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270:攻略不能の難題

流石に最終チェックが追いつかなくなってきたので、更新ペースを落としつつ一日一羽程度の更新を続けようと思います。

一応この章のラストまではアップしてしまうつもりですので……。

 摩天楼の最上の空中庭園で二人の女が火花を散らす。


 比喩や誇張ではなく文字通りに。

 それぞれその手に携えた小太刀を振るい、互いに相手の命をとるべく鋼の刃をぶつけあう。


 否、現状相手の命を本気でとろうとしているのは、まだ一方的に斬りかかっている静の方だけか。


(予想はしていましたが、やはり強い……。現状こちらの攻撃をいなしているだけなのに、動きにセインズさん並みの余裕があるのが嫌と言うほどわかる……)


 生来の、神に造られたという設定なのか、それとも不死不壊故に長く生きているが故の経験によるものなのか、セリザの立ち回りには隙と言うモノがまるでなく、容赦なく全力で斬りかかる静を軽くあしらっているような印象を受ける。


 否、単純な印象で無く実際にそうなのだろう。

 静自身、まだすべての手札をつぎ込んで殺しにかかっているというわけではないが、それでもオハラの本能に刻まれているという生来の戦闘技能程度では足元にも及ばないような圧倒的な技量、その厚みの違いとも言うべきものをひしひしと感じさせられる。


(……それでもッ!!)


「【黒雲(クラウディ)】……!!」


 セリザが大きく距離をとったそのタイミングを狙い、静は即座に手の中の武装を今は無き【麒麟の黒雲杖】に変更。大きく横に振るうとともにその先端から黒雲の煙幕を吐き出させ、相手の視界を奪いにかかる。


「――ほぅ?」


 直後、雲の内にのまれたセリザの元へ連続で苦無が殺到、寸前に気配だけでそれを察知して小太刀で叩き落とすセリザに対して、さらに真上から弧を描くようにして先ほど会談に使っていたイスの一つが落ちてくる。


「悪くないねぇ」


 投げ込まれたイスの攻撃に対して、セリザは自身の小太刀に法力を流し込むと、次の瞬間には法力の刃を伸ばすようにして空中にあったイスを軽く振り上げた一太刀でもって両断して見せる。


 かつて先口理香が使っていた【斬光スキル】。それと類似した技をちょっとした小技のような感覚で行使して、直後にそんなセリザを襲うのは空中で炸裂する暴風の法力。


「いい立ち回りだ……!!」


 言いながら振り返った次の瞬間、セリザの背後から暴風に吹き散らされる黒雲の壁を突き破り、手に弓を携えた静が一直線にセリザの元へと降って来る。


「--ッ、【爆道(はぜみち)】――!!」


【突風斬】の暴風で晴れた視界の向こうでセリザがこちらを待ち構えているのを見て舌打ちしながら、直後に静は手の中の武器を長剣に変更。

同時に戻った重力の中で地に足を付け、その足裏で法力を炸裂させることで更なる加速を引き出して、【応法の断罪剣】の法力吸収効果を発動させつつ力任せに長剣の一撃を叩きつける。


 静の体がセリザの真横を落ちるような勢いですり抜けて、着地と同時にすぐさま振り向いた静が目の当たりにするのは、いつの間にか現れていた、静が持つそれと酷似した長剣によって渾身の一撃を防いで見せたセリザの姿だ。


「いろいろと言いたいことはありますが……。そもそも貴方、目以外の知覚能力でも持っているのですか……?」


「……ん? ああ――、まあ、そう言う手段もないわけじゃないが、これについちゃただの経験さね……。

 例え視界を奪われていても風切り音くらい聞こえるから飛んでくるものは分かるし、相手の位置だって、足音は殺してても空気の動きとか――、まあいろいろ隠せない情報ってのはあるもんだからねェ」


