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第114話 【帰国・1】


 グラム兄さんとの話し合いの場は、一回目の時と同じ場所では無く違う個室のある店になった。

 この店を選んだのはグラム兄さんで、兄さん曰く「この店の料理をグレンに食べて欲しいから」と会った際に言われた。

 今回はこの前とは違い、食事を頼むところから一緒に居たので俺はおススメされた料理を注文した。


「グラム兄さん、話は食べてからする感じ?」


「そうだね。最初は、この店の料理を堪能してほしいから」


 そう言われた後、他愛もない世間話をキャロルも交えて3人でして料理が運ばれてくるのを待った。

 そうして待つ事10分程、全ての料理が届き食事を始めた。

 今回兄さんが連れて来てくれた店は、帝都でも有名な肉専門の店でそれだけで俺は興奮していた。


「ふふっ、キャロルちゃんにグレンは肉が好きだって聞いていたからこの店を選んだけど、本当に肉が好きなんだね」


「一番の好物だよ。キャロル、お前も偶には良い仕事をするな」


「偶には余計にゃ」


 その後、俺は夢中で料理を食べ、気付いたら頼んだ料理を全て食べていた。


「グレンってあんな顔もするんだね」


「グレン君、自分が好きな物を食べてる時が一番いい笑顔をするにゃよ。その顔が見れて良かったにゃね」


 グラム兄さんの言葉にキャロルがそう言うと、兄さんは笑みを浮かべて「ああ、そうだね」と言った。

 そうして食事を終えた俺達は、本題である話し合いを始めた。


「まず、最初にグレン達はこの二日間で帝都の様子を観察したと思うけど、どう感じたかな?」


「そうだな……特に不自然な所は無いって感じに見えたな、孤児も居れば物乞いも普通に居るし、王都と特に変わった点は見えなかったな」


「あたしも同じ感じにゃ、ただ貴族街の方はちょっと空気がおかしいって感じたにゃ」


「そっちは俺は禁止されて行けなかったけど、どんな風におかしいって感じたんだ?」


 帝都に来る際、俺は貴族街の方には近づくなとティアさんに禁止されていた。

 その為、帝都での観察は主に商業区に絞って、どんな生活を送っているのかという所を見ていた。


「う~ん、言葉にするのは難しいにゃ。でも、こう何か隠してるのは感じたにゃ」


「……キャロルちゃん凄いね。何も知らない状況で貴族街の異変に気付くなんて」


「グラム君は何か知ってるのかにゃ?」


「最初会った時にも話したけど、帝都は悪魔憑きの人間が多く住んでて、その殆どが本来生まれた家で暮らしているんだよ」


「悪魔を取り付けた後は、家に帰されてるのか?」


「一応ね。ただその悪魔が憑いた人間は、元の人間ではなくなってるから多くの親達は悲しみから自死を選んだ貴族も多いよ」


 グラム兄さんは悲しい表情でそう言い切ると、キャロルは「じゃあ、あの不自然さ何にゃ?」と聞いた。


「その悪魔達が自分達の魔力を隠す為に、あの一体に隠蔽用の魔法を張ってるんだよ」


「……成程にゃ」


 隠蔽用の魔法を貴族街全体に掛けるって、結界魔法なら分かるが何で隠蔽用魔法なんだ?

 俺はその疑問を兄さんに聞くと、結界だと悪魔の魔力に内側が耐えられないからと答えてくれた。


「それにしても、キャロルちゃんは本当に優秀な情報屋だね。王妃様や聖女様が認めてるだけあるよ」


「にゃはは~、そう言ってくれるのは嬉しいにゃ~」


「ああ、キャロルちゃんは本当に凄いよ……その代わり、グレン。元が有名なだけ、やっぱり目立っていたみたいだ」


 ……やっぱりか。


「視線は感じてた。けど、話しかけられたり追跡されてなかったから、大丈夫だと思ってたけどやっぱり駄目だったか?」


「ああ、僕の方にも色々と話が来るほど、グレンは目立ってたみたいだ。このまま、帝都に居ると危なくなりそうだから、早めに国に帰った方がいい。僕もその方が安心だから」


 グラム兄さんは真剣な表情でそう言い、俺はその言葉に溜息を吐いて「分かった。国に帰るよ」と帰国する事を約束した。

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