6.お嬢様と信じる気持ち
かみたちゃんの予言を信じることにした私たち。
帝国と法国から同時攻められる前に、やっておきたいことは大きく三つあって。
私はあらためて、壁に貼ってある目標に目を通した。
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一、婚約式に参加してる使節団に接触すること
二、両国に使者をおくること 〇
三、砦の防衛に兵士をおくること
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二つ目の使者に関しては、トルテ様が国王様にお願いして。
婚約式のお礼として正式に派遣されることになった。
なので、壁の紙にもマル印。
私たちがやることは、残り二つなんだけど。
「ねぇ、これ本当に信じられるのよね?」
ジェラちゃんが、私の書いたメモを見て、眉間にしわをよせている。
うわぁ、気持ちはわかるけど。
完全に疑ってる感じだよね?
「あまりサキさんのことをよく思ってないのは知ってるんだけど……」
「あまりじゃなくて! まったくよく思ってないわよ!」
ジェラちゃんは、テーブルにメモを叩きつけた。
「だいたい、自分の国の兵の数も、どこを攻めるかも、作戦も全部話してくれるなんてありえないでしょ!」
……うん、そうだよね。
私も驚いたから。
あの後。
サキさんは、帝国の動きを全部話してくれた。
すごく丁寧にわかりやすく。
弱点なんかも教えてくれて。
「罠の可能性も……ありますわよね?」
隣にいたリリーちゃんが考え込むような仕草をする。
「可能性っていうか! 罠よ、罠!」
「でも、もし本当だったらさ。これほど頼りになる情報ないよな……」
「ちょっと、ガトー! アンタどっちの味方なのよ!」
「いやだなぁ、僕はいつだってクレナちゃんの味方だよ」
いつの間にか、ジェラちゃんとガトーくんが言い争いになっている!?
慌てて二人を止めようとしたら。
後ろからシュトレ王子に声をかけられた。
「ねぇ。この情報、クレナはどう思ってるの?」
まっすぐな青い瞳が私を捉えている。
それは、イベントスチルに出てきそうなくらい、すごく優しい表情で……。
たぶん、私がどう思ってるのか。
気づいてるんだよね?
「私は、信じ……たいです……」
部屋にいた全員が黙って私を見つめている。
信じてもらえないかもしれないけど。
でも、サキさんは。
どうしても。
どうしても。
ウソをつく人にはどうしても思えないから。
「はぁ……仕方ないわね。信じてあげるわよ……あの魔人じゃなくて。アンタを、よ」
ジェラちゃんは小さくため息をつくと、私の頭を優しくなでてきた。
「だから、そんな表情しなくても……平気よ」
ジェラちゃん……。
「……ありがとう」
「い、いいのよ、お礼なんて。さぁ、みんなはどうするのよ!」
ジェラちゃんが、耳まで真っ赤にして、部屋にいる全員に問いかける。
「ずるいですわ! わたくしもクレナちゃんが信じるなら信じますわ!」
リリーちゃんが横から抱きついて、頬をすりよせてきた。
「まぁ、僕は基本的に、可愛い女の子の言葉は信じるから」
「あの魔人は嫌いだけど……お姉ちゃんがいうなら……」
ガトーくんもナナミちゃんも、ゆっくり頷く。
「わかった。じゃあ、こうしようか」
王子は、再び私に笑顔を向けると。
机の上に大陸の地図を広げた。
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「東には、今王国で一番強いハルセルト家がいる。ハルセルト伯に戻ってもらって指揮をお願いできないかな?」
ルーランド砦は、ハルセルト領の近くにある要塞だから。
昔から有事の際には、王国兵士と一緒にハルセルト領兵が戦っていた歴史がある。
「うん、わかりました。お父様に伝えます」
私は大きく頷いた。
絶対にお父様を説得してみせる!
「西は……アランデール公爵家の反乱からまだ日が浅い。正直、竜騎士に攻められたらひとたまりもない……」
「つまり、王国の主力をフェルニット砦に回すってことよね。大丈夫。竜騎士なんてたいしたことないわよ」
ジェラちゃんが、ひきつった顔で答えた。
多分、ジェラちゃんも王国軍として向かうつもりだ。
ガトーくんも小さくうなずいた。
「クレナ、オレもフェルニット砦に向かうつもりだ。もし父上の説得に失敗しても、近衛兵の一部は動かせる」
シュトレ王子は、こぶしを固く握ると。
私の瞳を見つめてきた。
「キミは、リリアナ、ナナミちゃん、キナコちゃんと一緒に東に……行ってほしい」
再び地図に目をおとすと、感情を押さえたように話しかけてくる。
「それでは、セントワーグ領軍も、東を守ればいいのですね? お父様を説得しますわ」
「ああ、帝国の情報を信じるなら、それで守れるはずだ。西の竜騎士を叩いたらすぐに向かうから……それまでクレナを頼む」
「……任されましたわ」
リリーちゃんが目を伏せながらつぶやくように答えた。
「あの、やはり話し合いでは、解決できないでしょうか?」
ナナミちゃんが、おそるおそるシュトレ王子に尋ねる。
「父上に使者を通してお願いはするけど、相手はもう準備済みだろうからね……こちらも備えはしておかないと」
本当に、ゲームじゃなくて。
……戦争がはじまる。
「オレたちは、事前に相手の動きがわかってるんだ! 絶対に勝てる!」
シュトレ王子の言葉に、みんな真剣な表情でうなずいた。
ううん。
よく見たら、みんなじゃなくて。
キナコと、だいふくもちはソファーの影からひょこっと頭を出して。
不思議そうな表情で私たちを眺めている。
「あのー、そんなことしなくても、竜騎士ならボクたちだけで平気ですよ?」
突然のキナコの言葉に。
その場にいた全員が固まった。
「西は、ご主人様とボク、あとだいふくもちと砦の兵士がいれば十分です。あとシュトレ王子もきます?」
横にいるだいふくもちも、私とシュトレ王子を見比べてにーっと笑っている。
「あはは、まぁ、そうだな。婚約したばかりで離れ離れにしたら可哀そうだ。一緒につれてってやるか!」
……キナコさん?
……だいふくもちさん?
どういうことなの?!




