317:切り札のその先で
「ぅ、ぉおおおおおおおおッッッ――!!」
その業火が地表に到達したその瞬間、城司はもはやなりふり構わず走り出し、その途中で逃げ切れないと悟って身に着けた擬人鎧たちと合わせた全力の防御界法を発動させていた。
押し寄せる熱と爆風に対して最高の防御性能を誇る【鉄壁防盾】を展開し、さらに鎧の【擬人】たちが全周防御の【全周球盾】を複数展開する多重防壁。
そしてどうやら、全力で防御を図っていたのは対岸の武者たちや華夜についても同じだったらしい。
サタヒコとケンサ、生き残っていた武者の二人がそれぞれシールドを展開し、それに加えて愛菜自身も水の膜を重ねて全力の防御で押し寄せる熱波と衝撃に対抗している。
そこまでやって、それでも無事でいられたのはあくまでも城司や華夜たちが攻撃の中心にいなかったが故だ。
当然、余波だけでそのレベルである以上、そんな極大火球の直撃を受けた者たちがただで済んだはずもない。
見れば、先ほどまでアーシアたちがいた場所は高速道路の高架そのものが熱と爆発によって完全に消滅してしまっている。
つい先ほどまで、三人の武者たちと交戦するために三十体以上の擬人たちがこの場に集結していたはずだが、今はもうこの場所には入淵親子二人と三人の武者、否、もはや二人になってしまったサタヒコとケンサの計四人しか残っていなかった。
それこそが、余りにもあっけないこの戦いの終結。
――否。
「「「まだだ――!!」」」
サタヒコと城司、そして上空から落下してくるカゲツの三人がほとんど同時に、それぞれがそれぞれの理由で確信を帯びた声で叫んで動き出す。
否、声を上げなかったケンサと華夜の二人にしても、言葉にしなかったというだけでこれで終わりだなどとは微塵も思っていなかった。
「――まだ残っている……!!」
上空から落下しながら戦場全体を俯瞰して、その姿を視認したカゲツが声を上げる。
もとよりアーシアを含む敵の首魁、【神造人】を名乗る者達はもともと【不壊性能】を有する【神問官】だ。
以前交戦したルーシェウスがそうだったように、どれだけ強力な攻撃を行ってもアーシアだけは殺せないことは当然に想定されていたし、だからこそ【決戦二十七士】の戦士たちはこの二地については討伐ではなく捕縛を前提に作戦を立てていた。
そして何よりも、他の四人と違いいまだ上空にいるカゲツからは見えているのだ。
吹き飛び、溶け落ちた高速道路の高架下、多数の擬人たちが展開したシールドもろとも蒸発し、それでもそうした障壁が積層構造になって重ねられたことでかろうじて焼け残った一台のトレーラーの存在が。
魂を込められたことで自らも防御の界法を発動できるようになった巨体な車体が、自身はほとんどスクラップ同然になってその核を消滅させながら、それでもなお内部にかくまった主たちを守り抜いてそこにある、そんな姿が。
「決して逃がすな――。首魁が無事だ――!! 取り巻きが消えたこの瞬間が、奴をとらえられる最後の好機――!!」
「な、めるんじゃ、ないわよ――!!」
だが、そう叫んだカゲツが先んじて地上へと飛び込もうとしたその刹那、そんな相手の動きを察知したかのように付近のビルの窓ガラスに次々とアーシアの姿が映り込み、カゲツの全身の装備に、あえて避けた鞘と刀以外のそのすべての装備に模造の魂が注ぎ込まれる。
「――ッ」
黒い霧を吹き出して空中でカゲツの姿勢が崩れて回る。
カゲツとて超一流の武芸者だ。彼女ほどの腕前の持ち主ともなれば高所から落下しても着地することなど造作もないが、それはあくまでも本人の意思で姿勢制御が十全にできて、界法などを用いた着地の際の衝撃緩和ができればの話である。
付近に装備を叩きつけられる地面のない空中では仕込まれた【思い出の品】を破壊することもできず、かくなる上は装備を捨てて少しでも動きの自由を取り戻すべきかと、そんな思考が頭をよぎった次の瞬間――。
「【砲弾防盾】――!!」
破壊された高速道路上から、【竜鱗防盾】を固めて形成されたカプセルが撃ち出され、落下するカゲツのそばで術者の意思を受けて消滅する。
内部に詰められていた【思い出の品】、合流した華夜が即席で形成したガラス片を大量にまき散らして。
