47.お嬢様と人を想う気持ち
私たちは両手を握ったまま、あたたかい光に包まれている。
よく見ると。
周囲の星はただ輝いてるわけじゃなくて。
一つ一つがいろんな画像を映し出していた。
――それは。
子供の頃からの二人の思い出。
初めての私のお誕生日パーティー。
うちの庭園で偶然出会って。
いきなりこの時に告白されたんだんだよね。
その後。
王子様のお誕生日パーティーに参加して。
一緒にお城の宮中庭園から流れ星を見たり。
そうそう。
地下で宗教団体で影竜に襲われて。
私の事を助けてくれて。
……私はこの時から……その腕に抱きしめられた時から。
どうしようもなく王子に魅かれていったんだ。
彼は乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』では、星乙女と結ばれる運命の『攻略対象』だったから。
ゲームのように。
ヒロインと結ばれて幸せになってほしかったんだけど。
何度も、一緒に出掛けて。
魔法学校では一緒に生徒会で活動して。
初めての舞踏会で一緒にダンスをして。
彼の好意に、笑顔に、夢を語る姿に。
諦めてた想いがおさえられなくて……。
私たちの目の前で光る星が、空中庭園を映し出す。
庭園にいるのは、一組の男女。
桃色の少女が、金髪の青年に話しかけた後。
真っ赤な顔でうずくまる。
ちょっと。
これって!
……私の告白シーンだよね!!
「クレナ……」
「シュトレさま~……」
横にいるシュトレ王子が、真っ赤な顔で私を見つめている。
私もすごく……恥ずかしい。
泣きそうなんですけど!
なんなのこれ。
なにかの罰ゲームなの?
私たちは、たくさんの星に包まれたまま、暗黒竜に向かって突撃していく。
身動きの取れない暗黒竜は。
攻撃をよけることが出来ずに、身体に大きな穴が開いた。
「うわぁ、さすがですねー。どんどんやっちゃってくださいー」
振り向くと。
黒髪の少女が嬉しそうにジャンプしながら応援している。
かみたちゃんだ!
「かみたちゃん! この魔法すごいのはわかったから、星の映像って止められないの!」
「無理ですよー。二人の一つ一つの思い出が星になって、影を消す力になってるんですからー!」
言われてみれば。
暗黒竜は、私たちを取り巻く星に当たった場所から、まるで霞のように消えてるように見える。
――スゴイ魔法なんだけど。
――そうなんだけど。
これって。
今までで一番の公開告白じゃない!!
確かに、ゲームだと。
好感度が最高状態の二人の合体技の時に、星のエフェクトが出てたけど。
……出てたけど。
現実だとこんなに恥ずかしい魔法だったなんて!
ふと、目の前の星に視線を映すと。
しあわせそうにテーブルを囲む、シュトレ様と私。
そして……
小さい頃の二人にそっくりな。
桃色の女の子と金髪の男の子が写っていた。
女の子は満面の笑みで、私の膝に飛び乗って甘えている。
これってまさか。
未来の私たち……?
その星は強く輝くと、暗黒竜の体を次々に消滅させていく。
「驚きました? これがお互いの好感度が最高な状態でだけ使える、星乙女の最強魔法ですよー」
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<<リリアナ目線>>
クレナちゃんは。
まるで流れ星の一部になったように光の軌道を描いて飛び続けながら。
暗黒竜の体にどんどん大きな穴を開けていく。
「ちょっと、二人で倒せちゃうなら、私たちの特訓はなんだったのよ!」
「あれだけ見せつけられると……ちょっと……」
ジェラ様とガトー様が、二人の魔人をけん制しながら抗議している。
気持ちは十分にわかりますわ。
わかりますけど。
でも……。
星々がきらめきながら、クレナちゃんと王子の思い出を映し出している。
映像のクレナちゃんは……なんて幸せそうに笑ってるんだろう。
胸の奥できしむような音がした。
……知ってますわ。
……わかってますわ。
どれだけ、クレナちゃんが王子の事を好きだったのか。
どれだけ、シュトレ様がクレナちゃんを大事にしてきたのか。
ずっとずっと近くにいましたから。
「ずるい。私もお姉ちゃんと必殺技使いたいです……」
近くで抗議しているナナミちゃんの口に優しく指を当てる。
「……だめですわよ。お二人の邪魔をしては」
――星乙女の魔法は、愛の告白。
本人が気づいてるかちょっと不安ですけど。
やっぱり
わたくしたちへの想いと……シュトレ様への愛は違うのですね。
お二人をこれ以上見ていられなくて。
思わずうつむいた私に、かみたちゃんがゆっくり近づいてきた。
「……つらい思いをさせてしまいましたねー」
「つらい思い……ですか?」
「星乙女の力を使えばどうなるのか……わかっていましたからー」
「……それで、あの白い空間では使わせなかったんですね?」
わたくしの問い合わせに、悲しそうな瞳で頷いた。
……きっとこの人は。
クレナちゃんの想いを整理させるために。
そして、私たちに教えるために。
……最後の特訓をしたのですわね。
なんて残酷なんだろう。
でも……私の大好きな親友は……優しすぎて。
きっと誰も選べなかったから。
だから……。
「勝手なお願いですけど。それでも、あの子の近くにいてもらえますか?」
かみたちゃんは。
優しくわたくしを抱きしめてきた。
そんなの。
あたりまですわ。
あたりまえですけど……。
わたくしは黒髪の少女の腕の中で泣き崩れた。
子供の頃から。
出会ったときからずっとずっと。
大好きな親友クレナちゃん。
私は……貴女の幸せが……一番大切ですわ。
だから。
この想いはずっとずっと大切に。
宝箱にしまっておこう。
今度こそ鍵をかけて。
これ以上あふれださないように。




