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転生したら乙女ゲームの伯爵令嬢だったので ~ドラゴンと一緒に世界を救いたいと思います!~  作者: 柚子猫
魔法学校高等部編

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44.お嬢様と星空の誓い

 あれから私は。

 魔法学校が終わった後に、王宮の地下室にこもるのが日課になった。

 

 過去の文献を調べて。

 世界を救う方法を考えるためなんだけど。


「うーん、どれも同じような記述だよね」

「ご主人様、そんなに簡単には見つからないと思いますよ」


 地下室に入る許可は、ちゃんと王妃のトルテ様から許可を頂いてるし。

 鍵もお借りしてる。


 私は、手に持っていた本を開く。


 ここにある書物は。

 初代星乙女と一緒に戦っていた王子が残したものが多いんだけど。

 他にも、星空や星乙女、ドラゴンに関する資料がたくさん収められている。


「ねぇ、キナコ。前から思ってたんだけど」

「なんですか?」


「魔物を倒した影響で、自分が影になっちゃうなら。冒険者や騎士ってみんな影になるよね?」

「あー、影に侵された竜王のお話ですか?」

「うん。そうなんだけど……」


 だって。

 竜王は、みんなの為に魔物と戦ったのに……最後には自分も影になるなんて。

 あまりにも……可哀そうだから。

 

 でもね。

 ……それなら。

 

 私だって魔物を倒してるし。

 みんな影に浸食されちゃうよね?


「ご主人様は、誤解してるみたいですけど」

「うん?」

「普通に魔物と戦うだけなら、影に侵されたりしませんよ?」


 え、そうなの?

 じゃあ、竜王はなんで……?


「竜王は……影に近づきすぎたんですよ……」

「近づきすぎた?」


 キナコは自分の読んでいた本を閉じると。

 悲しそうな目で、私を見つめた。


「影っていうのは、強い負の感情なんですけど」

「えーと、つまり。人がすごく嫌な感情を持つと、影が生まれるってことだよね?」


「そうです。例えば、単純に魔物に対する恐怖だったり……」


 あー、その恐怖はわかる。

 魔物と戦うのって怖いから。


 でも、それも影を作る原因になるんだ……。 


「でも、もっとも影の影響を強く受けて……とりこまれてしまうのは……」

「……うん?」


「強い……憎しみと欲望なんです」


 憎しみ?

 それって……。


「竜王は、星乙女の幸せを邪魔する魔物や……人間……。そして、世界そのものを強く憎んでしまいました」


「だって、それは。乙女ちゃんの、ううん、世界を救うためだったのに?」


「そうですね……。それと、もうひとつ。絶対手に入らないものを望んでしまったんですよ」


 竜王が絶対手に入らないもの?

 

 でも、キナコなんでそんなこと知ってるんだろう?

 今持ってる書物に書いてあったのかな。


 声をかけようた瞬間。

 彼女の表情が目に入って……声が止まる。


 だって。

 うるんだ瞳から。

 大粒の涙が流れ落ちていたから。


「キ、キナコ……? どうしたの?!」

「だから! 本当は影には近づかないのが一番なんです! 世界なんて本当は……どうなってもいいのに……」


 悲しそうに微笑むキナコを、ぎゅっと抱きしめる。

 彼女は、何も言わずに……。

 

 私の腕の中でずっと泣いていた。



「ごめんなさい、ご主人様。すこし取り乱しました、もう平気ですよ」


 秘密の地下室を出て、地上に向かって階段を上っていると。

 キナコはまだ赤い目で笑顔を向けてきた。


「ねぇ、キナコ……」

「はい、なんでしょう?」


「キナコがずっと、私の味方でいてくれたように。私も、ずっとキナコの味方だよ?」


 

**********

 

 私たちが、お城の空中庭園に戻ってきた時には。


 空はすっかり夕焼けで赤く染まっていて。

 少しずつ。

 星の光が見えるようになっていた。


「ほら、見てキナコ。今日の夕焼け、すごくキレイだよ!」

「そうですねー。でも……」

「でも?」

「こういう景色は、ボクとじゃなくてさ!」


 突然キナコが、イタズラそうな顔をして、私の顔をのぞき込んできた。


 同じ作りなのに、目の色と表情がちがうだけで。

 なんだか、すごくカワイく見える。

 

 キナコは私の手を握ると。

 目を細めてにーっと笑った。

 

 少しは元気に……なったのかな?


「ほら!」


 突然キナコに手を強く後ろに引っ張られて、バランスを崩す。

 

 あぶない!

