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第182話 【賢者の教え・2】


「それでマーリン。何か見て、アドバイス出来そうな所はあったか?」


 自分の魔法を見て悔しがってるマーリンに、グレンは本来の目的の事を尋ねた。

 マーリンもその為に呼ばれた事を理解してる為、悔しがる自分の気持ちを一度取り払い魔法を見て思った事を口にした。


「そうじゃな、一つは無駄に魔力を使っておるという点じゃな」


「無駄に?」


「うむ、魔法に作り変える前の魔力も一緒に放出しておるんじゃ、成功率が低いのもそこが原因じゃと思う」


 そうマーリンが言うと、グレンは「そうなのか?」とよく分かってない様子でそう聞き返した。


「口で説明するのは難しいし、魔法で説明するぞ」


 マーリンはそう言うと、両手で同時に同じ魔法を発動させた。

 しかし、一つは着弾地点が多少抉れる程の威力に対し、もう一つは全く変わった点は無い程、威力が出ていなかった。


「グレンの目は良い聞いておる。今の魔法、二つとも同じ魔力同じ魔法なのは、見てて分かったじゃろ?」


「ああ、確かに同じ魔力に同じ魔法だった……なのに、何であんなに差が出たんだ?」


「それは儂が、片方はシッカリと魔力を完全に魔法に変換させて放ったのに対して、もう片方は魔力を完全に魔法に変換せずに放ったからじゃ。変換が完全に出来てない魔法は、魔力だけ消費して威力も効果も薄い物になるんじゃ」


 その話を聞いたグレンは、驚いた顔をして横に立っているフレイナに声を掛けた。


「……フレイナ。知ってたか?」


「知らなかったわ。魔法にそんな常識があったのね……」


 フレイナは新たな魔法の知識を人間から教わったという点に、驚きながらそう言った。

 そうしてマーリンの話を聞いたグレンは、改めて魔力を漏らさないイメージをしながら魔法を使ってみた。

 すると、これまで成功と思っていた〝悪魔の魔法〟よりも更に威力が上がった魔法を放つ事に成功した。


「凄いな、更に威力が上がったぞ!」


「まだ上がるのか……」


 成功に加え威力が上がった事に喜ぶグレンに対し、マーリンは更に差を見せつけられ悔しそうな顔をしてそう呟いた。


「でも今の感じだと、一つ一つ放つのに時間が掛かるな……」


「そうじゃな、戦闘中だと使えないのは変わらないが。今のは練習していけば、いずれ無意識に出来る用になるはずじゃよ。それに、このやり方は普通の魔法でも使う事が出来るからの、訓練して損はないぞ」


 その後、グレンはマーリンに言われた通り、魔力を漏らさないを意識しながら魔法の訓練を始める事にした。


「グレン。また漏れておるぞ」


「わ、分かってる。今まで意識してこなかったからか、意外と難しいんだよ」


 訓練を始める前にグレンは、魔力が漏れていたら報告してくれとマーリンに頼み始めた。

 すると、最初の一発目は成功したのに訓練を始めてからは失敗の連続であった。

 意識し過ぎているのか魔力も上手く魔法に変換出来ておらず、逆に最初より成功率は下がってしまった。


「……儂も流石に驚いたぞ、ここまでグレンが苦戦するとは」


「俺も驚いてるよ。まさか自分がここまで出来ないなんて……」


 何度も失敗しているグレンを見たマーリンは、一度休憩する事を提案した。


「妖精の長。見ていて、何処か変に感じた所は無いかの?」


「そうね。変に魔力に意識がいってるのか魔法の制御が下手になってて、魔力は完璧だけど魔法の方の形が歪になっているわね」


「俺、不器用過ぎるだろ……」


 改めてフレイナから指摘されたグレンは、かなり落ち込んだ様子でそう言って天井を見上げた。

 流石のマーリンもグレンが躓くとは思っておらず、どうアドバイスしてやれば良いのか悩んだ。

 そして悩んだ結果、一度家に戻り〝魔力の変換・魔力の漏れ〟について改めて説明する事にした。


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