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1cmの距離  作者: 海堂莉子
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第38話:アメリカ二人旅 7

ロサンゼルス7日目。

由菜と辰弥は、ロサンゼルス国際空港にいた。結衣はまたねと由菜に言い、辰弥の耳元で何事か呟いた後、豪快に手を振って去って行った。

由菜と辰弥は、面倒な手続きを終え、無事飛行機へと乗り込んだ。離陸し、徐々に遠ざかるロサンゼルスを見ながら、


「楽しかったよね。」


と隣の辰弥に話し掛けた。


「うん、楽しかった。」


由菜は辰弥をちらっと見た後、気になっていた事をついに聞いてしまった。


「昨日お姉ちゃんと何の話してたの?」


昨日、辰弥が結衣と二人で何ぞ話していたのを見ていた。ジュディにやっと開放された辰弥が今度は、結衣と真剣に話しているのを。二人の表情はとても硬く、由菜はどんな話をしているのか気になって気になって仕方がなかったのだ。あの後、直ぐにアパートに帰って帰国の準備をした為、落ち着いて辰弥と話すことも出来ずに悶々とした気持ちを引きずっていたのだ。


「う〜ん・・・人生訓みたいなもの?」


「あ〜、夢の話とか?私も高1の時同じような話されたよ。お姉ちゃんってお酒入ると説教臭くなるんだよね。私が謝るのもなんだけど、ごめん。妹として謝っとく。」


ははっと辰弥が軽く笑った。


「ねぇ?他に私の事とか言ってなかった?」


由菜は、自分の留学の事を姉は話したのではないかと、少し不安を感じていたのだ。


「さあ?どうだったかなぁ。」


辰弥がわざとはぐらかしたのが分かった。由菜の反応を見て楽しんでいるようだ。しかし、二人の間で何かしらの話が交わされたのは間違いないようだ。それが、留学の事だけとは限らず。

問い質したところで口を割る辰弥ではないのは分かっているので、それ以上の尋問は控えた。



二人が日本に着いたのは、日本時間の午前10時頃だった。

母が来るまで迎えに来てくれていた。空港の外に出た途端、粘りつくような熱気が体に纏わり付いてきた。呼吸をするのも困難なほどに、暑さが襲い掛かってくる。ロサンゼルスのからっとした陽気が遠い夢の世界の出来事だったようにさえ思えてならない。

車の中では、母が旅のお土産話を根掘り葉掘り聞いてくる。その一つ一つに律儀に受け答えする辰弥。由菜は、現実に引き戻されたシンデレラのような気分で、二人の会話を聞いていた。

やっとこさ家に着いた由菜は、荷物を片す事もせずにベッドに倒れこんだ。飛行機の中、行きの二の舞だけにはなりたくないと気を張っていたせいか少しも眠る事が出来なかったのだ。



長かったような短かったような夏休みが終わり、新学期が始まった。

校門をくぐり、校舎へと続く道を歩く由菜と辰弥は、まだまだ残暑が残る茹だる様な暑さにうんざりしながらも歩を進めていた。


「由〜菜。おはよう。」


「おはよう。加絵。」


由菜は久しぶりに会う、相変わらずの明るい笑顔を振り撒く加絵に心癒されていた。加絵にもまだ留学の事を話していなかった。いい加減話さなければ。意を決した由菜は、教室に着いた後、加絵をベランダに誘った。登校した時間が早かったので、まだ十分に話すことが出来る。二人はベランダに並んで、座り込んだ。ベランダは、日陰になっている事もありひんやりとして、涼しかった。


「あの・・・・・ね。私、高校卒業したら、アメリカに留学するの。」


言い終えてから加絵を恐る恐るみると、加絵も由菜を見ていたようで、驚いた顔の加絵と目が合った。加絵も由菜と同じ短大を受ける事になっている。


「私、短大に行っても由菜と一緒にいれるんだと思ってた。」


加絵が寂しそうにそう言った。


「あのね。短大は受けるの。休学して1年間留学するつもりなの。ごめん。言い出せなくて。」


由菜は、涙を堪えるのに必死だった。


「由菜、一度は留学したいって言ってたもんね。」


うんと由菜は頷いた。


「心置きなく行っておいで、由菜の夢でしょ?私たちは離れていたって友達だもん。寂しいけど、由菜が帰って来たら私の後輩になっちゃうけど、でも大丈夫。メールも電話もするから。」


加絵も堪えきれずに涙を流した。暫く、二人はおいおいと泣いていた。


「辰弥君は?もう、知ってるの?」


泣きやんだ加絵がそう尋ねると、由菜は、寂しそうに首を横に振る。


「もしかして辰弥君に好きって言えないのって留学するからなの?」


由菜は暗い顔でこくんと頷いた。


「どうして?勿論遠距離は寂しいし、続けて行くのも大変だと思う。でも、由菜と辰弥君なら絶対大丈夫だと思うけどな。」


「あのね、私のお姉ちゃんアメリカに留学しているって話したでしょ?」


ここで加絵の反応を窺い、相槌を打つのを確認する。

由菜は、思い出していた。由菜が遠距離を恐れる事になった時の事を・・・。


「ちょうど私が中3になる時に、お姉ちゃんは渡米したんだけど、その時お姉ちゃんには彼氏がいたの。」


中3の時に渡米した結衣は、誰もが羨むようなカップルだった。由菜もそんなお似合いの二人に憧れていた。誰もが二人だったら遠距離であろうと何の問題もないだろうと思っていた。

結衣の彼吉田は、結衣と同い年で、高校に入ってから3年間ずっと付き合っていた。家にもしょっちゅう遊びに来ていたし、親も公認の仲だった。遠距離に入ってからも二人は順調のようだった。


こんにちは。いつも有難うございます。

やっっっとアメリカ終わりました。あ〜良かった。

これからは、違う展開に入って行きます。

良かったら、評価・感想お願いします。

また来週。See Ya!

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