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第234話 【集合体の悪魔・1】


「ゲホッゲホッ! ひ、酷い目にあったよ~。グレン、酷いよ僕だけ守ってくれないなんて! 折角、あいつを倒せたと思ったら後ろから爆風に押されて、瓦礫の下敷きになったんだよ!」


 上位悪魔六体、下位の悪魔数百体分の悪魔を見上げるグレン達の元に、瓦礫の下から出て来たウォルドレットはそう不満を口にした。


「……ウォルドレット、今はお前と言い合いをしてる場合じゃない。上の奴を見てみろ」


「ん~、確かに強そうだね。見た感じ、さっきの悪魔達が集まった感じに見えるけど、そんな感じかな?」


「お前は本当に勘が良いな……まあ、そんな所だな六体の上位悪魔と数百体分の下位悪魔が集まった悪魔だそうだ」


「成程ね。それで、さっき戦った悪魔達がアッサリ倒れた訳が分かったよ。下位の悪魔すら、あんなアッサリ倒されていたから変だなって思ってたんだよね~」


 グレン達と同じく、ウォルドレットも悪魔達の異変に少し気付いてたと言った。


「ねえ、ベル。あれって悪魔の集まりなんだよね? そんな技、悪魔持ってるってベル言ってた?」


「……正直、これは使わないと思って話してなかったんだ。アレは、俺達悪魔族の〝自殺〟みたいなものだからな」


「自殺? どういう事だ?」


 悪魔族は基本的に死なない。

 それは悪魔界でも現実世界でも同じで、悪魔界であれば強者に力を奪われる事はあれど、死にはしない。

 現世では乗っ取っている人間の体から離れるだけで、本体は悪魔界に戻る。

 そういう仕組みだと、ベルは改めてグレン達に言った。


「そんな悪魔族にとって、たった一つだけ全てを失う技。それが〝合体〟であり、その合体した悪魔の事をオレ達は〝集合体の悪魔〟と呼んでいる」


「集合体の悪魔……」


 ベルの言葉にグレンはそう呟くと、ベルはあの悪魔について話し始めた。

 集合体の悪魔とは、その名の通り悪魔が集まり合体した悪魔。

 一定の力が集まると合体する事が出来、集まる個体に制限は特にない。

 しかし、一度これに集まった悪魔は二度と本来の意識は戻る事は無く、新たな悪魔の一匹として存在する事になる。


「だからオレ様達の中でも禁じられた技で、この数百年間誰も使った事が無い技なんだ……それをあいつらは、最後の切り札として使ったみたいだ」


「……相当なヤバイ技で、あの悪魔がヤバい奴って事は理解出来た。ただそれでも、あの悪魔をどうにか対処しないと俺達は負けることになるな」


 グレンはそう言うと、未だ空中に浮かび特に微動だにしない〝集合体の悪魔〟を睨んだ。


「ベル、ウォルドレット。あの悪魔は俺が何とかするから、お前らはこいつらを守ってくれ」


「了解。流石にあの悪魔を見て、僕も戦ってみたいって我儘は言えないからね」


「オレ様も元々敵う筈も無いからな、グレン頼んだ」


 グレンの指示に対し、ウォルドレットは素直にいう事を聞き、ベルもまたその指示通り動くと言った。

 二人の反応を見て、グレンはフレイナへと視線をやり、魔法で浮かび悪の元へと向かった。


「――」


 グレンが接近すると、悪魔はジッとグレンを見つめ再び笑みを浮かべた。


「俺の事は敵だと認識してるみたいだな」


 そうグレンが言うと、グレン目掛けて悪魔は突如出現させた巨大な黒い剣を振り下ろした。

 その剣をグレンはギリギリの所で転移で避け、悪魔を睨みつけた。

 そしてグレンは目の前の悪魔が、これまで戦って来た悪魔達とある事が違う事に気が付いた。


「成程な、集まった悪魔のせいで真面に喋る事も出来ないのか、ただ戦闘に特化した奴になったと……まあ、別にお前が話せるからと言って対応が変わる事は無いがな」


 これまで戦って来た悪魔達の事を思い浮かべ、グレンはそう言うと本気の身体強化魔法を使い悪魔へと攻撃を仕掛けた。

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