 聞けば聞くほどデタラメで厄介な相手だった。

 先ほどから見られた戦闘技量についてもそうだが、恐らくは戦闘経験そのものが相当に違う。


 それこそ、品種改良じみた行為によって武術的な動きや直感を本能にまでしみこませたというオハラの血族が、霞んでしまうくらいに。

 先祖が血統に刻んだなどと言う間接的なものではない、本人が自分自身に刻んだ濃密なまでの戦闘経験が、今こうしてセリザと言う【神問官】の強さを支えている。


「--まあもっとも、攻撃を避けるということは一応傷つけることはできると見ていいのでしょうか……? 確か【神問官】には攻撃を受けても傷つかない不壊性能なるものがあったはずですが」


「--ハッハ、そいつぁ大丈夫さ。

 一口に不壊性能って言っても、【神問官】や【神造物】によっていろいろと種類があってねェ。アタシの場合はどれだけ傷を負っても戦いが終わった瞬間に完治するって言う再生能力みたいなものなんだが――」


「……なるほど。逆に言えば戦いの間であれば傷つけ、あわゆくば殺害することも理論上は可能、と言うことですか……」


 これで傷つけることすらできない相手を打倒しなければならないという話であれば、それこそ静は禅問答のような回答か、あるいは根本的に試練の達成条件そのものを疑わねばならない所だったわけだが、どうやら話はそこまでややこしいものではないらしい。

 そのことに安堵すべきかは迷うところであったが、しかし静のそんな様子に思うところがあったのか、対するセリザがため息とともに思いもしない言葉をかけて来た。


「……それにしてもその様子、今みたいな質問が出てくるってことは……。考えて見りゃ当たり前の話だけど、アンタやっぱりアタシについての事前知識は持っていないんさねェ……」


「事前知識、ですか……」


「ああ、そうさ。言っちゃあなんだが有名だったんだよ。アタシって言う存在と【始祖の石刃】、その試練の内容と、アタシ自身の手の内は……」


 肩をすくめながら語られるその言葉に、静は内心でやはりそうだったのかと納得の感情を覚える。

 もとより【決戦二十七士】が【始祖の石刃】の存在をその権能まで含めて知っていたことから予想していた事態ではあった。

 加えて彼らがこの石刃の正体を知って【英傑殺し】などと言う名称を使っていたことを考えても、この石刃の試練に静以前の受験者がいて、その者達が軒並み試練に失敗していたことは明らかだ。


 流石にその知名度が、一部のモノだけが知る程度だったのか、それとも悪名高いと言えるほどのものだったのかまでは知る由もなかったが。


「うーん、これはちょっとまずいかねェ……。いやさ、別に【神問官】の試練に公平性なんてものは求められちゃいないんだが……。それでもアタシについての情報をあんたが知らないというのはさすがにちょっとフェアじゃない……」


