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転生したら乙女ゲームの伯爵令嬢だったので ~ドラゴンと一緒に世界を救いたいと思います!~  作者: 柚子猫
星降る世界とお嬢様編

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61.お嬢様と少女の記憶

 ゆっくりと目をあけると。

 そこは何もない真っ白な空間が広がっていた。


 ……え?

 ……もしかして。


 世界が壊れちゃったの?

 守れなかったの?


 身体に力がはいらなくなって、思わずその場で座り込んだ。

 

 ゴメン……シュトレ様。

 約束守れなかったよ……。

 

 目の前に映る真っ白な空間が、涙で滲んでくる。

 

 不思議だね。

 涙でみえる景色のほうがキラキラと光を反射して……。

 壊れる前の世界に少しだけ似ているなんて……。


  

「大丈夫だよ、心配しないで」


 突然、隣から優しい声が響く。


「え?」


 思わず声のした方向をみて息をのむ。

 

 金色の美しい髪。

 可愛らしく整った顔。

 雪のように真っ白な肌に大きな青い瞳。


 まるで少女漫画の主人公のような美少女がそこにいた。


「やぁ。久しぶり、なのかな? うーん。キミからみて僕はどうなんだろう?」


 彼女は女性にしてはハスキーな声で話しかけてくる。


 えーと。

 あれ?


 どこかで見たことある気がする。

 何処でだろう……。


「こうやってみると信じられないな。本当に君が転生しているなんて。転生しても可愛いね」


 この人は……なんて幸せそうな笑顔を私に向けてくるんだろう。

 まるで私まで幸せになるような、不思議な気持ち。


 胸の鼓動が急に早くなる気がした。

 でもなぜだか、それは。

 私だけど……私じゃない誰かの想いみたいで。


「えーと、アナタは?」

「えー、覚えてないの? ショックだなぁ。愛を誓い合った仲なのに」


 それまでキラキラ輝いていた青い瞳が、わずかに曇った気がした。


 愛を誓い合ったって?

 えええええ!?


 これって、絶対。

 私の覚えてない記憶の中の話だ。

 

 異世界に飛ばされて……。

 暗黒竜を仲間と倒して……。

 キナコと魔物を倒す旅に出かけて……。


 それから、えーとえーと。


 ……あれ?

 ……仲間?  


 わかった!

 この人女性じゃなくて。

 初代星乙女の時の……王子様だ!


 書物とか、私のぼんやりとした記憶では見たことあったけど。

 実際に本人を前にしたら、誰だか分からなかったよ。

 


「その顔は、思い出してくれたのかな?」

「思い出したというか……なんだかテレビや本で見たことある感覚なんですけど」


 私の記憶なのに。

 私の記憶じゃないような。


「ああ、そういうことか」


 彼は私の言葉に、嬉しそうに笑う。


「そこまで覚えててくれれば十分だよ。うん、このままだったら僕不審者だったからさ」


 なんだか、よく笑う人だなぁ。

 笑顔が少しだけ……シュトレ様に似てる気がする。


 ……シュトレ様。

 ……って! そうだ!

 そうだよ!


「あの! 世界ってどうなったんですか!」


 私は慌てて、目の前の王子様……えーと名前は確か。

 マロン……マロン王子だ!


 王子は返事の代わりに、私の頬に流れていた涙をそっと指で拭った。


「ごめんね、泣かせるつもりはなかったんだ」

「マロン様?」

「しーっ。その答えはね、もう一人の君が教えてくれるはずだから」


 マロン王子は、イタズラそうな微笑みを浮かべたまま。

 私の唇に人差し指を当ててきた。



**********


 真っ白な空間に、突然金色の光が現れた。


 眩しくてよく見えないけど……。

 光の中にいるのは女性に見える。


 うそ……。

 もしかして、かみたちゃん!?

 よかった……無事だったんだ。

 

 私は慌てて、金色の光に駆け寄っていく。

 足元がまるでクッションのようにふわふわしていて走りづらい。


 彼女に近づいた瞬間、足を取られて転んでしまった。

 

 うわぁ、これまずい!

 ぶつかる!

 あわてて伸ばした私の腕を、マロン王子がつかんでくれた。


 ……え?


 目の前で起きていたことが、一瞬理解できなかった。

 今、金色の女性と確実にぶつかったはずなのに。

 

 ……身体がすり抜けている。

 ……どういうこと?


 そっと、金色の女性に手をのばしてみたら。

 やっぱり、触ることもつかむことも出来ない。


 やがて。

 光が弱くなってきて、彼女の姿が見えるようになってきた。


 蜂蜜のような美しい金色の髪。

 透き通るような白い肌。

 青く澄んだ瞳。


 私が転生した時に会った、女神様だ!


