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転生したら乙女ゲームの伯爵令嬢だったので ~ドラゴンと一緒に世界を救いたいと思います!~  作者: 柚子猫
星降る世界とお嬢様編

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28.お嬢様と帝国からの救出

 気が付くと。

 そこには普通に地面があって。


 私はシュトレ王子の手を握ったまま、ゲートの出口に立っていた。


「大丈夫、クレナ?」

「……シュトレ様。ゲートくぐってから、どれくらい時間が経ちました?」

「どれくらいって。今くぐったばかりだよ?」


 王子は不思議そうな顔をしている。


 あれ?

 今の……幻だったのかな?


 ううん。

 そんなわけないよね。

 だって……思い出したから。


 乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』を妹が遊ぶずっと前。 

 私は中学生の時に……一度この世界に来てる。

 あの時は確か……目が覚めたら女神様がいて……。



**********


「お姉ちゃんー!」


 突然。


 目の前に、銀髪の少女が飛びついてきた。

 青い瞳は涙で潤んでいる。


「お姉ちゃん、会いたかったぁ」

「もう、この世界ではお姉ちゃんじゃないでしょ。お久しぶりです……アリア様」

「由衣でいいよ! 周りに帝国の人はいなから平気!」


 由衣は、子供みたいにはしゃぎながら頬を寄せてくる。

 大きくなってからは、こんなに甘えてこなかったのに。

 無防備に甘えてくるこの子の姿は。


 素直に……可愛い。

 

 自分の中にあった、負の感情が和らいでいくのがわかる。

 単純だな……私。

  

 ちらっと周りをみると、ゲートの先は部屋の中だったみたいで

 細かく彫刻されている豪華なソファーや、天蓋のついた大きなベッドが見えた。


 ……砦に攻めてきている、帝国の本陣とかなじゃさそうだけど。


「どこよ、ここ。なんだかすごく豪華な部屋ね」

「砦の近くにあった帝国の街だと……いやでも距離があるし……」


 後からゲートをくぐってきたジェラちゃんとガトーくんが、不思議そうに周囲を見渡している。


「んー、不正解よ。ここは帝都にある私のへ・や」


 由衣は、私に抱きついたまま。

 無邪気さと色っぽさがまざったような微笑を見せる。


 え?

 帝都って……うそ。


「はぁ? 何言ってるのよ! 砦から帝都がどれだけ離れてると思ってるのよ!」

「それはアンタたちの常識でしょ! サキならこれくらい余裕よ!」


 ジェラちゃんの言葉に、由衣がすぐに反論した。

 あわててサキさんをみると、ニコニコしながら窓の外を指している。

 

 外の景色を見てってこと?


「そんなウソより、いい加減離れなさいよ! いくら前世で妹でもくっつきすぎよ!」

「ふふん、うらやましいんでしょ? でもお姉ちゃんは私のものなんだから!」


「由衣、少し黙ってて」


 さらに頬をピタッとつけてくる由衣の顔を両手で押し返した。


「ええ?! お姉ちゃん?」

「いいから。少し大人しくしててね?」


 由衣の腕を振りほどくと、部屋の窓に向かう。


 目の前に広がる景色。

 そこには……。


 いくつもの槍のように天空に伸びる大きな塔と、豪華に装飾された建物。

 その奥には、城壁と大きな街が見えて。

 大きな軍艦が飛び交っている。


 この特徴的な景色は……本で見たことがある……。

 アイゼンラット帝国の首都グラウゼナ……。


「ほら、言ったとおりでしょ?」


 後ろから自慢げな由衣の声が近づいてくる。

 

「ねぇお姉ちゃん……ずっとここで一緒にいよう? なんならお父様に頼んで皇女に……」

「そうはいかない!」


 シュトレ王子が、由衣との間に入ると。

 庇うように片腕で私を抱きしめてきた。


「なによ。ゲームキャラのくせに……」

「ねぇ、由衣! 今は私の話なんていいから! リリーちゃんはどこ?!」


 由衣がリリーちゃんを誘拐した犯人なら。

 きっとここにいるはず。


「リリーちゃん? ああ、リリアナね……」


 由衣はニヤリと笑うと。

 サキさんに向かって話しかけた。


「もう準備は出来てるわ。あの子を呼んできてちょうだい」 



***********


 サキさんが部屋を出てからしばらくすると。

 綺麗な金色の髪をなびかせた少女を連れてきた。

 