「フェア……?」


「難易度調整の話さ」


 そう言いながら、セリザは意地悪く、しかしどこか何かを諦めた様子でニヤリと笑う。


「もとよりアタシの試練はアタシ自身の手の内が知れ渡っていたことで、かろうじて難易度が調整されていたところがあるんだよ……。

 まあ、それでも結局調整なんてし切れちゃいなかったんだが、それでも、今からでもアンタにこの試練がどれだけ理不尽かを伝えたって罰は当たらんさね」


 そう言うと、セリザは自身の足元の影に長剣を沈めて、代わりに黒いドレスの広くなった袖口から再び小太刀を出現させる。


「まず最初に聞こうか、アタシの権能ってなんだと思う?」


「……影から武器を生み出す、と言ったところでしょうか。それも恐らくこの石刃でコピーしたものと同じ武器を」


「んー、間違っちゃいないが、まあ、二十五点ってところかねェ」


 現状からの予測で返したざっくりとした答えに、思いのほかセリザから辛口な採点が飛んでくる。

 二十五と言うその数字は、果たして何点満点でのモノなのか。

 そして具体的に、なにをもってその数字を口にしたのか。


「『影から石刃の写し取った武器を生み出せる』。確かにそれがあたしに与えられた権能、【影供の積刃(レムナントブレイド)】の持つ性能さね。

 けど、この権能の試練としての難解さを語るならそれだけじゃ言葉が足らない。

 この権能には、アタシの試練を攻略不能なもの足らしめている、ぶっ壊れていると言っていい特性が三つもある」


 言いながら、セリザは滑るような動きで静へと向けて距離を詰めると、手にした小太刀で今度は彼女の方から静へと斬りかかって来る。

 とっさに腰から十手を引き抜いてそれを受け止め、カギになった部分で抑え込んで小太刀による反撃を試みる静に対し、告げられ、見せつけられるのは彼女の言うぶっ壊れた性能のその最初の一点。


「まず第一に――」


 斬り付けた小太刀の一撃が、どこか見覚えのある武器との激突音によってあえなく遮られることとなる。


「――生み出せる武器の数に制限が無い」


「--!!」


 相手が自分と同じように小太刀と十手で攻撃を受け止めているのだと理解した次の瞬間、静の足元、そこに差すセリザの影から第三の武器が飛び出し来る。


 とっさに石刃を弓へと変えて、重力に引かれて背後に落下することで難を逃れた静だったが、しかしそれによってはっきりと見えるようになった、足元から飛び出した武器の存在は、別の意味でも無視できないものだった。


「--その槍……!! そんなものをコピーしたことは――、まさか……!!」


「そう、これが第二のぶっ壊れ特性。生み出せる武器のレパートリーが現在の石刃所有者(・・・・・・・・)のモノだけじゃない(・・・・・・・・・)


「……!!」


 セリザの足元から現れた、静がコピーしたことのない、それどころか見たことすらない簡素な槍についてそう告げられて、さしもの静も少なからぬ衝撃を受けて沈黙する。


 なにしろ、セリザの今の言葉が真実だとすれば、この相手はもはや厄介などと言うレベルではなくなってしまうのだから。


「アンタが把握してるかは知らないが、アンタに貸し与えた【始祖の石刃】は基本的にあんたが自分で石刃にコピーさせた武器にしか変化できない。これは歴代の所有者たちに確認させたから確かな話なんだが、どうやら石刃のレパートリーは所有者が変わるたびに、正確には前の持ち主からアタシの元に帰ってくるたびに一度リセットされているらしくてねェ」


 十手と小太刀を影へと放り込み、セリザは現れた槍をその手に掴むと、どこか慣れた手つきで、けれどどこか懐かしむような様子でその槍をくるくると振り回す。


「……まあけど、単にリセットされるってだけなら、そう言うモノとして別に大きな問題にはならなかったんだが……。

厄介だったのはその石刃のレパートリーを反映しているアタシの方に、そう言ったリセットが一切なされなかったってことでねェ……」


「……それでは、貴方が使える武器は……」


「そう、アタシのレパートリーはあんただけじゃない、歴代所有者たちが写し取ってきた武器、その全てだ」


 自身の権能、その性質を明かすセリザの口調に、いよいよ静も彼女が自身の難易度設定のミスを疑った、その理由を多少なりとも理解する。


 一度に一つの武器にしか変化できず、自身でコピーした武器以外には変化できない石刃に対して、その石刃を手に入れるための試練の主は歴代所有者の武装を無尽蔵に生み出せるとあっては、そんなもの、【神問官】であるセリザの方が【神造物】である石刃の上位互換のようなものだ。


 どう考えても、試練とそれで得られるものの、そのバランスが釣り合っていない。


(……いえ、いくら武器を無尽蔵に生み出せるとは言っても、彼女自身の腕が二本しかない以上同時使用できる武器の数には限界があるはず……。それにいくら歴代の所有者の武器をレパートリーとしているとはいえ、その全てが最新ものほど性能がいいとは思えない……)


