最終話(エピローグ)ifルート 卒業
葵たち「十色盟」の4人は四稜女子中等学校の教師・中畑恵理、兼利文に、自分たちが持っていた魔物の核をすべて渡した。
「わたしたちも先生たちのお手伝いをしたいですけど、かえって足手まといになってしまうと思うので…、かわりに…これを持っていってください」
「ありがとう…あなたたちの気持ち…無駄にしないわ」
葵たちに思いを託された文と恵理は、健気な4人を優しく抱きしめた。
数日後、準備を整えた2人は五稜町へ向かった。
文と恵理は半壊した象牙色の塔に入ると、塔の中にも入りこんでいた魔物たちを淡々と"処理"しながら階段を上っていき、本来は中間に位置していたが、半分になってしまった現在の塔では最上階の1つ下にあたる階に到着。
2人は、魔物に荒らされていないその階で「掃除用具入れ」の封印を解除して道具を出すと、すぐに再度封印する。
「私たちは教師…あの子たちの未来は…私たちが守る…」
恵理はそう言ってから、第六種魔法を発動させて自分と文を五稜町に転移させた。
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その次の日、3年1組の副担任で、文が担任を外れてから担任代行を務めている荒木美奈は、文と恵理が無事に帰ってきたことを生徒たちに伝えた。
担任としての職務は美奈に引き継いでいることから、文は担任に復帰しないが、美奈の"サポート役"は引き受けるとのこと。
また、十色盟の4人には放課後職員室に来るように、という文からのメッセージもあわせて伝えられた。
4人が職員室に行くと、文と恵理によって奥の別室へ連れ込まれた。
文が扉を閉めると、恵理が葵に抱きつく。
「上野さん…ありがとう…あなたたちのおかげよ…」
何のことかとと尋ねる葵に恵理は、昨日の五稜町では、2人の手持ちの魔物の核をすべて使い切ったと答えた。
「つまり…あなたたちが提供してくれた魔物の核がなかったら…どうなっていたかわからなかったのよ…」
「そうですか…だいすきな先生たちのお役に立てたのなら…とてもうれしいです…」
「あなたみたいな…すばらしい生徒から好かれているなんて…幸せよ…」
文も、背後から葵に抱きついた。
文と恵理は明、命、茗露にも抱きつき、感謝を伝えた。
「後は、最後の課題"卒業後の進路を決める"をクリアすれば卒業ね…」
「それなんですが…決められないです…。
様々なところから声はかけられているのですが…」
「一応、卒業課題だけが残ってしまった子のために、"5年生"までいられる制度はあるし、その間に学校や外でいろいろやってみて、自分のやりたい仕事を見つけるという手もあるけど…」
「3年生全員が、葵と一緒に卒業できないと知ったら取り返しのつかないことになりそうですけど…」
「そうね…全員が最後の課題を出さず、卒業生がいない、という異例の事態になりかねないわね…」
「葵さんと、明さんと、茗露さんと、私の4人で起業するにも、まずはどういう仕事をする企業なのか、というところから始めないといけないですし…」
「まあ…あなたたち4人は離れ離れになりたくはないでしょうけど、何も4人だけに拘らなくても、学校で一緒に学んだ友達を誘うとか、逆に友達の起業を手伝うとかでもいいんじゃないかしら?」
「はい…アオちゃん、アキちゃん、イノっちだけでなく、他のクラスメイトと一緒でも問題ないです。
クラスメイトにいろいろ聞いてみます…」
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そして卒業式、葵は首席として卒業生あいさつを行い、万雷の拍手を受けた。
式の後には卒業記念パーティが行われ、"これから葵ちゃんと毎日会えなくなる"と嘆くクラスメイトを葵は1人1人宥めていた。
クラスメイトと別れ、元"十色盟"の4人は葵の家に向かう。
「えへへ…葵の家でお泊り…」
「葵さんの右隣で寝る権利はわたしがもらいます」
「じゃあ私はアオちゃんの左隣で寝る!」
「2人とも…コーメイちゃんが泣いてるよ…そういうのは公平に決めよう…でも…わたしは誰が隣でもうれしいよ…」
「ぐすっ…葵…ありがとう…だいすきよ」
「明日からは仕事の準備をしないといけないですけど…今日が終わるまでは…学生最後の日は…、いつもの4人でゆっくり過ごしたいですね…」
「明日からも…私と、アオちゃん、アキちゃん、イノっちは…ずっと一緒だよ…絶対…」
2章4話からメインのバッドエンドまでは鬱展開が続きましたが、こちらのエンディングは穏当でした。
当初の構想では、3年生のうちに課題が終わらず、"4年生"に突入してからバッドエンドとか、バッドエンドルートは2話に分ける、などと考えていましたが、話が思ったように膨らまず、少ない話数・文章量で終わることになってしまいました。
未完のまま放置や「葵の学園生活はこれからだ」エンドではなく、かなり強引ながら卒業という形で
完結まで持ってこられただけましかもしれませんが…。
これで本当に『万有の葵』は終わりになりますが、本編である『無のエリス』(およびリメイク版『無のエリスRPG』)は引き続き連載していきますので、よろしくお願いします。




