2章5 Pre-apocalypse
予告しておきますが、前回からの鬱展開が続きます。
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十色盟と巧速徹道の8人は、その後に行われた3年2組の課題でも脱出の妨害を手伝い、"見事に"2組の32名を全滅させた。
だが、2クラス64人全員がこの課題によって心に傷を負った。
やられた56名と巧速徹道の4人は十色盟の4人を極度に恐れるか、下僕になると言って媚び諂ったりするようになり、十色盟の4人も正気に戻ってから自分たちがしたことの罪悪感に苛まれ、塞ぎこんだり、授業中に妄想に耽って急に不気味な笑い声を上げたりするようになった。
教師たちはこの状況を重く見て、戦闘系の課題を無期限中止とするほか、生徒たちの心のケアをしようと様々な手を打った。
時が経つにつれて、ある程度の改善は見られたが、十色盟の4人と他の生徒の関係は歪なままだった。
その分、4人の仲は深まり、ある日に一線を越えた。
ふとしたタイミングで、葵と振り返った明の顔がほぼゼロ距離になると、
「葵…」
「コーメイちゃん…」
お互いの唇の距離を0にする。
すぐに唇を離した明は、
「命…」
2人のキスを見て固まっていた命の唇を奪った。
明が最後に残った茗露の方へ向かうと、命が暴走を始めて
「葵さん葵さん葵さん…」
明とのキスの余韻に浸っていた葵に情熱的な口づけをする。
「みこちゃん…しゅごい…」
命が葵から離れると、床に座り込んだ葵は虚空に視線を彷徨わせ、2人とのキスで完全に酔っぱらったかのような、ふにゃふにゃした感じになってしまった。
「えへへ…アオちゃん…私とも…ちゅっちゅするです…」
3人の唇を制覇した明を命が襲い、唇を奪い返したタイミングと同時に、茗露も葵と唇を重ねた。
2組はそのまま、頭の中がふわふわして意識を失うまでお互いの唇を味わっていた。
教師たちの手段を択ばぬ施策が奏功したのか、卒業に必要な課題が残り2つとなる頃には、十色盟の4人と他の生徒はほぼ元の関係に戻りつつあった。
だが、その代償は大きかった。
教師も生徒も「四稜女子中等学校」や四稜町という内側だけに目が向いてしまい、四稜町の外における"変化"になかなか気づかなかった。
数日前に"世界"が震え、五稜町の北側に架かっていた壊れかけの橋が完全に崩壊したが、誰も気に留めなかった。
しかし、次の"変化"はほとんどの者が気づくものだった。
再び世界が震えた後、五稜町のすぐそばに建っていた象牙色の塔が"折れた"。
四稜町の被害はないが、しばらく四稜町での"井戸端会議"の話題はそのことで持ち切りだった。
象牙色の塔が折れてから数日後、3年1組の担任である兼利文は生徒へ、今日を持って担任を外れると告げた。
「察しの通り、五稜町の象牙色の塔について、調査に行くためです。
あなたたちの卒業まで…担任を続けられなくて残念だけど…卒業式には必ず出ます…」
生徒たちは文に、寂しいとか、私も先生と一緒に行きたいとか、一緒に行けなくても手伝えることがあったら手伝うとか、いろいろな言葉をかけていたが、十色盟の4人はそれらに加わらず、小声で相談していた。
文が生徒たちを落ち着かせたところを見計らって、葵が文に近づき、口を開く。
「先生…話がありますので…最後の授業が終わったら…職員室に行きますね…」
「分かったわ…職員室で待ってるわね…」
一部の生徒は、もしかして告白かな、などと噂していたが、半数くらいは葵がそういう雰囲気でないことを悟っていた。
その日の授業が終わると、葵・明・命・茗露はある"決意"を胸に、職員室へ向かった。
2章はこれで終わり、次は早くも終章です。
竜頭蛇尾というか、頭も竜とはとても言えない内容でしたが、エンディングの内容はほぼ固まっていて、あとは文章にするだけなので、完結はさせます。
もう少しだけお付き合いください。