 ――これってどういうこと?

 

「あはは、驚いた? ここはね、過去の記憶の中なんだ」


 過去の記憶?


「うーん。姿は変わっても、表情までは変わってないんだね。安心したよ」


 マロン王子は、愛しい人を見ているような視線を私に向けると。

 ハテナがたくさん浮かんでいる頭を優しくなでてきた。 


「ほら、もうすぐ始まると思うよ」

「……はじまる?」


 王子が白い空間の一点を指さす。

 真っ白な上空に、少しづつ人の影のようなものが現れた。


 膝を抱えて丸まっている少女。

 黒い柔らかそうな髪がふわふわと揺れている。


 あれって。

 ……私?


 少女は、ゆっくりと目を開けると。

 女神さまの前に降り立った。

 

「……お疲れ様でした、朱里さん。貴女はよく頑張りましたよ」

「……女神様……」


 よく見ると。

 少女の瞳は涙がいっぱい溜まっている。


「約束通り、元の世界に戻して差し上げます。願いも一つだけ叶えますよ?」

「あの……」

「はい、なんでしょう?」

「あの……!」


 彼女は、声を絞りだすように女神さまに話しかける。


「この世界は……どうなるんですか?」

「そうですね……」


 女神さまが手を広げると、目の前にいくつかの画面が映し出される。

 これって……かみたちゃんがやってたのと……同じ魔法だ。


「残念ですけど……この世界は……滅びます……」


 少女の目が大きく開かれる。

 口元を抑えながら、悲鳴のような声を上げた。

 

「どうしてですか! ちゃんと暗黒竜は倒したのに!」

「それは……人間が魔物を生み出してしまったからです……」


 彼女は画面にダンジョンの入り口と、満天の星空を映し出す。


「この世界の魔力は、星の輝きと……ダンジョンの魔物達との循環でバランスを保っていました」

「それは……知っています」

「ですが。人間は残念なことに、ダンジョンにいた魔物を魔術で外でも活動できるように改良してしまいました」


 うそ……知らなかった。


 ダンジョンの魔物って外には絶対に出ないし、倒すと魔法石を生み出して消えるけど。

 ダンジョンの外にいる魔物は、倒しても肉体が残るし魔法石も生み出さない。


 同じ魔物のはずなのに。

 なんで違うのか、ずっと不思議だったんだけど。


 外にいる魔物って全部……人間が生み出したんだ……。


「ダンジョンの魔物は一定の数しか湧きませんし、倒すのも倒されるのも冒険者ですが……」


 女神さまが別の映像を白い空間に映し出す。

 それは……魔物が村々を襲っている風景。


 なにこれ……。

 あまりのひどさに、思わず目を覆う。


「帝国が生み出してしまった魔物は……より強い影の力で……罪もない人々を襲います」

「それも知っています! だから私は全ての魔物を倒そうと!」


「それではダメなのです!」

 

 女神さまは悲しそうに目を伏せた。


「憎しみで魔物を倒し、倒されたものの気持ちは闇を増殖させます……あなたのパートナーがそうであったように……」

      

 それって多分。

 黒い影に侵されてしまった竜王のことだよね。


「それじゃあ、どうすれば!」

「残念ですけど……もうどうにも出来ないのです。この世界は……放棄します」


「「そんなの! そんなこと出来ない!」」


 女神様の言葉に。

 おもわず声を上げてしまった。


 私の声と、少女の声が重なる。


「ああは、転生したキミも、同じことを言うんだね」


 隣にいたマロン王子が優しく微笑みかけてくる。

 だって……そんなの。

 放棄された世界はどうなるのさ……。


「泣かないでください……貴女は頑張りましたよ。結果は残念でしたけど、願い事は約束通り叶えますので」


 女神さまは少女に近づくと、優しく抱きしめた。

 

 これが……私の思い出せなかった過去。

 かみたちゃんの記憶。


 こんなことがあったなんて。


 しばらく女神さまの胸で泣いていた少女は、やがて決意したように顔をあげた。


「……女神さま、私のお願いを言ってもいいですか」

「はい、どうぞ。元の世界に戻ったら記憶は消えてしましますけど、ここでのお願いは有効ですよ」


 少女は涙でいっぱいの目で女神さまを見つめると。

 太陽のような微笑みで願いを伝えた。


「……私の想いをこの場所に留めて……もう一度だけ世界を救うチャンスをください!」


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