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第15話 眠れぬ夜

 衣織が我が家にやってきた初日。


 脱衣所で偶然遭遇したり、お風呂に後から入ってきたり、いつものようなラッキースケベイベントは発生しなかった。


 そしてあっという間に就寝の時を迎えた。


 なんだろう。


 合宿なんかもあったので、衣織と一つ屋根の下で過ごすのははじめてではない。


 でも……今日はめちゃくちゃ緊張するというか意識してしまう。


 隣の部屋に衣織がいると思っただけで何か期待してしまうのだった。



 プラトニックと釘を刺されたものの、同棲の目的は僕と衣織の中をもっと深めるためだ。


 そういう裏事情を知っているから、もっとイチャイチャしなきゃって、つい意識してしまう。



 ……眠れない。



「コンコン」僕が寝付けずにいたらドアをノックする音が聞こえた。


 もしかしてこれは!


 はやる気持ちを抑えつつ、ドアを開けて出迎えると恥かしそうな表情をした衣織が立っていた。


 俄然期待に胸が膨らむ。


「どうしたの? 眠れない?」


「う……うん、部屋入っていい?」


「もちろん、どうぞ」


 僕はベッドに座り、その隣をポンとたたいた。そして衣織が僕の隣にちょこんと座った。


「なんかパパの言葉を妙に意識しちゃって」


「衣織も?」


「うん、鳴みたいに目がギラギラするほどじゃないけど」


「え……僕そんな目してた?」


「してたわよ、恋人同士なのに身の危険を感じちゃったもん」


「だは……」


 だからプラトニックと釘を刺されたのか……ちょっと反省しないと。


「ねえ鳴」


「うん?」


「添い寝してよ」


 え……そ……添い寝……ってことは期待していいんだよね!


「う、うん」


「でも、今日はエッチなことは無しだからね」


 したり顔の衣織。いつものように心が読まれたのかもしれない。


「はい……」


 僕は電気を消した。


 衣織が先にベッドに入っていた。こんなにも緊張して自分のベッドに入るのは初めてだ。


 ベッドの中で2人で向き合った。


 近い……こんなことなら後5回ぐらい歯磨きしておけばよかった。


「なにかお話してよ?」


 お話……唐突にお話って言われても、話題が。


「何かお題くれない?」


「そうね……普通なら初恋とかなんだろうけど、鳴の初恋事情は全部知ってるもんね」


「あは……そうだね、衣織の初恋は?」


「あっ、酷い、私の話聞いてなかったの?」


 え……衣織とそんな話したことあったっけ?


「私の初恋は鳴よ」


「え」


「前にはじめてって話たでしょ?」


 ……そうだったっけ。


「覚えてないの? 酷いなぁ」


「ごめん」


「いいのよ……初恋は実らないってよくいうけど、私の初恋は実ったしね」


 初恋が実らなかった僕にそんなセリフを……若干怒っているのかもしれない。


「そういえば鳴、鳥坂を推すとき、自分でも何本か動画編集してみたって言ってたじゃない?」


「あ、そうだね」


「それって、やっぱり音楽関係?」


「うん、そうだよギターの自撮り動画、『織りなす音』がメジャーデビューを目指すことになってからはじめたんだ」


「へー、SNSに投げたりしてるの?」


「してるよ、衣織僕のことフォローしてなかったっけ?」


「あは……私全然みてないから」


「知ってた」


「あっ、知っててそんなこと言うなんて意地悪い!」


「ごめんね」


 その後も僕たちは他愛のない会話を繰り返し、少し熱めのおやすみのキスをして、眠りにつこうしていた。


 だが、事件はその後に起こった。


「ガチャ」


 寝ぼけた凛が、いつものように僕の部屋に侵入してきたのだ。


 まっすぐにベッドに向かってくる凛。


 そしておもむろに、僕たちのかぶる布団を剥ぎ、衣織と僕の間に割って入った。


 そして、いつも僕に絡みつくように衣織に絡みついたのだ。


「り、り、り、凛ちゃん?!」


 珍しく狼狽うろたえる衣織。


 そして衣織が抵抗すればするほど、凛が衣織に絡みつく。


 ラフな2人の部屋着がはだけて目のやり場に困る。


 これはこれで……なんかいい。


 いやいやいや、バカなことを考えている場合じゃない。


 こんなにも刺激の強いものが目に焼き付いたら、2人を見るたびに変な想像をしてしまう。


 僕は、慌てて凛を引き剥がそうとした。


「おい、凛ってば」


「うるさい!」


 寝ぼけた凛の裏拳が綺麗に僕の顎先をかすめ、僕はそのままノックアウトされた。


 気がついたら、僕はベッドの下で、衣織は凛に羽交い締めにされ悶えていた。


 翌朝、さすがの凛も衣織に平謝りだった。



 そして、僕の部屋に鍵の導入が決まった。



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