 仮に過去の所有者たちがコピーしたものがあったとしても、その中には当然、現在の技術に至るまでの発展途上、悪く言えば時代遅れの武器だって相当数あるはずだ。

 極論先ほど見た槍の他に【神造物】の槍や、もっと原始的な石槍、竜昇がかつて使っていたような竹やりなどがレパートリーにあったりすれば、結局使うのは【神造物】の槍と、あとはせいぜい最近の槍から何本かと言うような状態になることも充分にありうる。


 無論【神造物】すらもコピー可能である以上脅威度が高いことには変わりないが、それでも武器の数と種類が多いからと言ってそれらすべてを一度に相手取る訳ではない以上、付け入る余地は必ずあるはずなのだ。

そんな風に、この時の静は絶望的な情報を鵜呑みにすることなく、どこまでも冷静にそう考え、思考し続けていた。


 セリザが、静の権能の見立てを二十五点と評したその理由。

 足りない|七十五点(四分の三)の内の、その最後の一つがまだ語られていないというのに。


「――ああ、ちなみになんだが、アンタはその石刃でコピーできる『武器』の定義っていったいどんなものだと思う?」


 投げかけられた問いに答える代わりに、静は手の中の武器を拳銃に変えて間合いの外から立て続けに弾丸を叩き込む。

 セリザの言葉に興味がなかったわけではなく、単に答えなくとも勝手に話してくれるだろうとそう判断したが故に。


 そして案の定、けれど予想外の情報を伴ってその答えは示される。


「答えは経緯(・・)さ」


 言葉と共なら現れたのは、大きな岩を積み重ねて作った、人一人が隠れられるほどの小規模な石壁。

 まるで城壁の一部をそのまま切り出して来たかのような、そんな石壁に静の放った弾丸が弾かれて、その足元の床の上へと次々と落下し音を立てる。


「――武器として造られた経緯、あるいは武器として使われた経緯があるかどうか。その一点の判定によって、その石刃は自身が写し取れる対象かどうかを判定している。

 だから、武器に見えても芸術品として造られたような剣とかだと写し取れないこともあるし、逆にとんでもないものが武器として判定されたりするのさね」


 『例えばコイツのように』と、セリザがそう言ったその瞬間。

 石壁の表面に魔法陣が浮かび上がり、その防御を意図した外見を裏切るように、広範囲に広がる雷の界法を放つ形で『武器』としての性能を発揮する。


(--単に身を守るだけじゃなく反撃も可能な固定砲台……。あるいは本当にどこかの城の外壁だったものの一部と言ったところですか……!!)


 寸前で攻撃を察知して弓の力で空中へと飛び出しながら、静は石壁の性質を目の前の光景から大まかにではあるが推察する。

 こんなものをホイホイ生み出せる時点でつくづく打倒が困難な相手だが、生憎とそんなことを思い悩んでいる暇すら今の静には存在していない。


「--とまあ、ここまでがあたしと言う試練が持って生まれた権能だけでの(・・・・)欠陥だ。実際にはこれに加えてもう一つ、外的要因による第三の問題が立ちはだかることになる」


(外的要因……?)


「人間たちによる武器の発展さね」


 そう言いながら、セリザは雷から逃れて空中へと飛び出した静へ向けて見覚えのある武器を突きつける。


 そう、静でもあの監獄で見た覚えだけはある、静のレパートリーの中にはない近代兵器のサブマシンガンを。


(--!!)


 危険を感じると同時にシールドを展開し、即座に落下飛行の進行方向を変化させた静に対し、連続の発砲音と共に多数の弾丸がシールドに弾かれる形で着弾する。


 一瞬でも反応が遅れていればハチの巣にされていた。

 そんな想いとともに頭をよぎるのは、これまで無意識のうちに抱いてしまっていた思い込みを否定するような思考。


(まさか、【新世界】誕生後に彼女に挑んだ方がいたとは……!!)


