第141話 【悪魔対策部隊・1】
悪魔対策部隊。
その部隊は名の通り、世界を脅かす〝悪魔〟を対処する為に作られた各国から選りすぐりの強者を集めた部隊。
本部はデュレイン国に作られており、最初に集められたメンバーは誰もが一度は名を聞いた事のある者達ばかりである。
「ガリウス、お前もやっぱ選ばれてたんだな。資料見て知ったぞ」
集合場所に着いたグレンは、先に来ていたガリウスにそう声を掛けた。
「お前を驚かそうと思ってな、黙っていたんだよ。クランの事なら心配しなくても、ニック達に任せて来たから安心してこっちに集中できるぞ、その為に準備を万全にして出て来たからな」
「だから最近、あんなに忙しくしてたんだな」
納得と言った顔でそうグレンが言うと、そんなグレンに一人の男性が近づいて来た。
その者の名は、クリス・フォルレス。
斥候職として有名であり、隠密行動に長けた能力を持っていて、数年前の大規模依頼にてグレンと顔を合わせた事がある。
「よう。グレン、最近こっちの国にまでお前の噂来てたが、本当に昔と真逆に近い程変わったな」
「まあな、色々とあったからな。逆にクリスは特に変わった所は無いな」
気さくに話しかけたクリスに対して、グレンがそう返すとクリスは驚いた顔をして「本当に変わったな……」と呟いた。
それからクリスも加わり雑談をしていると、会議の時間となりグレンは幹部席の方へと移動した。
今回集まったのは強者の中でも、選りすぐりのメンバー。
その為に人数は〝悪魔〟の数に対しては、かなり少ない30名となった。
しかし、その30名は全員がSランク級の強さを持つ者、Sランク冒険者として活躍している者ばかりである。
「まず最初に、招集に応じて頂き感謝します。事前にお伝えしました通り、この会議は〝悪魔〟と戦う為に集まって頂きました」
王妃がそう言うと、集まったメンバー達は真剣な表情で王妃の顔を見つめた。
その表情を見て全員の決意を確認した王妃は、兵士に資料を集まったメンバー達に配った。
資料の中には〝悪魔〟を認知した後からの、調べ上げた全ての事が書かれていた。
グレン、キャロル、聖女、賢者が主に活動して、作り上げたその資料は悪魔をまだ見た事のない者達は真剣に資料を確認した。
「一つ、質問良いかしら?」
そう手を挙げて注目を集めたのは、錬金術師メリア・アルカーナだった。
「そこの彼が悪魔を退治したと聞いたのだけど、どのようにして倒したのか詳しく聞かせて貰えるかしら? 資料には、魔法剣で退治したと書かれてるだけだから、詳しい内容を聞きたいわ」
「分かりました。でしたら、話すよりも直接その映像を見た方が良いですね」
そう王妃が言うと、記録用の魔道具を円卓の真ん中に兵士に置くように命じた。
記録用の魔道具を起動すると、グレンと悪魔達の戦いの映像が映し出された。
「いつの間にこんな物を撮ったんだよ……」
「記録は大事にゃ」
驚くグレンに、エッヘンと胸を張ったキャロル。
そんな二人を置いて、会議に集まったメンバー達はグレンと悪魔の戦いに注目していた。
その中には戦いを途中から見ていた賢者や、話でしか聞いていなかった聖女も居た。
そして全ての映像を見終わったメンバー達は、一斉にグレンへと視線を集めた。
「……風呂壊されたら、あそこまで怒るの?」
ある一人の者が言うと、グレンは「風呂は大事だ」と真顔で返答した。
その後、真面目な質問タイムとなり、グレンは参加者達から多くの質問をされた。
質問タイムが終わった後は、情報からどのような攻撃が悪魔に効くのかという議題へと移った。
「早い話、高威力の魔法が効くんじゃないのかしら?」
「だとしても、どの属性が効果的なのか。そう言った話じゃろ、威力にも限度があるしの」
「属性ね。確かに、悪魔達は自分達の事を属性に例えて名乗っていたわね。もしかしたら、それも関係してるんじゃない?」
映像から得た情報から話し合いを続け、気付けば日が完全に落ちていた。
元々、一日で話し合いは終わらないと見越していた為、明日もまた同じ時間に集まると言いこの日は解散となった。
会議が終わり、自宅に帰ろうとしていたグレンの所にクリスがやって来た。
「なあ、グレン。お前って、家買ったって話聞いたけど本当か?」
「本当だけど……クリス。まさかだけど、宿とってないのか?」
「……普通に取れると思ってたら、何処も満員で雑魚寝の所しか無くてよ。流石にこのランクになって雑魚寝の宿で寝るには抵抗が」
申し訳なさそうにそう言うクリスに、グレンは溜息を吐いた。
「俺、お前とそこまで接点無いんだけど……」
「そこを何とか! 昔、一緒に依頼受けた仲じゃん!」
グレンに見捨てられるのを阻止する為、クリスはそうグレンに懇願した。
グレンは斥候職として最高位の力を持つ男の、情けない姿をそれ以上見たくないと思いクリスの頼みを聞き入れる事にした。
「ありがとうグレン! 必ず、この礼は返すよ!」
「ったく、飯は自分で用意しろよ? 寝床を貸すだけだからな?」
「それだけでも助かる!」
嬉しそうにそういうクリスは、グレンに抱き着こうとしたがグレンはそれを阻止した。
それからグレンはクリスを飯屋の近くに送り、自宅の場所を伝えてから自分は先に帰宅した。
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