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転生したら乙女ゲームの伯爵令嬢だったので ~ドラゴンと一緒に世界を救いたいと思います!~  作者: 柚子猫
星降る世界とお嬢様編

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2.お嬢様と王宮の控室で

 王宮はまるでお花畑のように、色とりどりの花で飾られて。

 今日のお客様を迎えるために美しく輝いている。


 私は。

 朝早くから湯浴して体に優しい甘い香りをなじませて。

 湯上りに魔法で優しく丁寧に乾かされた後。

 セーラ率いるメイド隊の皆様に、芸術作品として作り上げらていく。


 髪の色と同じ、淡いピンク色の花のようなドレス。

 丁寧に編み込んでもらった可愛らしい髪。

 小さなティアラと……美しい白いベール。


「うぁ、お姉ちゃん、お花の妖精みたい。ほんとにキレイ!」

 

 扉を開けて入ってきたナナミちゃんは。

 目を輝かせて近づいてきた。


「ありがとう、ナナミちゃん」

 

 ナナミちゃんがきているのは。

 黄色のフリルがいっぱいのふわふわドレス。


 その姿には見覚えがあって。


 乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』の中では、攻略対象と結ばれるエンディング出来ている服なんだよね。

 もしかして、ナナミちゃん……。

 誰かと結ばれたとか?


「ねぇ、ナナミちゃん」

「なんですか、お姉ちゃん? 今からでも私と逃避行しますか?」


 ナナミちゃんは、顔をぐいぐい近づけてくる。

 少し赤くなった頬。大きな潤んだ瞳。

 本当にかわいいなぁ。

 さすがゲームのヒロインだよ!   

 

 でもやっぱり。

 これって……ヒロインが恋に落ちてる時の表情だよね?


 私はナナミちゃんの耳元に顔を近づけると、そっとささやいた。


「……もしかしてナナミちゃん、好きな人が出来ました?」


 彼女は、可愛らしい目を大きく開いて。

 両手で口を抑えた後。


 耳まで真っ赤にして、小さな声で答えた。

 

「私が好きなのは、お姉ちゃんですよ……」

「えーとね、そういうのじゃなくて。ほら、前に話したよね? 星乙女は恋すると強くなるよって」


 ナナミちゃんには、前世のゲームの話も。

 乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』の話もしている。


 さすがに、攻略対象が誰なのかは詳しくは話してないんだけど。

 ほら、こういうのって。

 逆に意識しちゃいそうだし。


 ガトーくんのことが好きなのかなって思った時もあったんだけど。

 どうも……ちがうみたいんだんだよね。


 一体誰なんだろう?


「んー、それなら私は、今無敵なハズなんですけどねー……」

 

 唇に指を押し当てて、可愛らしいポーズを取る。

 カワイイー!


 誰に恋してるのかわからないけど。

 でも。


「お姉ちゃん、断言する! ナナミちゃんが落とせない相手なんていないから。自信をもって!」

 

 ナナミちゃんの肩をがっしりと掴む。

 

「あはは、それが……そうもいかないんですよねー」


 顔を真っ赤にしたまま、視線をそらされた。

 そんなに難しい相手に恋してるの?!

    

「ナナミちゃんなら大丈夫だよ。お姉ちゃん応援するから!」

「そうですか……じゃあ。少し目を閉じていてください!」


 目を閉じる?

 なんでだろう。


 彼女の迫力に押されて目を閉じると。


 ふわっと甘い香りが広がってして。

 唇に優しい感触が伝わった。


「……え、えええ?」

「応援してくれたお礼ですよ」


「ナ、ナナミちゃん? そういうのはいつか大切な人に……」

「だから、しましたよ? 大切な人に」


 まっすぐな瞳で私を見つめてくる。

 目に少し涙が浮かんでるようにも見えるんだけど。


「もう。私以外にやったら危険だからね? 本気にされたらどうするの?」

「お姉ちゃん以外にするわけないですよ?」


 もう。

 ホントにわかってるのかなぁ。


 大きなため息をついてふと後ろを振り向くと。


 後ろにあるソファーの背もたれから。

 赤い頭と白い頭が、ひょこひょこ見え隠れしていた。


 なにあれ。

 ……カワイイ。


「はぁ、あれで気づかないんですよ、ご主人様って……。どう思います?」

「いいじゃねーか。人間ってのはホントに面白いなぁー」


 なにかこそこそ話してるけど。

 

