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転生したら乙女ゲームの伯爵令嬢だったので ~ドラゴンと一緒に世界を救いたいと思います!~  作者: 柚子猫
星降る世界とお嬢様編

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35.お嬢様と白い世界

 私たちは、上も下も奥行きもわからない白い空間にぷかぷか浮いている。


「クレナ……? この場所を知っているの?」

「シュトレ様も……一度来てますよね?」

「え……」


 シュトレ王子は、私を抱きしめたまま。

 遠いところを見るような目で考え込んでいる。


「もしかして婚約式の時……初代星乙女に会った場所……?」

「うん。たぶん、そうだと思う」

「そうか……」


 シュトレ王子は大きなため息を漏らした。

 目にいつもの鮮やかな光が戻っている。

 

 なんて、キレイなんだろう。


 おもわず引き寄せられるように、のぞき込むと。

 瞳に映る私の姿が大きくなっていく。


 あ……。


「ハーイ! そこ! あまり人の前でラブラブしないでくださいねー」


 唇に柔らかな感触が伝わった瞬間。

 真っ白な空間に、可愛らしい大きな声が響き渡った。


 金色に輝く少女が私たちの前にゆっくりと近づいてくる。


 ……ちょっと。

 絶対狙ってたでしょ! かみたちゃん!


「死後の世界でもお姉ちゃんにまとわりついてるんですか、金色毛虫!?」

「お兄さま……さすがにそれは……う、うらやましくなんてないんだから!」

「クレナちゃん。いつでも僕に乗り換えていいからね?」


 皆が大騒ぎする中。

 突然、重力のようなものを感じて。

 私たちは、ふわふわとした柔らかい床に着地した。


「あのー。一応言っておきますけどー。ここは死後の世界じゃないですからね?」


 光はいつの間にか弱くなっていて。

 肩までの黒い髪に大きな瞳の女の子が、首を傾けて可愛らしく笑っている。 


 まるで鏡を見ているような気分。

 やっぱり、どうみてもあの姿は……昔の……私だよ、うん。

 

「元気そうですねー、朱里ちゃんも、みなさんも」

「……アカリちゃん?」

「……私の前世の名前です」

「そうなんだ。とてもいい名前だね」


 シュトレ王子はまるで宝物を手に入れたみたいに。

 満面の笑顔になった。

 


 でもさ。

 忙しくて考えてなかったんだけど。


 今私はここにいるわけだよね?

 でも、かみたちゃんも私だとすると。


 ……分身?

 ……分裂?

 

 はっ、もしかして私の記憶が偽物とか?

 この世界のクレナちゃんに、アカリの意識が乗り移ったみたいな?

 

 それか……かみたちゃんが昔の私に変装している?


 記憶はだいぶ戻ってるのに、その辺がよくわからないんだよね。

 

 なんて。

 ぼーっと考えていたら。


 ジェラちゃんが、かみたちゃんの前で丁寧なお辞儀をした。


「初めまして。貴女が……かみたちゃんよね?」

「そうですよー。転生前にお会いしてますけど。覚えてないですよねー?」


 ……え?

 えええええ?!


 

**********


 かみたちゃんの話では。


 生まれ変わるときに覚えていないだけで。

 転生前に全員と会って、転生するかどうかの希望を聞いてるんだって。


「そうなんだ。アンタ覚えてる?」

「こんなにカワイイ子だったら覚えてないわけないんだけどな」 


 ガトーくんは、かみたちゃんの手を取ろうとして。

 さらりとかわされた。


「すっかり元気になられましたねー。転生をおススメしてよかったですよー」


 かみたちゃんの言葉に。

 ガトーくんの表情が急に暗くなる。


「僕の過去を知ってるのか……」

「ええ。それはもう。かみさまみたいなものですからー」


 過去って前の世界のことだよね?