「――感謝する」
抵抗する装備を空中で無理やり振り回すようにガラス片へとたたきつけ、砕かれたそれらが光の粒子となって装備に注ぎ込まれた模造の魂に吸い込まれていく。
「――これでッ」
最後に抵抗するブーツのかかとをガラス片へとたたきつけ、装備のすべてを無効化するや、カゲツは握る神造の刀に風をまとわせ、残った【思い出の品】のガラス片をその渦の中へと巻き込みながら空中で跳躍。
落下の勢いを碌に殺すことなく斜め下へと疾走し、眼下にある横倒しのトレーラーへと一直線に疾走する。
「――ッ、こ、の――」
一直線に迫るカゲツの存在に、よろめきながらもトレーラーから出てきたアーシアがとっさにその手のサブマシンガンを向けて引き金を引き絞る。
暴れる重心を全く制御できぬままばらまかれる弾丸。けれどそうして放たれる弾丸の一つ一つには、事前にアーシア自身が模造の魂を吹き込んでいて、意思持つ【擬人】となったそれらは放たれたそばから軌道を変えて四方八方からカゲツへと襲い掛かる。
しかし――。
「【穿風斬】――!!」
大気の壁をかき分け穿つ気流の螺旋、外へと向かう空気の流れで正面から襲い来る弾丸、その弾道をそらして背後へと受け流し、カゲツ自身はアーシアのもとへとむけて一直線に疾走する。
無論撃ち込まれる弾丸が思い出の品である以上一度狙いを外しても終わりではないがそちらについても対策済みだ。
背後へと通り過ぎ、Uターンしてカゲツの背中を狙う擬人の弾丸たちに、同じ擬人の弾丸、けれど渦巻く気流の中に混入したガラス片を砕いたことで、それを生み出した華夜に間接的に洗脳された個体たちが襲い掛かって、疾走するカゲツの背後で弾丸同士がぶつかる同士討ちの火花が散発する。
「――ッ」
「お嬢様――!!」
弾丸を打ち切り、弾倉の交換にもたつくアーシアの前へと、ミラーナと呼ばれていた盾を構えた侍女と装甲車から変じた巨大な拳の侍女が立ちはだかり、同時に背後にかばわれたアーシアが弾切れの銃や自身の全身に付けたアクセサリを次々と眼前へと投げ出し、それらすべてに魂を込める。
「――全員、人型でそいつを迎え撃て――!!」
直後、生み出された十体以上の【擬人】達がカゲツの差し出す気流の壁の前で人型へと変じ、それぞれが文字通り風圧で身を削りながらカゲツの足を止めるべく立ちふさがる。
それは最速の剣士ですら足を止めざるを得ない、かりそめの命による文字通り使い捨ての肉壁。
ただし――。
「無粋な邪魔はさせないともォッ――!!」
直後、カゲツの身に覆いかぶさろうとしていた擬人の群れが、内側から爆ぜるように、あるいは何かにしたたかに打ち据えられたかのように四方八方へと跳ね飛ばされる。
先ほどまでそこにいたカゲツではない。
彼女の、あるいは彼女の握る神造の刀のそばへと現れた、すでに自身の得物たる【龍骨刀】を回収して使用可能な状態にまで戻していたケンサの技が。
「【滂沱の刃船】――!!」
刀身の背の各所から水が噴き出し、その水圧によって加速した蛇腹剣が生き物のような動きで次々と擬人たちを屠り去る。
もとより使い捨てるつもりでたいした知能やスキルすら与えられていなかったような個体だ。
戦闘に使える能力など、かろうじて人型となった体で飛び掛かるよりほかになく、そんな素人以下の存在に後れを取るほどこの場にいる武者たちは弱くない。
「――は、はは……。底が見えてきたんじゃないかい……!!」
ようやく見えた勝機の中、追いついてくる感情を振り払うようにケンサが無理やり笑って、同時にあながち虚勢ともいえない己の中の分析をそう口にする。
先ほどまでの擬人たちと違い、今こちらの足止めに使われているのはどれも知能の低い個体ばかりだ。
黒い煙を固めたような姿で完全な人型に成れていないのはもちろんのこと、動きも稚拙で武術的な技能が見えず、碌なスキルも習得していないのが容易に見て取れる。
(もとより知能の高い擬人はそうそう簡単には生み出せないのではという予想はあったが……。なるほど、強力な擬人を作るにはそれなりの素体が必要で、今はその素体のほとんどを使い切ってしまったってところかな?)