 倒れるとおもった瞬間。

 

 大きな腕が、私の体を支えてくれた。


「ありがとうございます……って、えええ!?」


 顔を上げると。

 金色の髪をした青年が澄んだ青い瞳で微笑んでいる。


 シュ、シュ……シュトレ王子!?


「あとは、ごゆっくり! ボクは用事があるから!」


 キナコは、わざとらしいウィンクをすると、ジャンプしながら去っていった。

 なんかすごく……元気なんですけど。


 地下室のあの涙はなんだったのさ!



「……クレナ?」

「あ、ううん。なんでもないです」


 シュトレ王子は心配そうな表情を浮かべると。

 私の手を引いて、ベンチまで案内してくれた。


「少し座って話そうか?」

「はい……」


 ここは子供の頃。

 

 初めて私とシュトレ王子が一緒に並んで。

 星降りの夜の夜に夜空を眺めた場所。


 その後も。

  

 初めて膝枕をしたり……。

 なんだか……懐かしい。


「で、どうしたの、クレナ? 悩みがあるなら何でも言ってよ」


 隣に座った王子を見ると。

 金色の髪が夕日に照らされて。


 ――すごくきれい。


 このまま……ずっと見つめていたいけど。


「ねぇ、シュトレ様。もしも、もしもの話なんですけど……」

「うん?」


「もしも、私が王国を離れて、魔物退治の旅に出るっていたら……どうしますか?」


 まぁ、答えはわかってるんだけどね。

 

 それはきっと。

 はるか昔の、かみたちゃん……初代星乙女と王子様。

 二人の状況と一緒だから。


「そうだねぇ」

 

 シュトレ王子は少しだけ考える仕草をした後。

 私の瞳をまっすぐ見つめてきた。


「そのときは、一緒に旅にでると思うよ」


 それは。

 私の予想していた返答とは全く違って。


 おもわず、思考がフリーズする。

 

「あれ? クレナ?」


 王子が、私の目の前で手を振っている。

 

 ……。


 ………え?


「だって……シュトレ様……子供の頃から国中を笑顔にするのが夢って……」

「うーん、それは、そうなんだけどね」


 シュトレ王子の手が、私の両頬を包み込む。

 すごく……温かい。 


「でも、クレナ。一つ忘れてことがあるよ?」

「……忘れていること?」


「オレは、クレナと一緒に、国中を笑顔にするのが夢なんだよ?」


 ……そうだ。


 そうだよ。

 そうだった。


 シュトレ様はずっとそう言ってくれていた。


「だからさ、クレナといなければ叶わないでしょ?」


 シュトレ王子は、何の迷いもなく。

 微笑みながら答えた。


「もう! 真剣に答えてください! もしもの話でしたけど、本当だったらどうするんですか!」


「変わらないよ?」

「……え?」


「オレの想いはずっと変わらないよ、クレナ」


 頬を温かいものが伝っていくのがわかる。

 この涙はなんだろう。


 嬉しかったから?

 ずっとずっと昔……に言ってほしかった言葉だったから?


(アカリ……愛してる)


 誰かの懐かしい声が聞こえた気がする。


 

 シュトレ王子は、私の涙をぬぐうと。

 静かに唇を重ねてきた。



 ゆっくりと瞳を開けると。

 いつの間にか陽が落ちて、満天の星空が広がっていた。

 

 流れ星が流れて、地上に光を降りそそいでいる。


「キレイ……」

「そうだね……」


 私達はお互いの手を握ると、ゆっくり肩を寄せ合った。



 ――このまま。

 

 幸せな時間がずっと続けばいいのに。



「なるほど、今回の王子はみどろこあるじゃねーか!」


 不意に、可愛らしい声に全く似合わない声が響き渡る。

 後ろを振り向くと。


 フワフワなレースドレス姿の真っ白な少女が、茂みの中から顔を出す。

 

 驚いた私と王子が固まっていると。

 空中庭園の入り口の扉が大きな音を立てて開いた。

 

「お兄様! す、すこしクレナから離れてください! まだ……婚約者、そうよ! それだけなんだから!」

「クレナちゃんー! 星空を眺めるクレナちゃんも素敵ですわ!」

「お姉ちゃん、探しましたよ! ちょっと金色毛虫、邪魔です!」

「やぁ、クレナちゃん。今日の星空はきみのように輝いているね」


 な、なんで!?


「え? なんでみんなここに?」


 私の質問に、みんなは一斉に、最後に入ってきたキナコを見つめた。 


「……ちょっと? キナコさん?」

「えー? ボクはみんなに平等なだけですよ?」


「キナコーーーーーーーー!」


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