第264話 【ヴァルティアの発展・2】
グレンの街には、既に多くの店が立ち並んでいる。
出来たばかりの街という事もあり、フローラの商会には無料で与えた建物だが、商人達にも他の街で建物を買うよりかなり低い値段で取引をした。
取引した相手は勿論、フローラやキャロルによって事前に調べられ、ちゃんとした商人かどうかを調べたうえでグレンは建物を渡した。
最初の頃、偽って商店を持とうとしていた者もいたが、その者達は全て弾き出され街への出入りすら禁止された。
その処罰を目の当たりにした後からやってきた悪事を働こうと考えていた者達は、リスクを考えた結果、グレンの街での犯罪は無理だと判断した。
「あれ、グレン様じゃないですか? 今日はどうしたんですか?」
「いつも飯を作ってくれてる料理人が出掛けていなくてな、昼飯を食いに来たんだが大丈夫か?」
「はい! いつでもグレン様の対応が出来る様に、グレン様専用の席を作っておきましたので直ぐに入れます!」
気になっていた店に入ると、店主からそう歓迎されてグレンは店の奥へと入って行った。
この店の店主アンドルは、フローラの商会でグレンは知り合った。
店主の年齢はグレンとほぼ変わらない20歳で、フローラとは料理人見習い時代からの知り合い。
修行先の師匠からもう自分の店を持てると言われたアンドルは、自分の店を探していた所にグレンが新しい街を作ったという話を聞いてこの街へとやって来た。
そして古くからの知り合いだったフローラはアンドルをグレンに紹介して、グレンはフローラの知り合いならと好立地の場所に店を持たせる事にした。
「店の状況から見て、かなり盛況のようだな」
「はい、これも全てフローラさんとグレン様のおかげです。本当にありがとうございます」
「いや、俺はただ建物を用意しただけだから、そこまで感謝する事は無い。この客の数は、お前がこれまで修行して来た力の成果だろう」
そうグレンは言って、アンドルに店のおススメを注文した。
アンドルの店は様々な食材があるが、その中でアンドルが一番の自信があるのはボアステーキの定食セットだった。
肉が好物なグレンはステーキと聞いて、今まで沢山の肉を食べて来たからそれと比べてやろうと心の中で考えていた。
「……美味いな」
一口、ステーキを切り分けて口に入れると、グレンは味付けも絶妙で今まで食べて来た肉料理でトップクラスに美味しいと感じた。
それこそ毎日食べてるニアの料理が少し劣ると感じる位には、グレンはそのステーキ肉が美味しいと感じた。
「口に合いましたか?」
「ああ、俺が食べて来た肉料理の中でもトップクラスに美味い。これは毎日通いたくなるレベルで美味しいな」
「本当ですかッ!? ありがとうございます!」
アンドルはグレンから褒められると、子供の様に嬉しそうにそうお礼を言った。
その後、食事の邪魔にならないようにとアンドルは下がり、グレンは一人残った個室でステーキを堪能した。
結局あの後、更におわかりをして3枚のステーキを食べ終えたグレンは、今度両親を連れて来るとアンドルと約束をして店を出た。
「予想以上の美味しさだったな……これはニアが居ない時以外も偶に来る店として覚えておこう」
「グレンって、本当にお肉が好きね」
美味しかったというグレンに対して、フレイナはそう言うとグレンは「肉が一番、食材の中で美味しい」と言い返した。
「料理が下手でも肉は焼いて塩やタレを付けるだけで美味しくなるから、昔から一人で冒険に出た時とかそれで食ってたんだよ」
「ええ、見てたから知ってるわよ。でもそんな偏った食事をしてたのに、グレンって嫌いな食べ物は無いわよね」
「まあな、食べれるだけ幸せって風に育ったからな、今も別に野菜とかが嫌いで肉ばっかり食ってるわけでは無いからな、用意されたら食べてるしな」
グレンの中で肉が好きな食べ物で、それ以外は普通という基準になっている。
それからグレンは家に帰宅すると、これまで忙しくゆっくりする事が出来なかった分、今日はゆっくりしようと考え、温泉に入りに行こうと考えた。
「確かフレッドの話だと、俺の領地に何個か温泉があるって話だったからな、今日はその内の一つに入り行こう」
「温泉……良いわね。最近、全く入りに行けてなかったわね」
グレンの言葉にフレイナも乗り気で、グレンは温泉に入りに行ったと置手紙を残し、フレイナ達と共にフレッドから教えて貰った温泉に向かった。
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