第9話:デート
日曜日の朝、由菜はダイニングで朝食を食べていた。母はキッチンで、洗い物をしている。
「お母さん。今日辰弥と映画見に行ってくるから。」
目玉焼きを口に頬張りながらそう言った。
「あら。良いじゃない。うまくいってるの、あんた達?」
「何言ってんの?ただ映画見るだけだよ。」
母は明らかに面白がっていると思われる。
「そうなの?残念ね。あんた達付き合っちゃえば良いじゃない。」
「そういうの良くわかんないよ・・・。」
「あんたもまだまだお子ちゃまねぇ。それとも、あれがあるからなの?」
母はニヤニヤした顔で言った後、急に難しい顔になった。
「う・・・ん。」
そんな由菜の様子を見て、ふぅと息を吐き出した後こう言った。
「まだあんた2年生じゃない。そんなに頑なにならなくても良いんじゃないの?」
「そう・・・なん・・・だけど・・・さ。」
そこへ辰弥が起きて来た。寝起きなので、少し寝癖がついていて、何だか可愛らしい。
辰弥は今の二人の会話を少しだけ聞いてしまった。何の話をしていたのか気にはなっていたのだが、本日の由菜とのデートを前に浮かれていたせいもあり、すぐに辰弥の頭からは消え去られてしまった。
「今日由菜と映画に行くんだって?」
母が、またいかにも嬉しそうに辰弥に話しかけている。
「はい。たまには息抜きが必要かと思って・・・。」
辰弥もその問いに対し、嬉しそうに答えている。
「良かったわね。今日は由菜に1日付き合ってもらうと良いわよ。」
「はい。」
辰弥は母と楽しそうに話している。
「で、何見に行くの?」 「『ヘンコック』見に行くんです。」
などと二人は由菜を置き去りにして話し続ける。
「辰弥。10時に家出るけど大丈夫?確か11時の回があったから。」
朝食が終わり立ち上がった由菜は、食器を流しに置きながらそう言った。
「うん。分かった。」
辰弥は時計を見て頷いた。
由菜と辰弥は駅前に来ていた。日曜日という事も有り、大変な混雑だ。
「辰弥。ちょうど良い時間が合ったよ。」
「うん。入ろうぜ。」
映画館に入り、二人は一番後ろの席に落ち着く。映画館の席は案外狭い。辰弥の腕と由菜の腕が僅かに触れる距離。少し辰弥に触れただけで、由菜の体温が急上昇する。ちらりと隣の辰弥を盗み見る。辰弥は涼しい顔をしていた。『辰弥は私といても緊張とかしないのな・・・。』と由菜はその横顔を見ながら考えていた。
映画が終わり、由菜と辰弥は映画館をあとにした。
「お腹減ったね。どっかでご飯食べよ。」
由菜は映画を見ている間中、お腹が鳴るんじゃないかと焦っていた。由菜の腹時計は非常に正確で12時を回った頃から鳴り出すのだ。映画の最中、1回だけ鳴ってしまったのだが、辰弥は気づかなかっただろうかと、少し気になっていた。
「ふはっ・・・。由菜。お腹鳴ってたよね。」
まんまと聞こえていたらしい。辰弥はツボにハマったのか、隣で大笑いしている。
「普通さぁ、そういうのは気付いてても、気付かないふりするもんじゃないの?」
などと、脹れて抗議はしてみるものの、由菜も何だか可笑しくなってきて、辰弥につられて吹き出してしまった。
「あっ、由菜が笑ってる。俺が由菜ン家来てから初めてだね。」
辰弥が嬉しそうに由菜の笑い顔を見ている。
「え?そうかな・・・。それは、あれだよ。辰弥がいつも私を困らすからだよ。」
由菜は何だか突然恥ずかしくなって、真っ赤な顔で俯いてしまった・・・。
皆様。楽しんで頂けているでしょうか?この作品は、私が生まれて初めて書いている言わば処女作です。拙く、表現力も無いですが、長い目で見ていただければ光栄です。また、まだ評価を頂いた事がございませんので、どなたか評価をして頂けたら作者冥利に尽きると・・・。よろしくお願いします。 海堂莉子




