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第8話 公園デート

 少し肌寒い季節だが、今日みたいな天気のいい日は陽射しがポカポカ暖かくて気持ちいい。


 つまり公園デート日和だ。


「つか、鳴……荷物、多過ぎじゃない?」


「そ、そうかな!」


 僕はこの日に備えて、キャッチボールセット、バドミントンセット、フリスビーを用意した。これでも持てる範囲に抑えたつもりだ。


「そういう、衣織も!」


「そ、そうかな?」


 衣織もなかなかの大荷物だった。お弁当だけって聞いていたのだが……なんだこの大きさは。


 まさか『お重』?


 そしてしっかりアコギも持ってきている。


 確かにこの開放的な雰囲気の中で弾き語りは気持ちいいと思うが……。


 遊んでいる間の荷物が不安になる。


 まあ、来週には『織りなす音』の正式契約が控えている。


 こうやってゆっくり過ごせる機会に、色々詰め込みたくなるのが人の性だ。



 ——木陰にゴザを敷き陣取って早速キャッチボールからはじめた。


 そういえば、こうやって衣織と体をうごかして遊ぶのは初めてだ。


「ねえ鳴、ボールってどうやってにぎるの? こう?」


 どうやって握ったら、そうなるなだろうって感じのめちゃくちゃな握りだった。


「僕も詳しくはないけど、こうだと思うよ」


 僕は衣織の手をとってボールの握りを教えてあげた。衣織と付き合って半年が経とうとしているけど……まだスキンシップは緊張する。


 もし、衣織と結ばれればそれも変わるのだろうか。


 いかんいかん、昼間っからこんな場所で何を考えているんだ僕は。


「これでいいかな?」


「うんばっちりだよ! 最初は近い距離からゆっくりやろ」


「わかった!」


 全然分かってなかった。


「ぐはっ!」


 近い距離から思いっきり投げられた。


「鳴! 大丈夫?」


「う……うん平気……」


 凛に腹パンを食らった以上の衝撃だった。凛がいつも手加減してくれているのがよく分かった。


 でも、悪くない……うずくまっていると衣織が心配そうに近づいてきてくれて、お腹をサスサスしてくれたからだ。


 公園デートいいな! 体を動かすっていいな!


「衣織、僕がまず手本を見せるからそんな感じでゆっくり投げてみて」


「オッケー! 任せて!」


 そして下からそーっとボールを投げると……。


「痛っ!」


 見事におでこでヘディングした。


 もしかして衣織って……運動音痴なのか?


 何でも完璧にできるイメージだったけど……可愛いじゃないか!


 俄然テンションが上がってきた。


「大丈夫? 衣織」


 前髪を上げてボールをぶつけたところを確認すると少し赤くなっていた。


 つか……近っ!


 そして僕はつい、ぷるぷるの唇につい目がいってしまう。


 気を取直して、もっと近い距離からグローブの使い方、投げ方を教えてあげた。


 すると……ものの10分もしないうちにキャッチボールは完璧になっていた。


 コントールも僕よりいいし、スピードも速かった。


 この後、フリスビー、バドミントンと続けてやってみたが、ヘタッぴなのは最初だけで、少し練習するとびっくりするぐらい上達した。



 誰だよ……衣織のこと運動音痴なんて言ったやつは!



 運動音痴どころか、スポーツ万能じゃないか。



「体動かすって楽しいね」


 確かに楽しい。音楽中心の僕たちは、どちらかと言うとインドア派だけど……たまにこうやって体を動かすのは楽しい。


「ねえ鳴、休憩しよ」


「うん」


 ポカポカ日差しが暖かくて気持ちいいと言っていたが、体を動かすと暖かいどころか、軽く汗ばむぐらいの暑さだ。


 木陰に陣取っていてよかった。


「鳴、たまには膝枕してくれない?」


 な……なに、衣織から膝枕のリクエストが来た。


「ど、どうぞ」


 してもらうことはあっても、してあげることは初めてだ。足に思いっきり力が入ってしまった。


「ねえ……ちょっと硬い。もう少し力ぬいてくれても大丈夫だよ?」


 即座にご指摘をいただいた。


 膝枕はやる方になっても緊張してしまう。



「鳴と付き合ってもう少しで半年だね、覚えてる? 付き合った時のこと」


 もちろん覚えている。


「うん、覚えてるよ」


「ね、言ってくれない? あの時の言葉」


 え……あの時の言葉って確か。


「僕は衣織が好きだ」


「私もよ」


 そう言うと、衣織は身を起こし僕の唇をうばった。


 外なのに大胆だ……。


 今、体が火照っているのは運動のせいだけじゃない。


 心が暖かいからだ。


 幸せを感じる僕だった。


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