ、「完成したわよ」と言った。
「完成したのか、今から見に行っても良いか?」
「ええ、良いわよ。丁度、私の仕事もひと段落ついたから、式場の中を案内してあげるわ」
そうフローラが言うと、グレンはフローラを連れて式場のある場所へと転移で向かった。
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