 【真世界】がどんな場所かを正確に知っているわけではないが、それでも銃器の類が【新世界】、あるいはその元になった世界特有の武器であることは既に確認済みだ。


 だから静は、この相手が遠距離攻撃を使ってくるとしても、恐らくそれは【真世界】にあった武器か、せいぜい静が持つ拳銃くらいで、以前監獄で見たような近代兵器の類を使ってくることはほぼないだろうと想定していたのだ。


 だがまさか、【新世界】誕生後に銃器をコピーしてセリザに挑み、彼女のレパートリーの中にそれらを追加してしまった人間がいようとは。


(確かにあの世界の武器さえコピーしているというのなら、それもまた厄介極まりない……)


 地上すれすれまで落下飛行で接近し、タイミングを見計らってシールドを解除し【爆道】を発動。

 足裏で法力を炸裂させる文字通りの意味で爆発的な加速でもってサブマシンガンから放たれる弾丸と、もう片方の腕から剣を用いて放たれる【斬光スキル】のそれと酷似した斬撃を背後に置き去り、回避する。


 相手がシールド破りの技を普通に使えるとあっては銃火器の類も馬鹿にできるものではない。

 弾丸自体はシールドで防御できても、それで動きが鈍ってしまえば今度はシールド破りの技によって諸共両断されることになる。


 そんな風に、近代兵器の登場に状況の悪化を感じ取っていた静は、しかし直後に見たその光景によって自身の思い違いを自覚させられることとなった。


 左手のサブマシンガンと右手の短剣、セリザが両手に握るそれらとはまた別に、もう一本別の腕がその背中から現れて、光り輝く球体のようなものを空中に放っているのを見たことによって。


「こいつが発明されたのは今から百五十年とちょっと前くらいだ。

元々あの世界には、【神造義腕】だの義足だのがたびたび出回ってはいたんだが、その時代に人間たちはそのメカニズムの一部を解明して、限定的ながらも人体の一部の機能を再現した器具を作り上げた」


 生えてくる。

 セリザの背中、その場所に開いたドレスのスリットの隙間から、あるいは足元の影、球体から放たれる光によって拡大し、付近の石壁のそれともつながって面積を増やした巨大な影の各所から、腕が、腕が腕が腕が、腕が腕が腕が腕が腕が、腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が腕が――!!


 ほとんどが人形のような、けれど一部に生身の腕のようなものさえ混じった大量の腕の群れが、その手に様々な武器を持ってセリザの影から大量に湧きだし、それらの武器を一斉に静の方へと突きつける。


 近代兵器などまだ序の口、ことと次第によっては【神造武装】すらもそれは脅威度で上回る。

 それは百五十年前に発明されて武器としての性質を帯びながら広まった、セリザと言う試練のタガを外してしまった大発明。


「これが【神杖塔】ゲームシステムの武器類担当、【神問官】セリザの試練の全貌だ。

 一応【権能】についてはもう一つ、武器の貸し出しと取り立てに関する【権能】もあるんだが、こっちについては戦闘ではまず使わないからあまり気にしなくていい」


(これは、もう――)


「……流石にここまで見せれば、嫌と言うほど理解できただろう――?」


 眼前に広がる光景、空中庭園の中心を埋め尽くす腕の群れと、それに握られ、構えられた武器の数々に、静は急ぎ手の中の武器を再び弓に変えながら、否応なく一つの結論へとたどり着く。


(――人間にどうにかできるような相手では、ありませんよ……!!)


「--アタシと言う試練は、神様に、その難易度調整をミスられた……」


 二人の思考がそれぞれの立場で一致したその瞬間、展開された武器の数々が一斉にそれぞれの性能で火を噴いて、莫大な火力による弾幕が一斉に静とその周囲に襲い掛かる。


 実に、最低でも三千年。

 人類が石器以外の武器を使い始めたころから存在し、以降誰一人として攻略できなかった難攻不落の神の試練が、静と言う一人の人間を蹂躙するべく過剰な物量(れきし)でもって襲い掛かる。


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