26.お嬢様と思い出の夏
「キレイですわ、お嬢様方。まるで花束のようですわ」
メイド長のセーラ率いるメイド隊の皆様が、くるくる私たちの周りをまわって。
頭の先からつま先まで、芸術作品に仕上げてくれている。
今日のドレスは、短め丈なチュールレースのスカート。
胸元にはお花の刺繍がされていて。
ウエスト部分と背中にリボンがついていて。
鏡の前で一回転してみる。
スカートのレースがふわりとふくらんだ。
……うん、すごく可愛い。
「お姉ちゃん、似合ってますか?」
横で着替えていたナナミちゃんが、私の方を向くと、恥ずかしそうに両手を広げる。
彼女の黒髪と、赤いドレスがすごくにあってて。
なにこれ。
最高にカワイイんですけど!
……あれ?
ナナミちゃんの今の姿、どこかで見たことあるような?
「……ねぇ、これって、ヒロインが着てたドレスよね?」
ジェラちゃんが鏡をチェックしながら話しかけてきた。
あー。
それで見覚えあったんだ。
「これを自分が着るなんて思わなかったわ。どう……似合ってる?」
両手を腰に当てて、モデルみたいなポーズをとるジェラちゃん。
よく見ると。照れてるみたいで、顔が真っ赤なんですけど。
「うん、二人ともすごく似合ってるよ! カワイイ!」
「そ、そう。ありがと……」
「本当ですか、嬉しいです!」
「いいなぁ、わたしくしも見てくださいませ」
リリーちゃんが
金色の髪に淡い水色のドレスが映えて。
うわぁ、天使だわ。
本物の天使がいるよ!
「……リリーちゃん、すごく可愛い」
「ありがとう、クレナちゃんもすごく可愛いですわ」
リリーちゃんは私に抱きつくと、頬を寄せてきた。
優しい香りが伝わってきて。
同性なのに……すごくドキドキする。
ふと、彼女の可愛らしい小さな唇に目が惹きつけられて。
……柔らかかったなぁ。
リリーちゃんの唇……。
……。
って。
危ない!
危ないから、私!
「だからぁ! アンタくっつきすぎなのよ!」
「仕方ありませんわ、親友同士ですので!」
慌てて、リリーちゃんから少し距離をとると。
すぐ近くいたキナコと目が合った。
さっき鏡でみた自分の姿に似てるんだけど。
でも。
キナコは、ツインテールをゆるく編み込んあって。
妖精みたいにカワイイ。
けど……表情が固まってるんですけど!
「ご主人様……乙女ゲーム見たりラノベ読んだりしてたんですよね?」
「乙女ゲーは妹がしてただけだけど。ラノベは好きだったよ?
「……じゃあ、今の状況何も思わないんですか?」
今の状況?
「みんなでおしゃれして楽しいよね?」
ちょっとキナコさん?
何でそこで、大きなため息つくんですか?
**********
私たちは、領境の街や砦をまわった後。
ハルセルト領の一番南端の町、アーカトルに来ていた。
ここは、初めてお母様と魔星鎧を着て、大空を自由に飛んだところだ。
飛空船から降りると、少年が目の前に飛びしてきた。
以前、オーガから助けた男の子、キュール君だ。
「クレナお姉ちゃん、久しぶり!」
「こら、クレナ様でしょ!」
慌てて駆け寄ってきた、キュール君のお母さんが、頭をさげさせる。
「大丈夫ですよ。へー。ずいぶん背が伸びたわね」
「ふふん、成長期だからね! すぐにクレナお姉ちゃんを追い抜くよ」
あれからずっと手紙のやりとりはしてるんだけど。
視察では一年に一回、この町のお祭りのタイミングで訪問していて。
彼に会うのも、一年ぶりなんだけど。
ずいぶん大きくなったなぁ。
もう私とあんまり背が変わらないみたい。
「今日は町に泊っていくんだろ? ウチにもあとで遊びに来てよ」
「うん、時間がとれたらね」
「今日は、花火もあげるんだぜ! よ、よかったら一緒に見ないか?」
今年のお祭りは花火上げてくれるんだ。
やったー! 嬉しい!
「そうね、みんなで見たら楽しそう!」
「え? ……みんな?」
キュール君が私の後ろにいる集団をちらりと見ると。
「へー、アンタがあの時の男の子なのね。ずいぶん大きくなったじゃない」
「初めまして、キュール君。うふふ、クレナちゃんから聞いてますわ」
「お姉ちゃんと仲良しの男の子ですよね、初めまして、妹のナナミです」
ちょっと。
女の子に囲まれて、キュール君固まっているんですけど。
まぁ。
あれだけ美人に囲まれたら、ああなるよね。
もう、仕方ないなぁ。
「ちょっと! キュール君困ってるから」
私は、キュール君を輪の中から引っ張り出した後。
怖がらせないように、頭をそっと撫でる。
「そ、そうやって子ども扱いするけど。クレナお姉ちゃんとオレ、そんなに年齢変わらないからな!」
「生意気ー! 去年までオレなんて使ってなかったのにー」
「うるさいな! と、とにかく。夜迎えに行くから!」
キュール君は、びしっと私を指さすと。
耳まで真っ赤にして町に戻っていった。
「ウチの息子が申し訳ありません。あとで強く言い聞かせますので」
キュール君の両親が頭を深く下げてきた。
「気にしないでください。今年もお邪魔して平気ですか?」
「ええ! それはもう大歓迎です」
みんなで花火。
楽しみだな~!
その前に、せっかくのお祭りなんだし。
町の屋台にも行けたらいいな。
**********
<<いもうと目線>>
「同盟の申し入れ?」
「はい、どうやらそのようです」
アイゼンラット帝国の王宮に、大陸の西にある『セーレスト神聖法国』の代表が訪れてきた。
この大陸……ううん、違うわね。
この世界では。
うちの帝国と、お姉ちゃんのいるファルシア王国。
そして、この西の神聖法国が三大国家なんだけど。
「ねぇ、サキ。これおかしくない?」
私は、密偵の話聞いた後。
窓際に立っていた魔人のサキに視線をむける。
「サキって、あのゲーム隠しルートまで攻略したのよね? こんなパターンあった?」
「そうねぇ。ゲームの法国は、中立か王国の味方以外のルートは無かったわ」
サキは両手を組んで考え込む。
そう。
セーレスト神聖法国、別名「緑の法国」は。
王国とは古くからの友好国で。
生徒会の交流イベントの結果次第で、ラスボス戦に援軍として駆けつけてくれる。
ウチにとっては、邪魔な存在なんだけど。
……何でこの時期に、向こうから同盟をもちかけてくるの?
「まさか、ラスボスの存在がバレてたりしてないわよね?」
「それはないと思うわよ。皇帝ですら知らないんじゃない?」
私たちが悩んでいると、扉をノックする音が響いた。
「アリア様、皇帝陛下がお呼びです」
「そう、わかったわ。すぐ行くって伝えて」
返事をすると、サキに振り返った。
私が呼ばれるってことは。
同盟の為の婚約とか……かしら?
「アリアちゃん、大丈夫?」
「平気よ! お父様に確かめてくるわ」




