20.お嬢様と恋の応援
ベッドの上に。
やわらかな朝の日差しが、窓から差し込んできた。
小鳥の可愛らしい鳴き声が聞こえてくる。
今日は上下のまぶたが恋人同士みたいで。
おもくて開いてくれない。
……うーん。
……まだすごく眠いよぉ。
もうちょっと寝てようかなぁ……。
ベッドの上で寝がえりをうつと。
キナコの気持ちよさそうな寝顔が目に入った。
最近ずっと人化したまま寝てるんだよね、この子。
まるで、自分の寝顔をみてるみたい。
あらためてみると、不思議な感じだよね。
……。
…………。
……って、あれ?
「おはようございます、お姉ちゃん……」
後ろから、眠そうなナナミちゃんの声が聞こえた。
振り返ると。
ナナミちゃんが眠そうな目をこすりながら、小さなあくびをした。
胸元にレースのついたピンク色のパジャマが、すごく似合ってる。
これって……どうみても。
二人とも、いつも通り私のベッドで寝てた感じだよね?
……ってことは。
かみたちゃんがこの部屋に来たのって……。
――夢だったのかな?
「お姉ちゃん、どうかしましたか?」
ナナミちゃんが心配そうに顔をのぞき込んでくる。
大きな瞳が寝起きで少しうるんでいて。
ホントに……可愛いなぁ。
こんな表情で見つめられたら……。
私が男だったら、絶対に恋におちてると思う!
そう、恋といえば。
「ねぇ、ナナミちゃん」
「はい、なんですか?」
寝そべったまま、嬉しそうな顔を近づけてくる。
か、かわいすぎるんですけど!
乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』でも、こんなシーンなかったよね。
うーん、なんだか得した気分。
実物はこんな感じで。
ゲームより、ずっとずっと可愛いんだから。
だから、もしかすると……だけど。
「あのね、ナナミちゃん。好きな人っていたりする?」
ナナミちゃんは。
一瞬、表情が固まった後。
顔が一気に真っ赤になった。
「えええええーと?! それはど、ど、どういう意味ですか?」
すごく慌てた感じで、早口で答えたあと。
枕に顔をうずめてしまった。
その慌て方……やっぱり好きな人ができたんじゃないかな。
ゲームの展開通りだったら、もう仲良くなってたり?
「もし好きな人が出来たなら、教えて欲しいな~なんて」
警戒されないように、とっておきの笑顔で答えてみる。
ちらっとこっちをみていたナナミちゃんが、あわてて枕に顔をうずめた。
なにこれ。
すっごいカワイイんですけど。
ナナミちゃんが好きな人が攻略対象だったら。
……ううん。
もし攻略対象じゃなくても。
お姉ちゃんは全力で応援するからね!
「ねぇ、お相手はお姉ちゃんの知ってる人かな?」
ナナミちゃんは少し固まったあと、こくりとうなずく。
そっか。
私の知ってる人かぁ。
うーん。
「同じ学校に通ってる?」
再びこくりとうなずく。
「よく一緒に遊んだりする?」
やっぱり、耳まで真っ赤にしてうなずく。
あれ?
もしかして……。
「……ひょっとして、生徒会のメンバーにいたりして?」
ナナミちゃんは、突然がばっと起き上がると。
うるんだ瞳で、私を見つめてきた。
「え? ホントに?」
びっくりして彼女に聞き返すと。
今にも泣きそうな顔でうなずいた。
その表情は、もう完全に恋する乙女モードだよ!
待って待って。
生徒会のメンバーだよね?
そうすると。
……。
ガトーくんか……シュトレ王子?!
確かに、二人ともゲームの『攻略対象』だけど。
……どうしよう。
もし、ナナミちゃんがシュトレ王子のことを……好きだったら。
ぎゅっと両手を握りしめる。
その時は……。
姉妹で真剣勝負……かな……。
ダメだ……目の前にいるカワイイ生き物に、勝てる気がしない。
「えーとね。……その人は年上だったりする?」
ずるいなぁ。
これって、答えを聞いてるのと同じだよね。
「同じ年……」
ナナミちゃんが、小さな声で恥ずかしそうに答えた。
あれ? それって。
……ガトーくんだよね!!
そっかそっか。
うん、すごくカッコいいもんね、彼。
なんでも器用にこなせるし。
軽いノリなところがあるけど。
でも本当は。
すごく優しくて真面目な人なのを、ちゃんと知ってるから。
大切な幼馴染だもんね。
「そっか。ゴメンね、色々聞いちゃって。お姉ちゃん全力で応援するよ!」
ナナミちゃんは。
私の言葉に飛び上がるな仕草をした後。
大きな瞳で私を見つめてきた。
涙が頬を伝っていて、すごく息が止まるくらい……可愛らしい。
「……嬉しい……です」
彼女は、そのまま私に抱きついてくる。
うわぁ。
カワイイ!
こんなの、ガトーくんじゃなくても攻略されちゃうと思うんだけど!
応援するって言ったのが、そんなに嬉しかったんだってわかって、私も嬉しくなる。
まかせて!
お姉ちゃんが全力でサポートするから!
ナナミちゃんをぎゅっと抱きしめる。
「あのね、こうみえても、彼とは昔からの友達だから。いろいろ聞いてね」
次の瞬間。
ナナミちゃんが、ビックリした表情で私の顔をじっと見つめる。
少しの間があって。
……大きなため息をついた。
え、なに?
どうしたの?
「多分、お姉ちゃん勘違いしてると思う……」
「ご主人様って、こういう人なんですよー……」
いつの間にか起きたキナコも、後ろから大きなため息をつく。
もう、妹二人して!
一体なにを勘違いしてるっていうのさー!