「みなさま、ご迷惑をおかけましたわ」


 私たちの顔を見ると、優雅にお辞儀をした。


「リリーちゃん!」


 私は思わず、彼女に駆け寄ると、おもいきり抱きついた。

 

 良かった。

 良かったよぉ。


「大丈夫? どこかケガしてない?」

「ええ、帝国の皆様にとてもよくして頂きましたわ」


 さらりと揺れる金色の髪が頬にかかって。

 優しい香りに包まれる。


 優しく微笑む彼女の姿は。

 きっと、いつものように天使みたいなんだと思うけど。

 涙で景色がゆがんで……よく見えないよ……。


「リリアナさん……大丈夫ですか?」

「なによ、思ったより元気じゃない!?」

「まぁ、とりあえず、無事でよかったよ」


 みんなが、周囲を取り囲む。

 シュトレ王子と目が合うと、ぽんと私の頭に手を当ててきた。


「よかったな、リリアナ。クレナ」 

「うん、ありがとう」

「ご心配おかけしましたわ」


 あれ?

 キナコとだいふくもちは、みんなの輪に加わってなくて。

 リリーちゃんから少し距離をとってる。


 久しぶりに会って照れてるとか……じゃないよね?


 まるで……何かを警戒してるみたいに、じっとリリーちゃんを見ている。


 ――なんだろう?

 


**********


 しばらくみんなでリリーちゃんとの再会を喜んだあと。

 ガトーくんがふと外を見ながらつぶやいた。


「でさ、ここからどうやって帰ればいいんだ?」


 そうだ! 言われてれば。

 ここって、アイゼンラット帝国の帝都なんだよね?

 砦に戻るのなんて……飛空船でも数日かかるはず。


 その前に飛行船もないし。


「安心してよ、帰りもゲートを出してあげるわ。お姉ちゃん以外に!」

「出すのは私だけどね……」


 由衣の言葉にサキさんが呆れたように両手を広げる。

 この二人。

 本当に仲良しだよね。


「ごめん、由衣。また遊びに来るから……」

「いや! お姉ちゃんはここに残るの!」


 由衣は私の腕にぎゅっと抱きついて離さない。


「ちょっと、お姉ちゃんから離れれろ! 銀色毛虫!」

「はぁ? アンタよく見たらゲームの星乙女じゃない! なに人のお姉ちゃんをお姉ちゃん呼ばわりしてるのよ!」

「今は私のお姉ちゃんだからです!」


 二人の様子を見ていたサキさんは、由衣に近づくと。

 大きなため息をついて、ごつんと頭を叩いた。


「痛いっ! なにするのよ!」

「アリアちゃん、お姉ちゃんをこまらせても仕方ないでしょ。今回は帰ってもらいなさい」

「えー……」

「えーじゃありません!」


 由衣は、思い切り頬を膨らませて抗議している。

 私が思うのも変なんだけど……まるで、本当の姉妹みたい。



「ゲート開くわよ。さぁ、早く帰りなさい」


 サキさんがパチンと指をならすと。

 部屋の一部にゆがんだ空間が生まれた。


「由衣、またね。リリーちゃんを保護してくれててありがとう」

「いいわよ……どうせすぐ会えるから」


 由衣は頬を膨らませながら下を見いている。

 もう、いつまで怒ってるのさ。


「クレナ、先にいくわよ!」

「お姉ちゃんも早くー!」

「ご主人様、急いで!」


 みんな次々にゲートに飛び込んでいく。


「クレナ、おいで!」


 シュトレ王子は、ゲートの近くで手を差し伸べてくれた。

 私は、王子の手をとると後ろを振り返る。


「リリーちゃんも、早くゲートに!」


 リリーちゃんは由衣をじっと見つめて立ち止まっている。

 ……どうしたんだろう?


「いいんじゃない。もう帰っても平気よ」

「わかりました……ではそのように……」


 彼女は、丁寧に由衣にお辞儀をした。


 ……え?

 今のなに?


「それじゃあ、帰りましょうか」


 振り返ったリリーちゃんは何事もなかったように。

 嬉しそうな笑顔で話しかけてきた。


 うん……。

 彼女は間違いなくリリーちゃんなんだけど。


 ――なんだろう。


 突然芽生えた、この胸のもやもやした気持ちと違和感は……。



 気のせい……なのかなぁ。


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