ケンサの分析は間違っていない。
無生物であれば何であっても魂を吹き込むことができ、やろうと思えば道端の石ころすらも配下とすることができるアーシアだったが、しかしそうやって生み出す擬人の性能は結局のところその物品がどんな人間とどのくらい接点を持っていたかに如実に左右される。
自身が長く愛用しているような物品であれば、高い知能と人間と寸分たがわぬ姿になれ、なおかつ持ち主であるアーシアに強い忠誠を誓う【擬人】を作成することが可能だが、これが人間との接点の薄い物品であったりすると与えられる知能の上限が低かったり、ひどいものになると人間の姿をとることさえ困難なものもいたりする。
かといって、他人の持ち物を【擬人】化した場合、高度な知性を持った個体として創造してもその忠誠は素体となった物品の持ち主の方へ向く可能性が高く、状況によってはかえって敵を増やしてしまうという最悪の事態にもなりやすい。
そもそもの話、アーシアが普段からジャラジャラとアクセサリの類を大量につけていたその理由は、普段から接する物品をできるだけ増やして、必要に応じて優秀な【擬人】を生成できるよう備えているという側面が大きいくらいなのだ。
視認すればいいという簡易すぎる発動条件、そして強力な配下を大量に生み出せるという破格といっていい効果の影に隠れてわかりにくくはあるが、【模造心魂】の権能とて厳格なルールのうちに一定の制限を抱えており、多くの【神造物】がそうであるように決して万能無敵の権能というわけでは、ない。
「――ッ。カーラ……!!」
すでに自分たちの不利については悟っていたのだろう。
一斉に撃破された弾丸の擬人たちに続けるように、ミラーナの声に応えて残っていた大柄な侍女が本来の姿である装甲車へと姿を変えて、備え付けられた銃器を乱射しながらその車体の上にミラーナとアーシアを搭乗させる。
(逃げる気か――!!)
