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転生したら乙女ゲームの伯爵令嬢だったので ~ドラゴンと一緒に世界を救いたいと思います!~  作者: 柚子猫
星降る世界とお嬢様編

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30.お嬢様と大親友

「どこへ行くのかな? オレの婚約者様は」


 リリーちゃんのいる飛空船へ向かおうと外に出てすぐ。

 後ろから声をかけられた。


「シュトレ様……」

「ねぇ? こんな夜更けに、部屋着にマント姿とか……すごく危険なんだけど?」


 私は廊下の壁に背中をつけて、シュトレ王子を見上げていた。

 彼は、そのまま壁に手をついて、私の顔をのぞき込む。

 青く澄んだ瞳に吸い込まれそうになる。

 

「あはは……ちょっと、お散歩……かな?」

「そんな恰好で? まるで襲ってくれっていってるようなものだよね?」


 ああ……この表情。

 顔は笑顔なのに目が笑ってないよ、

 怒ってるよ……これ。


 あれ?

 でもこのシュチュエーションって。

 もしかして『壁ドン』ってやつなのでは。


 ゲームやマンガでは何度も見ていて憧れのシーンなのに。

 現実におこると、どうしていいのかわからない……。

 シュトレ王子の顔がすごく近くて。

 甘い吐息が顔にかかる。


「あのね、シュトレ様。リリーちゃんのところに行こうとして……」

「こんな時間に?」

「どうしても今日話しておきたくて」

「ふーん。こんな時間に……ね?」


 ダメだ。

 いじわるそうにニヤッと笑っている。


 これ……ブラックだ。

 ブラックシュトレだ。


「もう……ホントに会いにいくだけですよ? どうすれば信じてくれますか?」

「そうだなぁ」

 

 シュトレ王子の瞳に映る私が大きくなる。

 次の瞬間。

 私の唇が柔らかい感覚にふさがれた。

 

 暖かい気持ちが流れ込んでくる。

 不安だった気持ちが一気に溶けていく、そんな感覚がした。


 長いキスのあと。

 私はなぜか力が抜けてしまって、その場に座り込む。


「んー、満足。ねぇ、少しは元気出た?」

「……え?」

「今のクレナ、すごく暗い顔してたからね」


 暗い顔?

 私が?


 思わず、両手を頬にあてる。

 まだ頬が火照っていて……すごく熱い。


「私……そんなに暗い顔してました?」

「そうだね、この世の終わりみたいだったよ?」


 ……そうだったんだ。


 彼は柔らかな微笑みで、私に手をさしのべてきた。

 よく見ると、シュトレ様も顔がすこし赤くなっている。


「リリアナのところにいくんだよね? 一緒に行こう」


 彼の手をとって、ゆっくりと立ち上がる。

 私はお礼に、少しだけ背伸びをして。


 ――彼の頬にキスをした。


「……え、クレナ?!」

「お礼! 心配してくれてありがと!」


 シュトレ王子は真っ赤な顔で固まっている。

 自分でやったんだけどさ。、

 これやっぱりすっごく……恥ずかしい。


 

 ん……?


 よく見ると、部屋の半開きになった扉の影から。

 赤と白の頭が見え隠れしている。

 

「……見ました? あれで素なんですよあの人。ぜったいタラシでしょ?」

「あれが天然ってことは……さすがにないだろ?」


「ちょっと、二人とも! 聞こえてるからね!?」

 


**********


「いくらクレナ様でも、お通しできません!」


 リリーちゃんの泊っている飛空船がある飛行場で。

 私達は、セントワーグ家の警備兵に止められていた。

 

「一目だけでいいから、リリーちゃんに合わせて欲しいんです」

「ですから、お嬢様はお疲れですし、今夜は誰とも会われないそうです」


 警備兵は申し訳なさそうに頭をさげた。


「ご主人様、さすがに無理ですって」

「こんな時間に女の子の部屋を訪れるとか……さすがに大胆だろ!」


 それを言ったら、アナタたちも私の部屋に来たんですけど……。


「クレナ、残念だけど。今日は引き上げて、明日の朝に改めて来ようよ」


 シュトレ様はそっと私の頭をなでてくれた。



 うん、それはそうだよね。


 わかってる。

 わかってるんだけど。


 でもね……今会わないと、絶対後悔する気がする。

 何故か、胸の奥の不安が再び大きくなる。 


 こうなったら……。


「お願い、時間止まって!」


 次の瞬間。

 警備兵の声も、シュトレ様の優しい声も。

 キナコとだいふくもちの可愛らしい声も。


 すべての音が聞こえなくなった。


 同時に。

 目の前の景色がまわって、地面が波のようにゆがみだした。


 私は目を閉じると、少しだけそれが静まるのを待った。

 ああ、この感覚……知ってる。

 魔力の使い過ぎによるめまいだ。


 今までに一日で二回もストップを使ったことがなかったんだけど、

 やっぱり消費が激しいみたい。

 

 ……いそがないと。


 私は、倒れそうになりながらも、リリーちゃんの泊っている飛空船に向かっていく。


 セントワーグ領軍の中でもひときわ大きな軍艦。

 昔、アランデール公爵家が反乱を起こした時に乗ったことがあるから。

 船の構造も、リリーちゃんの部屋の場所も知っている。


 船のタラップをよろけなが駆け上がり、部屋の扉を開けると。

 

 リリーちゃんが微笑ながら立っていた。

 

「来ると思ってましたわ」


 その姿は、私の知っているリリーちゃんと同じで。

 私は少しだけホッとした。


「ねぇ、リリーちゃん」

「でもさすがに、そんな恰好来るとは思いませんでしたけど……どうかしましたか?」


 リリーちゃんは、少しだけ首を傾けると。

 いつものように天使のような笑顔をみせた。


「ねぇ本当に大丈夫なの? 帝国でなにかあった?」

「そうですね、いろいろありましたわ」

「いろいろって?」


 彼女は話しながら、ゆっくりゆっくり私に近づいてくる。

 なんだろう。


 いつものリリーちゃんなのに。

 理由はわからないんだけど……すごく……怖い。


「どうしたんですか? なんだか、怖がってません?」

「そんなこと……あるわけないよね?」

「うふふ、そうですわよね。私たち大親友ですもの……」


 彼女が手を伸ばして私の首に抱きついてくると。

 頭に強い衝撃がはしった。


「……え? リリーちゃん?!」

 

 まずい、意識が遠くなっていく。

 リリーちゃん……。 


「クレナちゃんだけは、私を信じてくださいね……」


 耳元で。

 彼女の声を聞いた気がした。



**********


 目を覚ますと。

 そこは、私のベッドで。

 窓から差し込む光があたたかくて、すこしだけくすぐったい。


 両隣を見ると、キナコとだいふくもちがいて。

 足元には何故かナナミちゃんも寝ている。


 私はぼーっとした頭で、昨日のことを思い出していた。


「あれは……夢だったの?」


 私は体を伸ばすと、ゆっくりと立ち上がって。

 ベッドで気持ちよさそうに寝ている三人の妹をぼーっと眺めていると。

 突然扉をノックする音が部屋に響いた。


「クレナ様、失礼します!」


 その声は、執事のクレイだ。

 なんだかすごく慌てているのがわかる。

 

「ちょっと、どうしたのよ、クレイ」

「そ、それが……、ま、窓の外をご覧になってください」


 私は、窓から見える景色をみて、愕然とした。


 上空に浮かんでいるセントワーグ領軍が掲げているのは、王国の旗じゃなくて。

 三つ首の竜に剣の紋章……。


 

 ――帝国の旗だった。


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