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転生したら乙女ゲームの伯爵令嬢だったので ~ドラゴンと一緒に世界を救いたいと思います!~  作者: 柚子猫
星降る世界とお嬢様編

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45.お嬢様と暗黒竜

 真っ白な空間に。

 見たことのないような大樹が、空に向けて大きく枝を伸ばしている。

 幹も葉も金色に輝いていて。

 まるで、おとぎの国にいるみたい。 


「嬉しい……大好きですわ、クレナちゃん」


 リリーちゃんは、頬をぴったりつけてすりよせてくる。

 頬が少し濡れているのは。

 彼女の目から涙が零れ落ちているから。



 ゲームでは気づかなかったけど。


 ――きっと星乙女の魔法は。

 

 言葉で伝えるよりもずっとずっと。

 大切な人へ想いを伝えることが出来るんだね。


「ちょっと、もう魔法は終わったんだから離れなさいよ!」

「わ、私だってお姉ちゃんと一緒に魔法使えたんだから……えへへ……」

「これからは兄上にも遠慮しないから。覚悟しててね、クレナちゃん!」


 ジェラちゃん、ナナミちゃん、ガトーくんが。

 少し興奮気味に顔を近づけてくる。


 えーと。

 なんだろうこれ。


 ……まるで。


 乙女ゲームの逆ハーレムエンドに見えるんだけど……?!



**********


「それじゃあ、最後はオレの番だね」


 シュトレ王子はにっこりと微笑むと。

 周囲にいたメンバーを押しのける。


 うわぁ、背中から黒いオーラを感じるんですけど。

 目が全然笑ってない。

 

 怒ってる?

 怒ってるよね? 

 

 これ……ブラックシュトレだ。


「すぐに、その瞳にオレしか映らないようにしてあげるよ」


 私の手を取ると、甲にキスをした。

 慌てて彼を見ると。

 とりけそうな甘い表情で顔を近づけてくる。


 そんな瞳……反則だよ。

 胸がすごく苦しくなる。



「はーい特訓はここまでです。それでは早速、暗黒竜を倒しに行きましょうー!」


 かみたちゃんの終了宣言に。


 シュトレ様と私は、お互いの手を握り合ったようなポーズで固まる。


「……え? かみたちゃん?」

「……オレたちの技は?」


 私たちがなんとか口を開くと。

 

 かみたちゃんは、不思議の国のネコみたいにニタっと笑った。

 うわぁ、なにそのいたずらっ子みたいな笑顔。


「それじゃあ、出発ですー!」

「ちょっと、かみたちゃん!!」

「ちょっと待て。なんでだよ!」


 白い景色がぐにゃぐにゃと歪みはじめる。


 私はシュトレ王子の手を握ったまま。

 ゆっくりと意識が遠くなっていった。


  

**********


「どう! お姉ちゃん。すごいでしょ!」


 気が付くと。

 目の前には、得意げに腰に両手をあてている由衣と。

 巨大な黒い影……暗黒竜がいた。


 ――このシーンって。


 うん……たぶん。

 かみたちゃんに白い世界に連れて行ってもらった直後……だよね?


 あの白い空間。

 本当に時間が止まってたんだ。


「この子を使ってね。世界を支配するの。ね? 素敵でしょ?」


 由衣が自慢げに両手を広げると。

 呼応するように、暗黒竜が再び三本の首を持ち上げて。

 雷のような恐ろしい声を上げる。


「由衣、無理だよ! ゲームでも帝国はその影を制御できなかったんだから!」


 私の叫び声を聞いた彼女は頬を膨らませると。

 胸につけていたネックレス外して、大きく頭上に掲げた。


「出来るの! 女神様からもらったこのアイテムがあれば!」


 手に握っているのは。

 黒い影を帯びたような、不思議な形をしたネックレス。


 そのアクセには見覚えがあった。


「由衣、今すぐそのアクセを投げ捨てて! それ危険だから!」


 王国の間で広まったネックレス。

 地下の洞窟で影竜と会った時にも。

 イザベラちゃんと闘技場で戦った時にも。

 

 ……祈った人の魂を利用して。

 ……影の力に変えていた。


「そっか。お姉ちゃんこれの偽物をみたことあるんだよね」

「偽物って……」


 由衣は嬉しそうに私に近づいてくると。

 私の両手をぎゅっと握った。


「偽物は、これをマネして作ったの。ネックレスの力を色々実験したかったから」

「実験って……。由衣、自分が何したのかわかってるの! そのアクセのせいでたくさん被害者がいるんだよ?!」


 彼女はキョトンとした顔で私を見ると。

 また頬を膨らませる。


「お姉ちゃん、さっきから怒ってばっかり! ゲームのキャラなんてどうなってもいいじゃない!」


 由衣の怒りに反応するように。

 暗黒竜は三本の首を持ち上げると、悲鳴のような叫び声を上げた。

 地面が、ううん。

 砦全体が激しく揺さぶられる。


「リリアナ、お姉ちゃんを拘束して。後でゆっくり説得するから!」


 リリーちゃんは顔を伏せたまま。

 私の背後から抱きついてくる。


 その光景をみた由衣は、得意げにリリーちゃんを指さした。


「あはは、ほらね。お姉ちゃんが庇おうとしてるゲームキャラなんて、所詮操り人形と一緒だよ?」

「大好きですわ、クレナちゃん!」

「……え?」


 リリーちゃんの言葉に。

 由衣の顔が固まる。


「あんな大きいだけの影なんて、私たちの愛で倒せますわ!」


 ぽかんとした顔をした彼女が。

 つぶやくように尋ねる。


「……リリアナ……アンタいつから記憶が……」

「最初からお芝居ですわ。うふふ、魔法陣を確認してみたらいかがですか?」


 突然の出来事に。

 呆然と魔法陣を見つめた由衣は。

 やがて、文字の異変に気付いたみたいで。

 

 ワナワナと身体を震わせて、リリーちゃんをにらんだ。


「……リリアナ! アンタ!」

「だまされた方が悪いのですわ! 大体わたくしからクレナちゃんとの思い出を奪うなんて不可能ですわよ!」


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