ケンサとカゲツに防御を強いてその場に釘付けにし、その隙に車両としてのそうは能力で主を逃がそうという逃走の構え。
だがそんな選択も、相手が【参誓の助太刀】を持っているとあっては到底最善手とは言えなくなる。
「――逃がしはせんわァアアアッ――!!」
いつの間にかカゲツの手元から消えていた神造の刀が上空から飛来して、装甲車の進路上に差し掛かった段階でその持ち主の一人であるサタヒコが現れ、すでに振りかぶっていた鬼鉈を力の限りに振り下ろす。
「【発破雷】――!!」
一つの武術流派の、そのほんの一握りの達人にのみ許された雷撃効果付きの全力打撃が強固な車体にまともに激突し、結果として装甲車の全面が大きくひしゃげて上に乗っていた二人がなすすべもなく投げ出される。
「――ッ、……ぅルァァッ!!」
逃走を阻まれ、装甲車だった擬人が大柄な侍女へと姿を変えて即座に反撃のために両腕を振り上げる。
組んだ両手を巨大化させて、装甲車を構成するパーツに置き換えた状態で振り下ろされるダブルスレッジハンマー。
並の人間であれば間違いなく命を落とす、そして幾度となく頑丈さを見せつけているサタヒコであろうとも今度こそ命に係わるだろうそんな一撃が技を打ち込んだ後の無防備な状態の相手へと打ち込まれ――。
「――よいのか? 一人が欠ければまた一人新たな戦士がこの場に来るぞ?」
その寸前、かけられた言葉にほんの一瞬大質量の一撃がその動きを止めて、そしてそれこそが彼女の命運を分ける致命的な隙となってしまった。
大柄な侍女の、その胸元から赤熱した刀が背後からその身を貫く形で表れて、そうして背後に現れていたカゲツに体内の核を刺し貫かれた擬人が、その素体である半壊した装甲車を残して戦いの渦中から退場する。
(――ッ、そうだ。三者共有の特性、そして一人が死ぬと別の誰かが継承者となって現れるというなら、あの三人はどれだけ邪魔でも絶対に殺せない……!!)
同じ主に使える同胞にして、この場において重要な手勢が消滅するその姿に、しかしそれを見るミラーナは彼女が消滅の寸前に見せた躊躇の理由を理解し、歯噛みする。
【参誓の助太刀】の特性、恐らくはトバリが死亡したことで継承者となったカゲツがこの場に転移してきた、その経緯を鑑みるに、あの三武者の殺害が別の武人を呼び寄せる危険をはらんでいるのはもはや明らかだ。
そしてここから二人目、三人目が呼び出された場合、その候補にはあのブライグや、行方の分からないセインズといった最重要警戒対象の人物が当然に含まれる。
故に今のミラーナ達は、どれだけ邪魔でもこの三人の武者を絶対に殺せない。
もしもこの場にあれだけの戦力が呼び出されてしまったら、それこそ自分たちの生存と逃走の目はなくなるのだと、深く理解している、それゆえに。
「――まだですッ!!」
「いいやさせないとも――!!」
それでも、自身を奮い立たせるべく叫んだミラーナに対し、同時にその場に転移してきたケンサが龍骨刀を軸に大量の水で幕を成して視界をふさぐ。
いまだ原型を留めている装甲車、それに再び魂を込められて【擬人】として復活させられる、その展開を防ぐために。
無論、そばに控えるミラーナの存在を考えれば彼女の力を用いて死角にいる対象に命を吹き込むこともできるだろうが、すぐ目の前に敵がいる状況ではさすがのこの二人とてそうはいかない。
「お嬢様――!!」
そうして、三人に間近に迫られたその状況で、アーシアの最後の盾であるミラーナがどうにか主の前に出る。
もはやこの場で主を守れるのは自分だけ。
そう腹をくくって、まずは先陣を切って鬼鉈を振りかぶりながら飛び込んでくるサタヒコに対し、その一撃を受け止めるべく盾を構えて――。
「【発破雷】――!!」
「―-グ、ぅぅうううううう――!!」
鉈と金棒、二つの武器としての側面を持つ武器のうち、金棒部分で撃ち込まれた強烈な一撃に思わずミラーナは腹の底から声を漏らす。
ミラーナとて【神造人】達が用意した最高クラスの【擬人】だ。
人とそん色のない自我を有しているというだけでなく、多くのスキルを注ぎ込まれて戦闘能力も補強されているため、その実力は一流と呼ばれる戦士程度なら圧倒できるだけのものを与えられている。
だが今目の前にいるのは、そんな一流をはるかに超える達人とも呼ぶべき超一流。
撃ち込まれる一撃は一流以上と自負するミラーナの想定よりはるかに重く、受け止めることはもちろん、受け流すつもりで守っても少なくないダメージと共に後退を余儀なくされていた。
けれど――。
(――耐えたッ。こちらは擬人の身、肉体の損傷程度なら何とでもなる――。ダメージなど無視して、無理やり反撃に転じるような捨て身の一手でも――!!)
