第20話:突然の告白
長かった一週間がやっと終わった。そんな日曜日。お天気は快晴。清々しい春の太陽が降り注いでいる。花粉症持ちには辛い季節。
遅めに起きた由菜が、階下へ降りると、両親も辰弥もいないようだった。家に一人きり、今までに無い事だったので、何となく不安を感じる。家にいてもつまらないので、駅前でもぶらぶらしようと家を出た。
駅前の大きな書店に向かう。種類が豊富で品揃えが良いその書店は、暇つぶしにはもってこいだった。参考書のコーナーに行き、英語の参考書を探す。次から次へとぺらぺら捲っていると、横にぴたりと付いて来る人物がいる。不審者?と訝りながら横をチラッと見るとそこには隼人がいた。数学の参考書をぺらぺらと捲っている。
「何で隼人がここにいるの?」
「俺がいちゃ悪いか?一応受験生だからな。参考書を探しに来たんだよ。」
表情一つ変えず、参考書から目も離さずにそう言う。相変わらず愛想が悪い。この間の一件以来、隼人とは話していなかった。見透かされるのが嫌で、由菜が隼人に近づかないようにしていた。
「この間は悪かったな。」
相変わらず参考書のページを目で追いながらそう言う。誤っているのだが、誤っている様には見えない。
「別に良いけど・・・。」
何となく気まずく、歯切れの悪い返事をする。
「今日は、あいつはいないのか?」
「あいつって辰弥の事だよね?今日は、友達と出掛けるって言ってたけど。」
ふ〜んと言う隼人。隼人は本当に無口だ。仲の良い男友達とは普通に話している様だが、女子で話すのは由菜と加絵くらいなものだ。
「いつも一緒なわけじゃないし。なんか誤解してるみたいだけど。」
隼人は一瞬こちらを見たが、すぐに参考書へと視線を戻すと、
「誤解じゃないと思うけどな。自分で気付いていないだけか、それか気付かない振りをしているだけだろ。」
案外痛い所をついてくる。
「もう、止めてよ。隼人となんか話してらんないわ。ばいばい。」
そう言って、逃げるように本屋を後にする。
本屋でたっぷり時間を潰すつもりでいたのに、予定が狂ってしまった。若干隼人を憎らしく思う。
仕方がないので、駅前のショッピングモールで時間を潰す事にして、歩き出した。
「おい、ちょっと待てよ。」
振り向くと、隼人が走って追いかけて来ていた。
もうこれ以上、痛い所を穿り返されるのはごめんだと由菜は走り出した。しかし、由菜の足は何かを見て急に止まった。隼人が由菜に追い付いて、隣に並ぶ。隼人は急に止まった由菜を不審に思い、顔を覗き込むと、何かを見て放心しているようだ。由菜の目線を辿るとその先には、辰弥と早乙女さんが二人で仲良く歩いていた。
「おい、あれって・・・。」
一番見たくなかった光景が、由菜の目の前に広がっている。隣で隼人がしきりに何かを言っているが、由菜の耳には、何も届かない。周りの喧騒さえも全く聞こえて来ない。まるで、由菜とあの二人以外の全てのものの動きが止まってしまったように・・・。ただあの二人の楽しそうな声だけが、由菜には聞こえているような気がしてならない。
どうして二人が一緒にいるの・・・?
どうしてこんなに胸が苦しいの・・・?
どうしてこんなに胸がモヤモヤするの・・・?
どうして・・・?
二人を見据えたまま、由菜は動く事が出来なかった・・・・・・。
由菜は今来た道を、ゆっくりと戻って行った。隼人が一緒に付いて来るが、今は他の事などどうでも良かった。そのまま家に帰る気がしなくて、近くの公園へ足を向ける。人気の全くない公園。そこで何も考えずにぼうっとしたかった。
由菜の頭の中では、さっきの二人の姿が何度も何度も再生されている。隼人は見ていなかっただろう。しかし、由菜は一部始終を見ていた。
初めに、駅前の定番の待ち合わせスポットに早乙女さんがいることに気付いた。早乙女さんは可愛い淡いピンク色のワンピースを着ていた。周りにいる男達が、彼女をちらちらと見ていた。
すぐに、辰弥が現れた。彼女の元に駆け寄り、笑顔で何かを言っている。『ごめん。待った?』、『ううん、大丈夫。』、『どこ行こっか?』という会話がなされているように見えた。何らかの会話の後、二人は歩き出した。いつも学校で見ている二人とは違う。二人は待ち合わせをして、会っているのだ。デート・・・・だろう。そう考えるのが妥当だ。
何も考えずにぼうっとしたかったのに、頭に浮かんでくるのはあの二人の楽しそうなシーンばかり。
ベンチに座り、何時間も由菜はそこから動かなかった。
「もうやめろよ。あいつの事考えるの。」
隼人が由菜にそう言った。隼人は何時間もずっと由菜の隣に座っていたのだ。
「苦しかったら泣けば良いじゃねぇか。何で我慢すんだよ。」
そう言うと、由菜を力任せに抱きしめた。
突然の事に驚いた由菜だったが、その言葉をきっかけに由菜の目からは、涙が次から次へと溢れ出した。隼人は由菜が泣いている間、由菜の背中を優しくぽんぽんと叩いてくれていた。
由菜が落ち着きを取り戻し、隼人の腕から離れようとするとギュッと強い力で引き戻されてしまった。
「このままで聞いてくれ。あいつはお前をこの先もきっと泣かせる。俺にしないか?俺はお前を絶対に泣かせない。俺はお前が好きだ・・・。」
いつもご覧頂き有難うございます。
今回は『突然の告白』という事で、隼人の告白です。
今回も、中々上手く表現をする事ができませんでした。文章って難しいですね。頑張って書きましたが、
文章力のなさに、凹む毎日です。
こんな未熟な作品を見に来て下さって本当に感謝です。




