表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら乙女ゲームの伯爵令嬢だったので ~ドラゴンと一緒に世界を救いたいと思います!~  作者: 柚子猫
星降る世界とお嬢様編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

184/201

50.お嬢様と世界を飲み込む者

 空に広がった黒い影は、滲むように広がっていき。

 周囲が闇に包まれていく。


 砦の照明の光すら。

 吸い込まれていくように消えていく。


「消えろ! 消えろ! 世界のすべてを無にしてやる!」


 暗黒竜から聞こえてくる声は、もう由衣のものではなくて。

 雷のような激しい怒りの響きで。


 恐怖の感情が、指の先まで伝わっていくの感じた。


 なにあれ……。

 なにあれ……。


 暗黒竜がいたはずの場所にあるのは、黒い巨大な球体。

 丸い塊は……不気味な光を放ちながら。

 星と、そして周囲の魔物を吸収していく。


 黒い光なんて……こんなの初めて見た……。

 なんて禍々しい輝きなんだろう……。



**********


「ダメですわ、わたくしの魔法の木々もすべて吸収されています!」

「私の氷の壁もよ……なんなのあれ……」

「うーん。ゲームの展開とはだいぶ違うみたいだね」


 三人の放つ攻撃魔法は、黒い球体に届く前に。

 霧のように拡散して、吸収されていく。


「お姉ちゃん。なんだか体中の魔力が……」


 ナナミちゃんを覆っていたハートの数がどんどん減っていく。


 まさか。

 あの黒い球体。


 ――私たちの魔力まで吸収してるの?!


 どんどん目の前の景色が大きくゆがんで。

 立っていられない。


 強烈な魔力不足によるめまいに、意識を失いそうになる。

  

「クレナ!」

 

 あたたかい何かに、やさしく抱き抱えられる感覚がした。

 ぼんやりと見える景色に、金色の美しい髪が見える。


「まずいです、ご主人様。ストップの魔法が……」


 慌ててかけよってくる大きな赤いドラゴンが瞳に映った瞬間。


 砦のざわめきが……周囲の音が戻ってきた。



「うふふ、これで形勢逆転ね、お姫様?」


 激しく魔法と武器のぶつかり合う音が、砦に響き渡る。

 再び動き始めた魔人たちが、暴れているの?

 視界がぼやけて……良く見えない。


「竜姫様おさがりください。ここは我らが!」

「王子と姫を守れ!」


「無駄よ……大人しく倒されなさい!」

「ごめんねー! やっぱり降参取り消しでー!」


 近くで大きな戦闘音と……。

 人が倒れていく音が聞こえる……。

 

「さぁ、王子。おとなしくお姫様を引き渡してもらえます?」

「ふざけるな! クレナは……渡さない!」


 シュトレ様が……危ないの?

 ダメだ……。

 目を開けると景色が大きくゆがんで、

 意識が集中できない……。

 

 (お母さま……)


 鈴の音のような、可愛らしい声が意識の奥に響いてくる。

 なんだろう……この声。


 (お母さま……お父さまを助けて!)


 もしかして。

 パルフェちゃんなの?

 ゴメンね……情けないお母さんで。

 でももう魔力が……。


 (わたしの魔力をお母さまにあげる。だから……お願い!)


 まるで、腕の中に愛おしい誰かを抱きしめたような感覚がして。

 お日様のような優しい香りに包まれていく。


 胸の奥から、光があふれてくるような強い力が流れてきた。


 桃色の柔らかそうな長い髪。

 青空のように澄んだ瞳をした女の子が、一瞬頭に浮かぶ。


「パルフェちゃん!」



 ――目を開けると。


 シュトレ王子が私を庇うように抱きしめていて。

 周囲を魔人達が取り囲んでいた。


 その奥では。


 リリーちゃん。

 ジェラちゃん。

 ガトーくん。

 ナナミちゃんが……地面に倒れている。


 うそ……。

 そんな……。



「なにも、私たちも敵対したいわけじゃないのよ? おとなしく捕まってよね」


 サキさんが妖艶な動作で髪をかき上げると。

 私たちに手を伸ばしてきた。


「……ふざけるな。クレナはオレが必ず……」


 シュトレ王子は、その手をはねのけると……。

 ずるりと地面に崩れ落ちた。


「シュトレ様!」


 多分……王子は。

 庇っている時にずっと攻撃をうけてくれれたんだ。

 

 私は慌てて、王子に回復魔法を唱える。


「なに。まだ動けたの? それにその魔力……はぁ、さすが主人公側よね……」


 サキさんは、周囲の魔人が攻撃しようとしたのを制止して。

 優しい声で話しかけてきた。 


「転生者同士仲良くしましょうよ? 暗黒竜の力と魔人、そして貴女たちが手を組めば……」


 私は大きく首をふると。

 空に浮かぶ黒い球体を指さした。


 それは……不気味な輝きを放ちながら、砦の上空を覆うほど巨大になっている。


「……あれが本当に……由衣が望んていたことなの?」

「そうよ。アリアちゃんなら、暗黒竜を制御できるから……」

「あれのどこが、制御できてるのよ!!」


 私の叫びに。

 取り囲んでいた魔人たちが動揺する。


「ちゃんと見て! このままじゃ、世界のすべてを飲み込んじゃうんだよ?」


 乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』のバッドエンドは。

 ヒロインと攻略対象が、暗黒竜に負けて。

 竜は世界中の星を食べつくしたあと……そこにいる生き物ごと……世界そのものを吸収して。

 すべてが無になって終了する。


 乙女ゲームなのに、なんて最悪なエンドなんだろうって。

 妹と……由衣とよく話してたけど。


 今、目の前で起きてる現実は……。

 私の知っているラスイベよりさらにひどい状況で……。


 このままじゃ本当に世界が……。


「……世界を飲みこむなんて……そんなことあるわけないじゃない!」

 

 サキさんは大きな声で叫ぶと。

 私に掴みかかろうとする。


 その手を……シュトレ王子が振り払った。

 

「クレナ……行こう。あの黒い影を倒そう……」

「……シュトレ様!」


 目を覚ました王子は、私の両手を握る。


 私たちの周囲を、大量の星が包み込んだ。

 サキさんも取り囲んでいた魔人たちも、星の力で吹き飛ばされる。


 ――星乙女の最強魔法。

 ――恋する力。

 


「アンタたちだけにカッコいいとこ取られるのは……許せないわ……きょ、協力させなさいよね!」


 気が付くとジェラちゃんが起き上がっていて。

 私たちに近づくと、そっと手を重ねてきた。


「お姉ちゃん……私も戦うよ」

「……クレナちゃん、兄上。最後くらい、かっこつけさせてよ」


 ナナミちゃんも。

 ガトーくんも。

 いつのまにか星の輪の中に入ってきて。

 両手を差し出だしてくる。


「その星の力……あたたかくて……傷が回復していきますわ……」


 リリーちゃんが私の横にそっと寄り添うように近づくと。

 みんなの手の上に、両手を重ねてきた。



 私たちの周囲には、今までで一番たくさんのほしがきらめいて。

 一つ一つにみんなの思い出が映し出される。


 それは、子供の頃からの……大好きな仲間と過ごした。

 大切な。

 大切な思い出たち……。


 私はみんなの顔を見渡すと。

 出来る限りの笑顔で答えた。



「行こう……この世界を……絶対に救うんだ!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