65.お嬢様と平和な世界
西の大国、セーレスト神聖法国。
東の大国、アイゼンラット帝国。
二つの国との戦い……ううん。
つまり、えーと。
ゲームではラスボスだった暗黒竜を倒してから、ちょうど一年後。
ファルシア王国の王都ファランはお祝いムードで包まれていた。
各地の貴族はもちろん、行商人や離れた街や村の人たちまで押しかけて。
王都はすごい人であふれかえっている。
私は、王宮の窓から街の景色を眺めていた。
王都の人達がお祭り好きっていうのもあるんだけど。
賑やかな街を見ていると、平和になったんだなぁって実感が沸いてくる。
窓から音楽にのってあたたかい風が吹きこんでくる。
……気持ちいいなぁ。
「平和だね~うん。みんな楽しそう」
「まぁ、世界中から魔物が消えて、一年経ちましたからね」
うわぁ、びっくりした。
窓に頬杖をついてぼーっとしていたら。
横から、赤髪の美少女が声をかけてきた。
薄いピンクのドレスに、白いケープを羽織っている。
ゆるい三つ編みをアレンジしたツインテールがドレスの色に合っていて。
ものすごく可愛い。
キナコってホントに美人だよね。
顔の作りは同じはずなんだけどなぁ。
「お姉ちゃん見つけた!」
「なんだ、こんなところにいたんだね。みんな待っているよ」
真っ赤な華やかなドレスを着たアリアちゃんと、王族の衣装に身を包んだガトーくん。
よくみたら、仲良く手を繋いでいる。
私の視線に気づいたアリアちゃんが、慌てて手を振り払った。
ふふふ。
そんなことをしても、お姉ちゃんは知ってるんだからね。
「ち、ちがうからね。彼とは婚約者だから……しかたなく……」
そんなこと言って。
言い訳をする顔が真っ赤だよね。
中学の頃に、そんな表情をしてた時があったけど。
うん、それ以来じゃないかな。
「しかたなくなのかぁ、手を繋いで欲しいっていったのは……」
「ダメ! それ以上言わないで!」
アリアちゃんが、ガトーくんの口をふさぐ。
もう耳まで真っ赤になってる。
ホントにこの二人、仲良しなんだから。
ファルシア王国と第二王子と、アイゼンラット帝国の第一皇女。
アリアは、降伏と友好の証としてガトーくんと婚約することになった。
政略結婚だし、人質みたいなものなんだけど。
この国にきてからずっとラブラブなんだよね。
特に……アリアちゃん……由衣が。
いつのまに仲良くなったんだろう。
ゲームでは推しキャラじゃなかったよね?
「クレナちゃん、そろそろ行かないとまずいんじゃないかな?」
「みんな、お姉ちゃんを探してたんだから!」
「あ、うん。そうだよね」
ホントは、もう少し街の様子を見ていたかったんだけどな。
きっと。
この景色のことを一生忘れないと思うから。
「お姉ちゃん、こんなところにいたんですか! 早くいきますよ!」
薄い水色のロングドレスを着たナナミちゃんが慌てて部屋に飛び込んでくる。
やっぱり可愛いな。
本物の彼女は、ゲームより何千倍も魅力的。
本当にヒロインって感じ。
「ちょっと……勝手に人のお姉ちゃんをお姉ちゃん呼ばわりしないでくれませんか?」
「あなたこそ、こっちの世界では姉妹じゃないでしょ!」
あはは。
この二人、仲悪そうにしてるけど。
時々二人でこっそり街に出かけてるの、知ってるんだからね。
私は、ナナミちゃんと由衣に手を引かれながら、みんなのいる控室に向かった。
**********
「ちょっとアンタ、遅いわよ!」
部屋に入ると、ジェラちゃんが腰に手を当てて待ち構えていた。
ラベンダーのような長い紫色の髪が、白と金の王族の衣装がに映えて、すごく似合っている。
「ゴメン、ちょっと窓から街を眺めてたら時間が経っちゃって」
「はぁ、アンタね……取りやめるなら今のうちよ?」
「あはは、まさかそんなことしないよ」
「いいけど。アンタたちよく納得したわよね」
うーん。
納得したというか。
それがこの国にとっても、私たちにとっても一番良いと思ったから。
「クレナ……」
控室の別の扉が開いて。
白と金の衣装に赤いマントを羽織ったシュトレ様が入ってきた。
ゲームの公式ページに掲載されていた……シュトレ様の結婚衣装だ。
まさか本物が見れるなんて。
「シュトレ様、すごく……素敵です」
この国の王家では、婚約式が前世でいう結婚式みたいなものなんだけど。
今からはじまるのは。
正式な結婚式。
これは。
国民とこの国を守護している竜に、王族に正式に加わった事を報告する場なんだって。
守護してるドラゴンって竜王の事だから……キナコに報告することになるよね?
考えてみたら、変なの。
「おまたせしました、シュトレ様、クレナちゃん!」
王子の後ろから、天使のような声が響く。
白に金色の模様が入った王族のドレス。
美しく輝く金色の髪は、編み込んでアップにしている。
頭の上にティアラをつけた美少女は、にっこりと微笑んだ。
なんて……可愛いんだろう。
彼女は今日、本物のお姫様……王太子妃になる。
「みんな揃ったね、それじゃあ、テラスに向かおうか」
「みなさんお待ちですよ」
国王のグリール様と、王妃のトルテ様が手招きしている。
周囲には左右に並んだ護衛の騎士のみなさま。
外からは、大きな歓声が聞こえてくる。
「さぁ、いこう」
シュトレ様は両手を差し出して。
リリーちゃんと。
……私の手をとった。
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