2章1 reach for the star
待ってくれていた方がどれだけいるかはわかりませんが、新章です。
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城郭都市「四稜町」から南南西の方角には、四稜町よりも大きな城郭都市が"ある"。
今回の課題で葵たち「十色盟」と合同チームを組む「巧速徹道」のリーダー・海上希未も最初の課題で中松町へ向かう途中、遠くにその威容を見たという。
だが、今回の課題の目的地であるそこへ行くには、異様な丈に成長した植物の"森"を抜ける必要がある。
中松町行きでも使ったという、東田青葉の緑魔法「グリーン・リミテッド・エクスプレス」で草原を高速移動した十色盟・巧速徹道連合の8人は、一番乗りで"森"の外側に到達した。
高速移動による疲労が回復するまで小休止をとることにしたが、その間も明は"森"を構成している植物に興味津々。
そんな明に葵が近づく。
「コーメイちゃん、何か分かりそう?」
「ふぇっ?」
「あっ…びっくりさせちゃってごめん」
「いいえ…葵になら…何をされてもいいわ…はぁはぁ…はっ…ところで何か用かしら?」
「コーメイちゃんが、植物を興味深そうに見ていたから、何か分かりそうなのかなって」
「…葵…ちょっと試したいことがあるのだけど、そこの葉っぱを取ってくれるかしら?」
「いいよ」
葵が植物の葉を1枚取る。
「それを地面に置いて」
「よいしょ」
「ちょっと離れてて…ブルーライト」
葵が地面に置いた葉に明は青魔法で青い光を当てる。
「その葉っぱに、殺傷能力のない赤魔法をかけてみて」
「はーい、レッドカード!」
葵の赤魔法によって生成された赤い紙片が葉に触れると、紙片と葉は一緒に消滅した。
「葵!すごいわ!」
明は思わず葵に抱きつく。
「コーメイちゃん…うれしい…けど…恥ずかしいよ…」
「ごめんなさい…」
葵に言われて、明は顔を赤くしながら葵から離れた。
「それで、コーメイちゃんは今ので何か分かったの?」
「うん…異様な成長を遂げたここの植物は魔物と同じで、弱点の属性をつけば消えるのよ。
でも、今は葉っぱ1枚だけだったから、この程度の魔法で消せたけど、この"森"全体は全員の魔力を合わせても無理そうね。
過去に誰かがここを突破した時の名残があれば、それを利用できていいのだけれど…」
「それがあるかどうか…は、地道に探すしかないね…」
葵と明は"実験"の結果を他の6人に共有した上で相談し、十色盟&巧速徹道チームは"森"の外側に沿って西に進むことにした。
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「これは…分かりやすいね」
一面の緑だった"森"が、一部だけ帯状に赤く染まっていた。
8人で、使う魔法とその順番を相談する。
「まずは私が行くね…グリーン・ディケイ」
茗露の緑魔法で赤い植物が緑に侵食されていく。
「次はウチね…ブルーレイ」
西脇光の放つ青い光が、緑に侵された赤い植物を殲滅する。
「みんな、これに乗るよ…オレンジ・エクスプレス!」
希未の魔法で橙色の光を帯びた十色盟・巧速徹道連合の8人は、青い光の"線路"に乗って、切り開かれた道を進んだ。
結果から言えば、進んだ道の先は、"はずれ"だった。
城郭都市を囲う水堀には到達したが、土塁を登ると、そこには橋がわずかだけ残り、水堀に架かっていた部分は無残にも崩壊している。
水堀の向こうには、かつて大いに栄えたが、今は一部で"堕ちた巨星"の通称がつけられている巨大な城郭都市"遺跡"「五稜町」の城壁が不気味に聳えていた。




