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転生したら乙女ゲームの伯爵令嬢だったので ~ドラゴンと一緒に世界を救いたいと思います!~  作者: 柚子猫
星降る世界とお嬢様編

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58.お嬢様とこの世界の矛盾

 かみたちゃんは、私の目の前で悲しそうに笑う。

 

 ……どうしてそんな表情をするの?

 ……私の思い出せてない記憶が関係してるんだよね?


「ねぇ、女神さまって、前にこの世界に来た時に会った神様のことだよね?」

「うん。そっか、少しは覚えてるんだね」


 最初にこの世界に来た時のことを思い出す。


 ――確か。


 放課後に校舎の裏側に向かってたら、いきなり地面が光りだして。

 気が付いたら、何もない真っ白な空間に飛ばされていた。


 そのあと……えーと。

 

 金色の長い髪。

 透き通るような白い肌。

 青く澄んだ瞳。

 まるでその場に花が咲いたような華やかな女性が立ってたんだよね。


 彼女は、自分が女神であることと。

 私が転移者であること。

 そして、世界を救うために召喚されたことを教えてくれた。


 あれ? でも……。

 何から世界を救って欲しいっていわれたんだっけ?


 ……あの邪悪な暗黒竜とか影じゃなかったと思うんだよね。


 うーん。

 すごく大事なことだったんだけど……。

 思い出せない……。


 でも。

 でもね。


 これだけははっきりと言えるから。


「女神さまは、この世界を救う為に私を召喚したんだよね? 見捨ててなんていないじゃない!」


 かみたちゃんは、私の言葉を聞くと。

 口元を手で押さえて寂しそうに目を伏せた。


「んー。そっか覚えてないんだよね。だって……」


 彼女は首を傾けて寂しそうに微笑んだ。


「……その記憶は私が持ってるんだから」



 どういうことなんだろう。


 異世界に転移して、暗黒竜を倒して……残った魔物を倒す旅に出て……。

 その後……。

 女神さまはどうなったの?


「かみたちゃん、お願い! ちゃんと教えて! 女神さまと何があったの?」


「なにもなかったわ。全て人間が……この世界にいる汚い人間たちが……」


 かみたちゃんの様子がおかしい。

 なんだか、だんだんしゃべり方が変わってきて。

  

 大きな瞳が……赤く輝き始めている。

 

「か、かみたちゃん? 大丈夫?」


「近寄らないで!」


 彼女の手前に、黒い壁が出現した。



**********


「許せない……やっぱり許せないよ……私は……守ろうとしたのに……」

「か、かみたちゃん?」

「この世界の人間たちは、私たちを利用するだけ利用して……自分たちの欲の為に……!」


 かみたちゃんの声は。

 まるで、心の底から叫んでいる悲鳴のように聞こえた。

 

 きっとそれは。

 私の記憶にもある……初代星乙女の最後。


 世界の為に……ううん、大好きだった王子様の為に。

 最後まで戦ったのに。

 でも最後には……王国に裏切られて……。

 

「滅ぼす……。そうだ、滅ぼしちゃえばいいんだ、こんな世界! あの人も、もういないんだから!」

「……ご主人様、逃げるよ! アカリちゃんはもう!」

「あはは、滅びちゃえ! こんな世界!」


 かみたちゃんは、辺り一面に黒い炎の魔法を放った。


 ――空も地面も。


 魔法が当たった場所から、大きな亀裂が入って……砕けていく。


「アカリちゃんは……影に取り込まれました……ああなるのわかってたくせに……」


 キナコが、黒い炎を避けながら、悲しい声でつぶやいた。

 瞳には涙が溜まっている。


「……ホントに最後までアカリちゃんらしいのだ」


 だいふくもちは、飛んでくる炎をブレスで撃ち落としている。

 ちょっと待ってよ、最後って……。

 だって……そんなの。


「ねぇ、由衣の時のように、かみたちゃんを助けられない?!」

「……無理ですよ、よく見てください」


 キナコが指さす先に映るかみたちゃんの姿は。

 全身が黒く輝いていて……。

 巨大な羽を羽ばたかせながら、周囲に魔法を打ち続けている。


 彼女の周囲から、世界が壊れて……なにもない白い空間が広がっていくのが見えた。


 

「ねぇ、ご主人様……封印しましょう……今ならまだ……」

「封印すれば、かみたちゃんは助かるの?」


 私の問いかけに、キナコは大きく首を振る。


「だったら……!」

「それしかないんです! わかりませんか?……なんでアカリちゃんがあんなことをしたのか」

「……でも!」


 ――わかってる、わかってるんだってば。

 ――だって、私の……自分のことだから。


 初代星乙女の話を聞いた時から、ずっと不思議だった。

 この世界の影は……魔物を憎む気持ちから生まれる。

 だから。

 普通は魔物を倒せば平和になるはずなのに……。

 

 倒すたびに影が強くなって……また魔物が生まれてくる。

 

 こんなの、いつまでたっても世界に平和なんて訪れない!


 だからかみたちゃんは……。



「世界中の魔物をすべて集めて……封印する為……だよね?」

「気づいてたんですね……」

「だけど! そんなことをしたら、かみたちゃんが……」

「ご主人様!!」


 キナコは、私の言葉に応える代わりに。

 砦の広場にある大きな魔法石を指さした。


「大きな砦には、侵入防止のために結界が張られています。それを作り出していたのがあの魔法石です」


 巨大な魔法石は、闇に包まれた砦の中でもキラキラと輝きを放っている。

 眩しく光る優しい光は。

 まるで最後の希望のよう見えた。


「あの魔法石の中に……アカリちゃんを……ううん、あの闇そのものを封印しましょう」

「それに、封印って言われても、私やり方なんて」


「大丈夫です。星乙女の力が教えてくれます。お願い! ご主人様! ……アカリちゃん……を……」


 キナコのお願いは、涙で最後は声にならなくなっていた。


 ……わかったよ、キナコ。

 ……必ず助けるから。


 世界も。

 そして、かみたちゃんも!


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