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1cmの距離  作者: 海堂莉子
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第27話:キッスは瞳にして

「着けてみても良い?」


と、ブレスレットを軽く持ち上げて由菜は尋ねた。辰弥は嬉しそうに頷いた。早速着けようとするのだが、なかなかどうして上手く着ける事が出来ない。貸して。と、辰弥が由菜の手を取った。由菜の手、辰弥が握っている部分が、熱を帯びたように熱い。下を向いてブレスレットを着けている辰弥を眺める。普段、下から見上げるばかりで、下から見下ろす事はない。上から見る辰弥の顔。下を向いているから尚更露見する眉毛の長さ。肌は、健康的な色をしているが、肌質は由菜のそれより幾分良いんじゃないかと思うくらい綺麗だ。


化粧をしたら、きっと私より綺麗になっちゃうんだろうな。

どうしてこの人は、私なんかが好きなんだろう・・・。不思議。


ぼーっと見とれていたのだろう。辰弥の顔が間近にあって、慌てた由菜は後ずさり、ベッドに背中を強打した。その振動で、寝ていたみゅうも「にゃ」と飛び起きたが、すぐにまた眠りについた。

痛ったぁと顔を顰める由菜に、大丈夫?と、辰弥は近づいてくる。もう、これ以上由菜に逃げ場はない。辰弥が由菜の隣に座った。


「俺、由菜と同じ時間を過ごさせてくれた事、神様に感謝してる。誰でもない、由菜と出逢えた事が一番嬉しい。産まれて来てくれて有難う。由菜?」


由菜は、辰弥の肩が触れている部分から、自分の鼓動が伝わってしまうんじゃないかと目を硬く閉じていた。辰弥の言葉で更に加速した胸の鼓動がどうにも治まってくれない。気配で、辰弥が由菜の顔を覗き込んでいるのが、分かる。由菜の好きな仕草。辰弥は由菜が俯くと、いつもこうして顔を覗き込んでくる。時に優しい笑顔で、はたまた心配そうに、またある時は意地悪顔で。そのどれもが、由菜は好きだった。けれども、覗き込まれた時の由菜の心臓はマックスで・・・。


「由菜?起きてるんでしょ?目、開けないとキスしちゃうぞ。」


嘘・・・。どうしよう・・・。目開けなきゃ。でも、今目開けたら絶対辰弥の超ドアップだよ。・・・・・・無理・・・・・・。開けられないよ。


そう考えてる間にも、辰弥の顔が近づいて来ている。ふっ。


え?何?今、辰弥笑った?からかわれてるだけ?


恐る恐る目を開けると、


ちゅっ。


柔らかく、暖かい辰弥の唇が・・・・・・由菜の頬っぺたに。


由菜が驚いて大きな目を見開くと、今度は目元にキス。


それから、辰弥の顔が由菜から離れて行く。


「ちょちょちょっと、何するの?」


真っ赤になった顔を両手で、覆いながら由菜は必死に辰弥に食って掛かった。ちろっと辰弥の顔を見ると辰弥も顔が真っ赤だった。


「俺、そろそろ自分の部屋行くわ。お休み。」


辰弥も急に恥ずかしくなったのか、そう言って、急いで出て行ってしまった。


「お休み。」


既に、閉じられたドアに向かって小さく呟く。すると、再度ドアが開いて、辰弥が顔だけ出した。


「あっ、由菜。今度由菜が俺の前で目をつぶったら、その時はもう、止められないかも・・・。俺以外の男の前で、目つぶらないでね。」


「つぶるわけないよ・・・。」


直ぐに閉まったドアを見ながら、誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。




由菜の誕生日も終わり、怒涛の中間テストも無事に終わった。

二人の通う学校は、テスト終了後、学年別に上位100名を掲示板に張り出す。

最高学年である3年生の昇降口に1年〜3年までの上位成績者が張り出される事になっている。

昇降口をくぐり、上履きに履き替えた由菜は人だかりが出来ている掲示板の前に立った。まず、自分の名前を探す。由菜は7位だった。それから、辰弥を探す。辰弥は3位だった。由菜は、パラパラ漫画を描いていた様な人が何故と思ったが、由菜は知っている、辰弥は勉強をしなくても優秀な頭脳を持ち合わせているという事を。


「辰弥君、頭が良いんだね。」


加絵が、由菜の隣に立ち、掲示板を見上げていた。


「あ、加絵。おはよう。うん。頭良いんだよね。」


背後にも気配を感じ、振り返ると隼人がいた。


「へぇ〜、3位か。」


うん。と、頷いて再び掲示板へと目を移した。あれ以来、隼人とは普通に接している。ちなみに、隼人は1位。加絵は20位だった。


「明日さ、4人で何処かに行かない?」


加絵が、唐突にそう言った。由菜は初め、加絵の言わんとしている事が分からなかった。


「え?4人て?」


加絵は、悪びれる様子もなく、事も無げに言い放った。


「え〜、だ、か、ら、私達と隼人と辰弥君。」


「え〜と・・・、それはどうかな〜。」


幾らなんでもそれは気まずいってもんだ。それに、辰弥が気を悪くするかもしれない。それなのに隼人は、別に良いぞ。と、仰っておりますけど。


あ〜、幻聴が聞こえる・・・。耳が、耳がおかしい・・・。


一人妄想の世界へと飛び立った由菜を置き去りにして、話は進んでいった。流石に辰弥はOKしないだろうとふんでいたのに、昼休みその話を聞いた辰弥は、二つ返事でOKした。


何もなければ良いけど・・・。言い知れぬ不安に、身の(すく)む思いだった。


こんにちは。いつも読んで頂き有難うございます。

『キッスは瞳にして』です。本当にこの二人はうぶだと思います。今の高校生は、こんな事では動じないでしょうか?

「天使とラブソングを・・・」の第2話更新しました。宜しかったらそちらも読んで下さいね。

それでは、また明日。

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