 やっぱり前世でもタラシで愛憎のもつれがあったとかかな……。


 うん、きっとそう。


 だってガトーくんだもんね。


 私なんて……前世での恋愛経験ゼロなのになあ。


「何を考えてるのか顔に出てるけど……違うからね?」


 ガトーくんは、両手で私の手をにぎると。

 真剣な目で見つめてきた。

 整った顔立ちにさわやか笑顔。


 さすが攻略対象……すごく魅力的だと思う。

 私が転生者じゃなかったら、恋に落ちたかもしれない。

 

「僕はさ、クレナちゃん一筋だから!」


 あはは、ガトーさま?

 ちょっと前に、かみたちゃん口説こうとしてませんでした?


「ふざけるな! クレナはオレの婚約者だからな!」

「赤毛虫、どっかいってください!」


 ……もう。

 ホントに、軽いんだから!


「ガトーくん? そういうの禁止って前からいってるのに!」

「ち、ちがうんだよ。普段はクレナちゃんだけにしか言わないのに……何故だろう……不思議なんだ」


 ガトーくんは、不思議そうな顔で。

 私とかみたちゃんを交互に見ている。

 

「あはは、クレナちゃんはもてますねー」


 いま口説かれてるの、かみたちゃんだと思うんだけど。

 でも、かみたちゃんは、どう見ても昔の私で。

 じゃあ、口説かれてるのは私?


 ああ! もう!

 これ、どうなってるのさ!

 

「ねぇ、そんなことより。あのラスボスの話を倒さなくていいの?」

「あれは、まずいのだ……まずいだろ! 世界をたべちまう」


 かみたちゃんの後ろから。

 赤い頭と、白い頭がひょっこりと顔をだす。


 キナコもだいふくもちも来てたんだ。


「そうですねー。それはクレナちゃんに質問です」


 かみたちゃんは、唇に人差し指を当てて考えるポーズをした後。

 両手を大きく広げた。


 突然、空中に目を閉じて横たわる金髪の少女が出現する。

  

「彼女を救うのと、ラスボスを私が倒すの。クレナちゃんはどちらを選びますか?」

「え……? 救うって……」

「彼女は、影の影響を受けてますよー」


 それじゃあ、本当に影の影響を受けてて。

 記憶も入れ替えられてるの?

 

 うそだ。

 うそだよ。

 

 だってだってリリーちゃんが何度も手に書いてくれた文字は。


 『だ・い・す・き』


 大好きって……。


 ……。


 …………。


 リリーちゃん……!!


 両目から涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。

 拭いても拭いても……止まらないよぉ。


「……ねぇ、かみたちゃん。本当に治せる?」


 私は涙を流したまま、かみたちゃんの両肩をぎゅっとつかんだ。

 

「ええ。もちろん。ただですねー、影の影響を受けた人を治すのって難しいのですよー」


 空中に静かに浮かんでいるリリーちゃんは。

 まるで絵本の眠り姫のように美しくて。


「ラスボスか、彼女か……私の力も無限ではないのでー。どちらか選んでくださいね?」


 そんな……そんなのって。

 どうしよう。


 ラスボスを倒せば……。

 ゲームのバッドエンド……世界の滅亡は回避できるよね。


 転生してこの世界にきてから。

 ううん。そのもっと前から。

 ずっと守りたかった、星降る美しい世界。

 そんなの。

 ゲームや物語だったら、どちらを選べばいいのかなんて決まってるけど。


 わかってる。

 わかってるよ。


 でも……!


「なんて顔してるのよ……。いいわよ、どっちを選んでも」

「お姉ちゃんが後悔しない方をえらんでください」

「うん、僕も……クレナちゃんを信じるよ」

 

 涙で景色がにじんで。

 みんなの姿がよく見えない。


「クレナ……大丈夫だよ」


 シュトレ王子が優しく声で、私の髪をそっとなでる。


 私は……。

 私は……。


「お願い、かみたちゃん!」


 私はかみたちゃんに、自分の想いを伝えた。


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