4.お嬢様とかみたちゃんのプレゼント
眩しい光が収まって。
ゆっくり目を開けると。
元の大広間に戻っていて。
わたしは腕に花束を抱えた状態で立っていた。
指輪はまだ少しだけキラキラと輝きを放っている。
今の……夢だったの?
でも……。
腕の鮮やかな花束が、夢じゃなかったことを教えてくれている。
ふと、花束の中にメッセージカードが入っているのに気がついた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
クレナちゃんへ
あなたの人生がすばらしものでありますように。
あなたの笑顔が幸せを運びますように。
あなたの優しさが世界を救いますように。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
かみたちゃん……。
私が、メッセージカードをシュトレ王子に見せようと手を伸ばすと。
花束から一斉に色とりどりの花びらが舞い上がり。
大広間中にはらはらと舞い降りていく。
これ……魔法の花だ。
それはまるで。
絵本の中にいるような幻想的なシーンで。
会場から一斉に大きな歓声が響き渡わたった。
「なんと……夢でもみているようだ……美しい」
「さすが竜姫様だ……」
「シュトレ様、クレナ様。末永くお幸せにー!」
驚いて固まっている私の手を、シュトレ王子が握ってくれた。
見上げると、すごく素敵な笑顔で。
参加者にむかって手を振っている。
私も、頑張らないと!
笑顔。
笑顔だよね。
心の中は色々ありすぎて動揺してたけど。
にっこりスマイルで会場に手を振る。
すると。
大歓声だった会場が、急に静かになった。
……ちょっと、なんでさ!
おまけに、ため息みたいのも聞こえてくるんですけど!
なにか間違えてるの?
不安になってシュトレ王子を見ると。
……なぜか真っ赤な顔で固まっている。
ええええ!
やっぱり何かおかしかったの?
どうしよう……。
混乱した頭で打ち合わせした内容を思い出していると。
会場から、今まで以上の大歓声が沸き上がった。
な、なにこれ?!
宮殿がゆれそうなくらい、すごいんですけど。
「本当に……クレナはあいかわらずだね」
シュトレ王子が、赤い顔のまま嬉しそうに微笑みかけてきた。
前からこんなことが多かったから。
王子やリリーちゃん、ジェラちゃんたちに理由をきいてみたんだけど。
『そのままでいいよ』って言われてて、全然理由がわかってないんだよね。
動揺している私に、王子がそっと耳元でささやいた。
「みんな、クレナに見惚れたんだよ」
……。
…………。
はい?
王子の真剣な表情は、冗談を言ってる感じじゃないんだけど。
うーん?
**********
婚約式が終わって。
私は、初めて王宮の自分の部屋に通された。
部屋の中にある家具は、どれも見慣れたものばかりで。
レイアウトもほとんど同じ。
……いつのまにか、私の部屋から運び出したみたい。
壁紙も、同じ物を使っていて。
全然元の部屋と違和感がない。
これってきっと。
私が王宮でもリラックスできるように配慮してくれたんだよね。
心づかいが、すごく……嬉しい。
今この部屋にいるのは。
私の婚約者様、シュトレ王子。
――だけじゃなくて。
トルテ様。
リリーちゃん。
ジェラちゃん。
ガトーくん。
ナナミちゃん。
キナコ。
だいふくもち。
以上、私含めて8名。
考えてみたら。
異世界の話も乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』の話を知っている人もずいぶん増えたよね。
おかげで、かみたちゃんのところで聞いた話の相談が出来るんだけど。
「つまり、このままだと王国は二つの国に挟み撃ちにされるのね?」
トルテ様が真剣な表情で、机に広げた地図を見ている。
「ちょっと、ゲームと展開が違いすぎるわよ! なんで緑の法国まで攻めてくるのよ!」
「落ち着け、ジェラ!」
「だって!」
うん、そうだよね。
わかるよ、ジェラちゃん……。
ゲームでは。ううん、現実でも法国は味方だったはずなのに……。
私たちファルシア王国は魔法石が潤沢にあった影響で、魔法技術が他国より発展している。
それは、飛空船や魔星鎧の技術レベルも違うってことで。
どちらか一方の国と戦うなら、たぶん王国は負けない。
帝国にラスボスっていう切り札があったとしても。
でも、両方から同時なんて……。
「でも、おそらくこれは事実だ。初代星乙女が教えてくれた情報だが、オレはこの目で映像を見ている」
シュトレ王子がゆっくりと全員に話しかける。
きっと、感情を押さえてるんだよね。
「兄上、その話を教えてくれたのは、本当に初代星乙女だったんだよね?」
ガトーくんのセリフに、ゆっくりと頷く。
シュトレ王子は地下室で色んな書物を見てきたから、確信があるんだと思う。
その表情に、改めてメンバーが静かになる。
初代星乙女は、この国では救国の英雄だから。
彼女のセリフって聞くと、重みがちがってくるみたい。
「私は、クリールに言って両国を探るように伝えます。おそらく……事実なのでしょうけど」
「母上、お願いします」
「それでも、あと一週間しかないんですよね、クレナちゃん?」
「うん……」
リリーちゃんが、ぎゅっと手を握りしめてくる。
少しだけ……震えている。
大丈夫、大丈夫だよ。
もう片方の手も添えて、そっと手を握り返した。
「大丈夫、まだあと一週間もあるんだし! 絶対阻止して見せるから!」
かみたちゃんからのプレゼント。
絶対に無駄にしないよ!




