第112話 【帝都での生活・2】
その後、元居た場所が王都でいう〝商業区〟という店が多くある通りだったみたいで歩いて直ぐの所にお手頃の値段で服が揃う店にやって来た。
貴族へ対してではなく、俺達の様な平民相手が客のようで素材はそこまで悪くないが、値段が安く買いやすいそんな店だった。
「ニア、適当に選べ。俺は服のセンスは分からんからな、お前が着たい服を買ってやる」
「良いの!?」
俺の言葉に嬉しそうに反応したニアは、タタタッと女性服コーナーの方へと早歩きで向かった。
服が汚れてるのに、受け入れてくた店員にも感謝しないといけないな……だから、そんな目でこっちも見るな! ニアはああ見えて成人女性だ!
店員からの視線に耐えニアが戻ってくるのを待つ事、数十分後ニアは髪色と同じ青のワンピースを持って戻って来た。
「ワンピースで良かったのか?」
「うん、実用性があるのは今の服で良いから、少しはおしゃれ出来る服も持っておきたいの」
「……一つ聞くが、お前って何着服持ってるんだ?」
「えっ? う~ん、5も無いかな? 余り多いと管理も出来ないし」
折角、自分のお金を使わないで良いんならと付け加えてニアは嬉しそうに言った。
そんなニアの様子に俺は、店員を呼びニアに合う服を追加で4着と下着も一緒に選んでもらった。
(……グレンって、意外とこういう子が趣味なの?)
(違うわ! ただこいつを見てると、教会に居たチビ達を思い出すんだよ……)
(そう言えば、グレンって子供には結構甘かったものね。教会に残した子供達の為に、稼いだお金の殆どを教会に送っていたほどだものね)
フレイナにそう言われた俺は、心の中で余計な事を言うなよと思いながら、店員が追加で持ってきた分も合わせて支払いを行った。
ニアは最初に買ったワンピースと、追加で買った下着に着替えてお店を出た。
「その、沢山買ってくれてありがとう」
「良いよ。お前見てたら、教会に残してきたチビ達を思い出しただけだから、それより街の案内はちゃんとしてくれよ」
「うん! それはちゃんとするよ!」
新しい服に着替えたニアは、嬉しそうにそう返事をして帝都の街中を一緒に歩き出した。
当初何も考えずに散歩しようと考えていたが、ニアの案内があったおかげで帝都にどんな店があってどんな人が生活しているのか大体分かる事が出来た。
最初は物乞いに狙われたと思ったが、あそこでニアと会ってて良かったな……。
「今日はありがとな、ニア」
「ううん、グレンのおかげで餓死しなくてすんだのは私の方だし、洋服も買ってくれて、色々とよくしてくれてありがとう」
ニアは俺の言葉に対して、そう言葉を返してきた。
それから、既に陽も沈みかけていたのでニアと別れ、俺は宿に帰って来た。
すると、宿の入口の所で何故かキャロルが居て俺を見るなら笑みを浮かべて近づいて来た。
……なんか嫌な予感がするな。
「にゃ~、グレン君。帰り遅かったにゃね」
「……帝都の街中を散歩してたからな、時間が掛かっただよ」
「そっかにゃ~って、それで終わる訳無いにゃよ? あたしは見たにゃ。グレン君が女の子と一緒に歩いている所を!」
キャロルの馬鹿が! 人通りがあるのに大声でそんな事を言いやがって!
「お前、自分が目立つ行為するなって言っただろうが!」
突然大声を出したキャロルを引っ張り宿の中に入り、部屋まで連行した俺はそうキャロルに言った。
「だって、あのグレン君が女の子と二人っきりで歩いてたにゃんて知ったら、グレン君知ってる人は皆驚くにゃ!」
「あのな……」
俺は頭が痛くなり額に手を置き、反論してきたキャロルに今日一日の出来事を伝えた。
「あ、案内役にゃ?」
「ああ、そうだよ。お前みたいに俺は情報を持ってないからな、帝都で暮らす奴と一緒に動いた方が良いと思って、丁度物乞いして来たからその対価で案内してもらったんだよ」
「にゃ……で、デートでは無いにゃ?」
「何で初めて来た街で、何でデートするんだよ。そもそも、今日は情報収集するって最初から言ってただろ? お前、話聞いてたのか?」
そう俺は言うと、まさかと思い今日一日のキャロルの行動を聞いた。
すると、案の定途中で俺がニアと歩いている所を見てから、ずっとついて来ていたと申し訳なさそうに言った。
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