「ちょっと、そこ。聞こえてるし見えてるからね!」


 二人はびくっとして立ち上がった。


 だいふくもちはとキナコは。

 ナナミちゃんと同じデザインの、色違いふわふわドレス姿。


 やっぱり。

 ウチの妹たちは、本当にかわいいなぁ。


 私たち姉妹が話をしていると。

 お父様とお母様も部屋に入ってきた。

 

「まぁ、クレナちゃん。やっぱり可愛いわ!」

「おお、なんて可愛いんだクレナ。ダメだ、やっぱりアイツの息子にやるのは!」


 よく見ると二人の目に涙が浮かんでる。

 

 そうなんだよね。

 この王家の婚約式って。

 前世でいうと、結婚式と一緒の扱いで。


 私はこの後、ハルセルト家には戻らずに。

 王宮で暮らすことになる。

 

 一年後の正式な結婚式は、お色直しみたいな扱いなんだって。


 だから。

 だから。


 私は、二人に……ううん。

 妹もセーラもクレイたちも含めて、みんなに向けて。


 あらためて、心を込めて丁寧にお辞儀をした。


「お父様、お母様。ハルセルト家の皆様。今日まで私を育ててくれてありがとうございました」


 異世界に転生してからここまでずっと。


 こんなに愛してくれて。

 見守ってくれて。


 本当に、本当に。

 感謝でいっぱいで。


 前世も含めて初めての結婚式だけど。


 これまでの色んな思い出が想い浮かんでくる。

 嬉しくて、寂しくて。

 これがハルセルト家として家族と過ごす……最後の時間なんだ。

   

「幸せになりなさい、クレナ」


 お母様が近づいてきて。

 そっと抱きしめてくれた。


 お父様は、無言のまま涙を流して私を見つめている。


「よかったですね、ご主人様」

「うん、ありがとう。キナコ」


「お姉ちゃん……おめでとう……」

「あはは、本当によかったな。星乙女よ」

「ナナミちゃん、だいふくもちちゃん。ありがとう」


「心から。おめでとうございます。お嬢様」

「セーラ……みんなも。本当にありがとう」

  

 こんなにたくさんの大切な人に囲まれて。

 私は本当に……幸せ者だ。


「クレナ様。ご準備ができましたら、そろそろ式の方へいきましょうか」


 クレイが部屋の時計をみて、優しい声で話しかける。


 

 私はお父様の手をとって、会場に向かった。

 お父様は……長い廊下を歩いている間、ずっと無言で厳しい顔をしたまま。


 本当は反対……なのかな。


 やがて、大広間の横にある控室につくと。

 お父様はつないでいた手を離して、静かに語りかけてきた。


「クレナ……クレナはずっと、我が家の太陽だった。お父さんは……その輝きが消えてしまわないように努力してきたつもりだ」


 顔を上げて、表情を見ると。

 今までみたどんなお父様の表情より、優しい顔をしていた。


「お父様……」

「でも、クレナ。これから先、お前の輝きを守ってくれるのは、私じゃない……」


 お父様の目線は、控室にいたシュトレ王子に向かう。


「お互いの輝きを尊重しあって。二人で、幸せになりなさい……」


 お父様は、控室にいたシュトレ王子に軽くお辞儀をすると。

 大きな声で叫んだ。


「シュトレ王子! もしわが娘になにかあれば、ハルセルト領は最後の一兵まで貴方の敵になりましょう!」


 え?

 ……お父様?


「そして……もしずっと愛してくださるのであれば、ハルセルト領は永遠に忠誠を誓いましょう!」


「ありがとう、ハルセルト伯。必ず大切にする」

 

 お父様は。

 シュトレ王子の言葉に満足そうにうなずくと。

 私を強く抱きしめたあと、控室の扉から出ていった。



 ……お父様。


 お父様!

 お父様!!


 

 これまでの思い出が涙と一緒にあふれ出してきて。

 

 困った。止まらないよ……。



 私は、お父様が去っていった扉に、小さくお辞儀をした。


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