足裏がこする地面を強引に踏みしめてその場にとどまり、ミラーナは鬼鉈を振りぬいた相手のその一瞬の隙を突くべく前へと踏み込む。
全身から黒い煙を吹き出させ、損傷した個所の内攻撃に必要な場所だけを優先して修復して、残りの余力はすべて繰り出す一撃のために法力として盾に込め、それを相手めがけて叩きつけようとして――。
(――あ)
緩慢な時間の流れの中でミラーナは見た。
降りぬかれてサタヒコの背後へと向かう鬼鉈、その柄頭の部分に今まで気づかなかった細い穴が開いていて、そんな鬼鉈を握るサタヒコが武器を持ち換え、まるで居合いのような構えを見せるその様子を。
そうして次の瞬間、降りぬかれた鬼鉈の先端が地面へと激突し、同時にその柄頭の穴に突き刺さるような形で、彼らが共有する神造の刀が現れるその瞬間を。
(――金棒で、――鉈で、そして居合のための鞘――)
寸前に理解して、けれどミラーナはもう間に合わなかった。
「【斬刃雷】――!!」
防御する暇もなく、数多の切断効果に雷撃まで追加された最終奥義相当の一閃がミラーナをその核ごと両断し、直後にその場に残された姿見鏡すらも付与された斬撃の嵐がバラバラに割って四散させる。
神造のものではない、けれど長き時を生きた古き鏡が。
その素体すらも砕かれて、主たる【神造人】を守る最後の擬人が、もはや復活の余地もなく降り注ぐ。
(護衛は全て片付けた……!!)
(残っているのは首魁たるアーシアただ一人……!!)
(【神問官】である以上殺せはしない――。けれどこの相手であれば捕縛くらいは十分にできる……!!)
サタヒコが、ケンサが、カゲツが。
もはや無防備にたたずむしかない【神造人】の少女のもとへと迫りながら、その心中でこの戦場における決着を半ば確信する。
無論、相手を殺して終わることができない以上、ここから先は捕縛した【神造人】を無力化しつつ、その奪還に動く【擬人】達の相手をする羽目になるのだろうが。
幸いにしてこちらには限定的な精神干渉が行える華夜がいるし、彼ら【決戦二十七士】の長たるブライグも【神問官】に勝利する方法に当てがあるようだったことから、あるいは彼らの力を借りれば捕縛したアーシアを消滅に追い込むことも可能かもしれない。
なんにせよ、決着には及ばずとも一歩勝利には近づけるとそう信じて、もはや守る味方のいなくなった敵の首魁、その片割れへと三人の視線がほぼ同時に向けられて――。
(((――!?)))
砕け散って落ちる鏡の残骸の向こうに三人は見た。
ミラーナだったものの破片を浴びた神造の少女、その美しい顔の頬のところが、破片の一つによってかすかに咲かれて、そこから見覚えのある黒い煙が漏れている、そんな光景を。
(――な、に?)
目の当たりにした光景に、三人の武者たちの脳裏でいくつもの疑念と思考が渦を巻く。
まるで【擬人】のような、【神問官】ではなくこれまで屠ってきたのと同じ物品を素体に生まれた人のようなその傷に、三人がほぼ同時に、この相手が【神造人】を名乗ったことはあっても【神問官】を名乗ったことはなかったと、そんなことを思い出して――。
「させないでッ――!!」
上空から落下し、浮遊によって今まさに着地しようとする華夜がそう叫ぶのが耳へと届いて、我へと返ったサタヒコが慌ててアーシアの方へと視線を戻して――。
「――ホント、最悪」
その手の中で、アーシアが握っていたペンダントのような最後のアクセサリーが砕かれて、直後に舞い上がった光の粒子が、破壊したアーシアではなく周囲でその光景を見ていた者たちの意識へと一斉になだれ込んできて――。




